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なぜ石破茂は「海外で評価」されているのか?世界が見る「信頼」と国内が抱く「違和感」とのギャップ

日本の石破茂首相は、国内の支持率が低迷している一方で、海外での評価は悪くないようです。メルマガ『j-fashion journal』の著者でファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんは、この評価のギャップの背景にある日本政治と国際社会の評価軸の違いを詳しく掘り下げています。

石破茂首相のイメージと実態~世界の評価と日本の不人気をめぐる考察~

私は、個人的に石破茂を好きになれないのですが、なぜか、海外の評判は悪くないようです。

日本国内の石破評は、石破個人の評判ですが、海外の石破評には、日本政府評、官僚機構評が重なっています。

そのあたりを詳しく解説してみました。トランプ評にも同じことが言えるかもしれませんね。

1.はじめに

2024年10月の衆議院選挙を経て、石破茂首相が就任して以来、国内外での評価は対照的な様相を呈している。

国内では支持率の低迷や「政治とカネ」の問題、「楽しい日本」発言の炎上など、厳しい批判にさらされている。一方、国際的なネット世論や海外メディアでは、日米同盟の強化や日中関係の改善、G7でのリベラルな姿勢が評価され、信頼感を獲得している。

このギャップは、石破氏個人のイメージと実態、さらには、リーダーシップに関する、世界と日本の考え方の違いに起因するのではないか。

本稿では、これらの要因を整理し、現在の世界情勢と日本の内政を踏まえた考察を行いたい。

2.石破茂のイメージと実態

2-1.国内でのイメージ:孤立と失言

石破茂氏は、自民党内で長年、非主流派として活動してきた「異端児」である。

2024年の自民党総裁選では、党員票で高市早苗氏に僅差で敗れたものの、決選投票で逆転勝利を収め、首相に就任した。しかし、党内での支持基盤は脆弱で、派閥間の対立や求心力不足が目立つ。国内メディアは、彼の孤立感や党内での不人気を強調し、「リーダーシップ欠如」の印象を強めている。

さらに、2025年1月の施政方針演説で掲げた「楽しい日本」というスローガンが、物価高や経済停滞に苦しむ国民の生活実感と乖離しているとして、ネット上で大炎上した。

この発言は「軽率」と受け止められ、支持率低下の引き金となった。更に、2024年秋の衆院選で、初当選した自民党議員への商品券配布問題が発覚し、「政治とカネ」のスキャンダルとして、野党やメディアから追及を受けた。これらの失点は、石破氏個人への批判を加速させ、「地味で共感力に欠けるリーダー」というイメージを固めた。

2-2.実態:防衛・外交の専門家

一方、石破氏の実態は、国内でのネガティブなイメージとは異なる側面を持つ。防衛相や防衛庁長官を歴任した「防衛族のドン」として、安全保障や外交に深い知見を有する。

特に、日米同盟の強化や日中関係の改善に注力し、2025年2月の石破・トランプ会談では、トランプ大統領とのWin-Winの関係構築に成功した。

この会談は、海外メディアで「日本の安定した外交姿勢」の象徴として報じられた。また、選択的夫婦別姓への前向きな姿勢や、靖国神社参拝を控えるスタンス、G7でのイスラエル非難など、リベラルな発言も国際的に注目されている。

石破氏の政策ビジョンである「地方創生2.0」は、地方経済の活性化や人口減少対策を目指すものだが、抽象的で短期的な成果が見えにくいため、国内では評価が分かれている。しかし、国際的には、日本の長期的な安定性を示す施策として一定の理解を得ている。

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3.世界の評価と日本の不人気

3-1.世界での高評価:日本政府の代表としての信頼

国際的なネット世論や海外メディアでは、石破首相は「日本政府の代表」として高く評価されている。この背景には、以下の要因がある。

3-1-1.日本の国家ブランドの恩恵

日本は、経済力、技術力、文化、観光地としての魅力等で、国際的に高いブランド力を持つ。石破氏は、この日本のイメージを体現するリーダーとして、個人の失点よりも、政府全体の信頼性で評価されている。

2025年のトランプ再選後の不安定な世界情勢では、日本の安定感が特に求められており、石破氏の慎重な外交姿勢も好意的に受け止められている。

3-1-2.官僚機構のサポート

日本の官僚は、外交や経済政策の専門性と継続性で、国際的に信頼されている。石破氏の外交発言や政策は、官僚の準備に支えられた「日本政府の公式見解」として受け止められ、個人の資質を超えた評価に繋がっている。

G7や国連での日本の立ち振る舞いは、官僚のサポートにより安定感を維持し、石破氏の信頼感を高めている。

3-1-3.協調的リーダーシップ

トランプ大統領の強硬な外交や、ポピュリストの台頭による「トランプ疲れ」が広がる中、国際社会は協調的で予測可能なリーダーを求めている。
石破氏の日米同盟重視、日中関係改善、気候変動や多国間協力へのコミットメントは、こうした期待に応えるものだ。特に、G7でのイスラエル非難やリベラルな発言は、グローバルなリベラル層から支持を集めている。

3-2.日本の不人気:国民の期待との乖離

国内での石破首相の不人気は、国民の期待と実感のギャップに起因する。

3-2-1.経済的実感の欠如

物価高や経済停滞、少子高齢化など、国民の生活課題は深刻だ。石破氏の「地方創生2.0」や「楽しい日本」は、長期的なビジョンとしては理解できるが、即効性のある経済対策や生活改善に直結しない。

