受験シーズン真っ只中の今年1月、大学受験予備校が「破産申立」したことが大きな話題になったことを覚えていますでしょうか。計画倒産では?などとネットユーザーたちから批判の声があがっていましたが、「悪意があったとは思わない」とするのは、メルマガ『『倒産危機は自力で乗り越えられる!』 by 吉田猫次郎』の著者である吉田さん。この一連の報道から、計画性のない行き当たりばったりの破産であったことを指摘しています。
倒産は(迷惑を最小限にとどめられるよう)計画的に!
東京都新宿区に本社のある(株)日本学力振興会という受験予備校が、今年1月4日に突然事業停止し、1月10日に破産申立したということで大ニュースになりました。
少子化を理由にしていますが、実態は放漫経営にあったようです。
それにしても、私が一連の記事を読んで感じたのは、
「なんて無計画な倒産なんだ・・・」
「もっと上手にやれなかったのかよ・・・」
です。
ヤフーニュースのコメント欄などに「計画倒産だ!けしからん!」と数多く書かれていましたが、私はそうは思いません。
むしろ計画性のない、行き当たりばったりの破産のように思います。
なにしろ、この予備校は負債総額が1億円程度しかない模様です。
負債の大半は、講師への未払い賃金や、生徒からの前受金のようです。
ということは、金融機関からの借入金は数千万円単位でしょう。
なぜそんなに慌てて破産する必要があったのか?この時期に。
1月といえば、受験直前の最もデリケートな時期なのは言うまでもありません。
いちばん倒産してはいけない時期です。
こんなときに突然破産するメリットが、一体どこにあったのでしょう?
財産隠し?いやいや、もし少しでも多くの財産を残してバックレるつもりなら、もっと早い時期のほうがいいに決まっているではありませんか。
この予備校は、なにやら春の入塾時に1年分の受講料を一括で回収していたそうです。それも、医学部や難関大学を目指す少数精鋭予備校という触れ込みで、1人あたり250万~450万円くらい取っていたようです。
もしそれが本当だとしたら、本当の悪徳業者だったら夏頃にXデーを設定していたのではないでしょうか。
春にがっぽり回収した受講料も、年末年始のこの時期になったら、ほとんど使い切ってしまうでしょう。
この記事の著者・吉田猫次郎さんのメルマガ
専門家にちゃんと相談したのかどうかも、気になって調べてみました。
ある記事によると、「12月に弁護士に相談」と書かれていました。
遅すぎますね。
全てが後手後手という印象です。
おそらく、何年も自転車操業が続いていて、春に一括で回収した受講料で春~夏までは一息ついたけど、秋にまた苦しくなって家賃や給与の遅配が発生し、場当たり的な金策に奔走し(意味不明の社長交代もここ1年で3回あった模様)、万策尽きて、思考停止になり、12月にやっと弁護士に相談、すぐに破産という結論に至ったというのが実態ではないでしょうか。
・・・で、仮にもし、私がこの予備校の経営者から相談を受けていたら、こんなアドバイスをしていたと思います。
- 倒産回避の可能性を、とことん探りましょう。
- 経営危機に至った原因を究明しましょう。(原因を分析しないと、良い治療法が見えてきませんから)
- どうしても倒産が避けられないなら、第二会社方式などを検討しましょう。(たとえば信頼できる講師の先生に託して、新会社を設立してもらい、そこに事業譲渡。生徒さんは新会社に引き継いでもらう)
- 相談先はウチだけではいけません。必ず弁護士や協議会などにも相談して、多角的に検討しましょう。
- 倒産する場合、Xデーを決めなければなりません。その基準は、社長の金銭的財産を守ることよりも、生徒さんに迷惑かけないことが第一です。受験が終わった3月頃がいいかもしれませんね。3月に生徒さんたちを見送って、以後は新たな募集はせず、ひっそりと。
- 講師の先生に対しても、精一杯のことをしてあげなければなりません。未払賃金立替制度、転職先の斡旋などなど。
- 同じ倒産でも、こうしたことを精一杯やれば、憎まれることがなく、惜しまれて倒産することができますよ。
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