夏の参院選を前に、各党が声高に主張する消費税の減税。物価高に頭を悩ます国民の間からは期待の声が上がっていますが、はたしてその政策に「実現性」はあるのでしょうか。今回のメルマガ『有田芳生の「酔醒漫録」』ではジャーナリストで衆議院議員の有田さんが、消費税減税に伴う極めて大きな問題について考察。その上で、「責任ある政治」に求められる要素を提示しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:消費税減税論の是非と日本経済の現状(上)
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消費税減税論の是非と日本経済の現状(上)
コロナ禍が沈静化してから国際的に物価高傾向が見られたが、日銀によるアベノミクスの微調整で、日本でもインフレ傾向にある。とくにコメの高値が続くことは象徴的だ。
この春には約4,000品目で物価が上がり家計を直撃している。そこにトランプ関税だ。日本経済の行方は不透明さを払拭できない。そうした状況にあって夏に行われる参議院選挙に向けて各政党は消費税減税を政策として打ち出している。
自民党税制調査会も消費税に関する勉強会を近く開催して、2012年に消費税率を10%に引き上げることを明記した一体改革の経過を振り返り、税率を下げる場合の課題を整理する。
これは選挙を控えた参議院自民党の8割が消費税の引き下げを求めていることへの対応だ。鈴木俊一総務会長は記者会見で消費税は「社会保障を支える重要な財源だ」と語った。
公明党は参院選の公約に減税を明記する方針だ。立憲民主党は食料品の消費税率ゼロに向けて財源の検討に入っている。日本維新の会は2年間だけ食料品の消費税率をゼロに、国民民主党は時限措置として一律に消費税率を5%に下げるとする。共産党は5%に引き下げて、いずれ廃止をうたい、れいわ新選組は即時廃止だ。
国民にとって日常生活で毎日のように実感する消費税を減税するならば、それは生活費にただちに反映されるのだから、これほど嬉しいことはない。ただし大きな問題がそこにはある。
2025年度一般会計予算の歳入総額は115兆5,415億円。そのうち消費税は24兆9,080億円(21.6%)。消費税を全廃すれば、この約25兆円の財源をどこから捻出することができるのかという問題だ。
一般会計の歳出総額は115兆5,415億円。そのうち社会保障費は38兆2,778億円。一般歳出で社会保障費の割合は56.1%を占めている。
まずは事実から議論を進めなくてはならない。消費税を5%に下げると主張するなら財源として15兆円が必要だが、たとえば共産党は大企業・富裕層への減税・優遇をただし、恒久的な財源をつくると主張している。立憲民主党が主張する食品の消費税ゼロの場合は、財源が5兆円必要になる。もちろん政策に実現は与党にしかできない。
選挙などの政治活動で各党が活発に政策論争を戦わせ、有権者の支持を争うのだから、主張の核心は実現性におかれなければならない。「消費税は全廃」といえば、「そうだ」と喝采を受けることもあるだろうが、責任ある政治は根拠を示さなければならないのだ。
ネット言論などでは「消費税は社会保障に使われていない」などという言説が飛び交っている。果たしてそうなのか。責任ある政治を進めるには、まず厳然たる事実から見ていかなければならない。
(本記事は有料メルマガ『有田芳生の「酔醒漫録」』2025年5月9日号の一部抜粋です。「消費税減税論の是非と日本経済の現状(中)」は5月16日配信号に掲載されます。続きをお読みになりたい方は、、初月無料の定期購読にご登録の上お楽しみください。このほか、1ヶ月単位でバックナンバーもご購入いただけます)
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