これに対し、国民は安倍晋三元首相のような、明確なビジョンと強いメッセージで牽引するリーダーシップを求める傾向がある。

3-2-2.スキャンダルと失言の拡散

日本のネット世論は、Xや2ちゃんねるなどで、失言やスキャンダルが急速に拡散し、批判が過熱する。商品券問題や「楽しい日本」発言は、こうしたメカニズムで石破氏のイメージを大きく損ねた。

2024年衆院選で自民党が過半数を割り、少数与党の状況に陥ったことも、「リーダーシップ不足」の印象を強めたと言えよう。

3-2-3.党内基盤の弱さ

自民党内で非主流派だった石破氏は、党内支持基盤が弱い。派閥間の対立や高市氏への党員票の集中は、石破政権の不安定さを象徴するものだ。

国内メディアは、この党内対立を強調し、国民に「弱いリーダー」のイメージを植え付けている。

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4.世界が日本に期待するリーダーシップ

4-1.トランプ疲れと協調性の需要

2025年の世界情勢は、トランプ再選による地政学的緊張や、気候変動、経済の不確実性で不安定になっている。トランプ大統領やハンガリーのオルバン首相のような独善的なリーダーシップに対し、国際社会は「トランプ疲れ」を感じ、協調的で安定したリーダーを求めている。

そうした背景において、日本の首相には、以下の役割が期待されている。

4-1-1.日米同盟の安定化

トランプ政権の予測不能な外交姿勢に対し、日本は日米同盟の信頼を維持する役割を担う。

石破氏のトランプ会談での成功は、この期待に応えた例だ。官僚のサポートを受けた慎重な外交は、米国やG7諸国にとって「安心感」をもたらしている。

4-1-2.アジアでのバランス外交

米中対立が続く中、日本は中国や韓国との関係改善にも配慮する必要がある。石破氏の日中関係改善への努力や、経済的な結びつきの重視は、アジア地域での日本の役割を高めるものだ。これにより、日本は「橋渡し役」として国際的な信頼を得ている。

4-1-3.多国間協力の推進

気候変動やグローバルヘルスなど、国際的な課題には多国間協力が不可欠だ。石破氏のリベラルな姿勢や、G7での積極的な発言は、こうした協力の推進役としての評価につながっている。同時に、日本の高い国家ブランド力も、この役割を後押している。

4-2.国内とのギャップ:強いリーダーシップの期待

一方、国内の国民は「強いリーダーシップ」を求める。安倍元首相のような、カリスマ性や明確なビジョンで国民を牽引するリーダーが理想だ。

しかし、国際社会が求める協調性や安定性は、国内の「強いリーダーシップ」とは、必ずしも一致しない。石破氏の慎重で官僚主導のスタイルは、国際的には高評価だが、国内では「物足りない」と映るようだ。このギャップは、日本の首相が直面する構造的な課題といえよう。

5.官僚主導とリーダーシップのバランス

石破首相の評価ギャップは、「個人としての石破」と「日本政府の代表としての石破」の印象の違いを象徴している。

国内では、失言やスキャンダル、党内基盤の弱さが個人批判に繋がる。一方、海外では、日本の国家ブランドや官僚のサポートが信頼感を高めている。

トランプ疲れの国際社会では、協調的で慎重なリーダーが求められ、石破氏のスタイルはこれに合致している。しかし、国内では、国民の生活実感に直結する成果、強いリーダーシップが求められ、官僚主導の安定感だけでは不満を解消できない。

この状況は、どんな首相でも直面するジレンマだ。「官僚の言うことに耳を貸し、慎重に行動する」リーダーは、国際的には高評価を得やすいが、国内では変化や共感を求める国民の期待に応えにくい。

石破氏が今後、国内での支持を回復するには、物価対策や経済成長など、具体的な成果を打ち出す必要がある。一方、国際的な評価を維持するには、日米同盟や多国間協力を重視し、協調的な姿勢を続けることが有効だ。

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6.結論

石破茂首相のイメージと実態は、国内外で大きく異なる。国内では、孤立や失言、経済実感の欠如で不人気だが、国際的には、日本政府の代表として信頼を獲得している。

このギャップは、国内が「個人」に、海外が「政府全体」に焦点を当てる視点の違いによる。

トランプ疲れの国際社会では、協調的で安定したリーダーシップが求められ、石破氏のスタイルはこれに合致する。しかし、国内の「強いリーダーシップ」への期待に応えるには、国民の生活課題への具体的な成果が不可欠だ。

日本の首相は、国内外の期待をバランスさせる難題に直面しており、石破氏の今後の動向が、その成否を左右するだろう。

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■編集後記「締めの都々逸」

「石破をそんなに 責めるじゃないよ 褒めてくれてる人もいる」

石破・トランプ会談の時、主流マスコミは石破さんを褒めていましたが、ネット上の保守言論人の評判は散々でした。

ところが、時間が経つほどに、海外の評判も伝わってくるようになり、石破さんの評判が意外に良いことに驚きました。

どうやら、日本人の観点と、外国人の観点には差があるようです。ということで、今回のテーマになったのです。

海外から、日本の官僚制が安定感があり素晴らしいと評価されると、最早、政治家は誰でもいいのではないか、という気になってきますね。うーん、複雑です。(坂口昌章)

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image by: A.PAES / Shutterstock.com

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