野党のみならず、自民党内部からも上がる消費減税を求める声。各種世論調査でも多くの国民が減税に賛成しているのが現状ですが、現役国会議員はどう見ているのでしょうか。今回のメルマガ『有田芳生の「酔醒漫録」』ではジャーナリストで衆議院議員の有田さんが、各党の「要求」を紹介するとともに、財源論議の重要性を強調。さらに立憲民主党の枝野幸男氏が「減税ポピュリズム」を批判する理由を解説しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:消費減税になびく政界はポピュリズムなのか
くすぶり続けてきた政治の争点。消費減税になびく政界はポピュリズムなのか
参議院選挙が投票日を迎えるまでに約3か月。ここにきて与野党で消費減税を求める声がいっそう高まっている。消費税廃止(れいわ)、緊急に5%に引き下げ、さらに廃止する(共産党)、食品の軽減税率を0%に(立憲の江田グループ)、参議院自民党の改選組の「消費減税を政策に」などなどだ。
消費減税は日々の生活に直結しているから物価高やトランプ関税に対応する政策としてもっとも相応しいと聞こえるだけでなく、基本的に重税感があるから減税を切実に望んでいる庶民の現実がある。だが財政や金融の仕組みは複雑で、財源論議が伴わなければただの願望に終わってしまい、有権者向けの「甘いささやき」に終わってしまう。選挙で支持を拡大できればいいだけなら、それこそポピュリズムの笛を吹くだけの無責任政治だ。
こうした議論が続くなかで立憲民主党の枝野幸男最高顧問が「減税ポピュリズムに走りたい人は別の党を作ればいい」と党内論議を評したために、小沢一郎議員は「傲慢だ」と怒り、江田憲司議員も「言論封殺」と批判した。これまで野党のなかで議論になってきた消費減税問題は、安倍晋三政権で10%に引き上げられて以降、ずっと政治の争点としてくすぶってきた。
コロナ禍においてはドイツ、イギリス、オーストリアなどでは、減税期間を明らかにして標準税率を下げた例がある。ただしドイツでは期間は6か月(標準税率19%→16%)、イギリスでは1年8か月(飲食と観光で20%→5%)、オーストリアでは約1年半(宿泊、出版など10%→5%)で、いずれも時限的な減税だ。
日本で食料品の税率を0%に下げたとしても、経済が復活しなければ税収に年間で5兆円の穴が空き続ける。その財源を江田グループ案では、外為特会満期となった米国債償還金を活用するとしている。共産党は大企業への減税が年間で11兆円になり、1億円を超える所得の富裕層、大株主は、税負担率が減っていく優遇税制になっているから、それを正せば、消費税を5%にするための15兆円規模の財源ができるとする。
財源は「借金で賄えばいい」とする議論は論外だ。消費税10%は、約23兆円だから日本の税収の約3分の1を占める。これを赤字国債で賄っていけば、急激なインフレを引き起こす危険があるというのが常識的な経済理論だ。
この記事の著者・有田芳生さんのメルマガ