物価高が続く中、夏の参院選をにらみ各党で活発化する消費税減税論議。しかしながら減税、もしくは全廃時の現実的な財源論がなされているとは言い難いのが現状でもあります。今回のメルマガ『有田芳生の「酔醒漫録」』ではジャーナリストで衆議院議員の有田さんが、かような消費減税論の是非を考察。さらに2022年にイギリスが襲われた「トラスショック」を例に上げ、日本の行く先を案じています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:消費税減税論の是非と日本経済の現状(中)
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消費減税論は是が非か。消費減税論世界最悪の借金国ニッポン
東京都議選、参議院選挙が近づくにつれて各政党では減税論議が盛んだ。物価高にあって、生活が少しでも楽になればと願う有権者は、各党の政策に注目するだろう。
そこに「財源はあるのか」と問うのは、政治や経済にある程度の関心を抱く者たちで、一般的にはさして関心を示さないだろう。
したがって消費税はただちに廃止して、足らない歳入は国債をどんどん発行すればいい、日本は自国通貨を発行できるのだから財政破綻は起こらない、と主張するれいわ新選組の支持率は、いまや共産党を上回るほどになってしまった。
共産党が「消費税を5%に下げて、いずれ廃止する」との政策よりも、れいわ新選組のように「消費税を廃止する」とすっぱり主張した方が、あまり経済の仕組みを理解していない有権者にはストレートに届くのだ。
それをポピュリズムというのは簡単だが、ロシア革命に立ち上がった民衆が「資本論」を読んでいたわけでなく「パンと自由と平和」を求めていたことが主因であったように、人の心に届き、行動に導く言葉(政策)が問われる。
しかし政策は車寅次郎が縁日で小気味よく語る啖呵売ではない。事実と根拠が必要だ。たとえばネット世界で「消費税は社会保障に使われていない」との言説が消えないのは、「評論家」の肩書きを使うものがそう主張してきたからだ。
消費税(10%)は、国税の消費税(7.8%)と地方消費税(2.2%)に分けられる。一般財源として使われる消費税は、地方税収分を除いて全額が社会保障財源だ。
令和6(2024)年当初予算の消費税(国・地方)の予算額30.2兆円のうち、国税の消費税の全額19.2兆円と地方分のうち8.0兆円が社会保障財源に充てられている。
国税の消費税の使い道は、社会保障4経費(年金、医療、介護、子ども・子育て支援)に使われる。地方消費税は、社会保障4経費に加えて生活保護、児童福祉、国民健康保険、年金などに充てられている。
こうして国民生活を維持するために使われている消費税を半分にしたり全廃したときに、それを充当するだけの財源を示さなければ無責任極まりない。だから財源論議が行われるのだが、恒久的に確保する道はあるのだろうか。
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アベノミクス路線に乗り国債金利を強引に抑えてきた日銀
日本は公債残高が1,000億円を超えた世界最悪の借金国だ。それでも財政破綻していないから、れいわ新選組のように「どんどん国債を発行すればよい」といった主張がまかりとおっている。
なぜ財政破綻がないのか。それはたとえば2025年度一般会計当初予算の歳出で国債費が28兆2,179億円なのに対して、利払費は10.5兆円で済んでいるからだ。巨額の借金が重なっていっても、利払い費は1990年代末から2000年代半ばには減少し、その後は横ばいで推移している。
この放漫財政を続けてきたのが日銀で、いまや国債残高の5割を保有している。まともな中央銀行はこんな政策をとらない。アベノミクス路線に乗って日銀が強引に金利を抑えてきたのだ。高い金利を付けなければ国債を買ってもらえない。
借金を後世の世代に負わせないというのは、市場経済において市場原理が働いて、いつなんどき日本円や日本国債が売り込まれるかわからないからだ。2022年にイギリスのトラス首相が財源の裏付けなく、補助金を配り、所得税を減税する「成長戦略」を取ったため、ポンドも国債も売られ、首相は辞任を余儀なくされた。いわゆる「トラスショック」だ。では日本は大丈夫なのか。
(本記事は有料メルマガ『有田芳生の「酔醒漫録」』2025年5月16日号の一部抜粋です。「消費税減税論の是非と日本経済の現状(下)」は5月23日配信号に掲載されます。続きをお読みになりたい方は、、初月無料の定期購読にご登録の上お楽しみください。このほか、1ヶ月単位でバックナンバーもご購入いただけます)
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