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ホンマでっか池田先生が家庭菜園でキュウリとナス作りをやめてしまった理由

年をとると気力もしぼみやすくなりますが、小さな手ごたえや喜びを求めて日々を営むことは良いことではないでしょうか。メルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』の著者で生物学者、CX系「ホンマでっか!?TV」でおなじみの池田教授は今回、老化が始まった体と向き合いながら、ユーモアを交えて今年も畑仕事のあれこれを綴っています。

老骨に鞭打って畑仕事をする

歳をとってくると体力、知力だけでなく、気力も衰えてくる。なんかやる気が出ないのである。老人性鬱病か、テストステロン欠乏症か、重大な病気なのか、単なる老化なのかよくわからない。友人の養老孟司さんは全くやる気が出なくて、体重が1年で10kgくらい減少し、眠たくてしょうがないので、どうもこれは尋常じゃないと、病院に行ったら心筋梗塞で即入院となって、かろうじて助かった。私はそこまでひどくないが、徐々に体が衰えてきていることはよくわかる。

前立腺肥大症(だと思う)ので、夜中によくトイレに起きる。寝床に戻るとすぐに寝てしまうので、不眠で悩むことはないが、朝7時か8時頃目が覚めても、なんかやる気が出なくて、起き上がる気がしない。今は夏なので、軽く冷房をかけてうつらうつらしているのは至福の時間で、時々二度寝をして気が付くと9時になっていたりする。イヤイヤ起き上がって、最近は朝飯の前に庭の畑を見回るのが日課になった。だるい体を引きずりながら、トマトの芽欠きをしたり、病害虫にやられていないかを観察したりしているうちに徐々に元気が出てくる。

去年までは庭にいろいろな夏野菜を植えて、バラエティを楽しんでいたが、基本的に無農薬で作っている素人には手に余ることも多かったので、今年は相性の悪い野菜は作らないことにした。キュウリは最初の年こそ沢山成って喜んでいたが、次の年からはウリハムシの襲撃を受けて農薬なしでは栽培不可能と悟り、今は作っていない。

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ナスは相性が悪く、大抵は硬い石ナスのようになってしまうので、もう作らない。ものの本には受粉不良が原因と書いてあるので、花粉を媒介する昆虫が減少したせいかもしれない。昆虫にとっては猛毒のネオニコチノイドを多用しているのが原因だと思う。害虫退治のための農薬は同時に益虫も殺すので、さじ加減が難しい。ネオニコチノイドは昆虫の神経伝達を阻害するとされているが、昆虫だけでなく節足動物全般を殺戮し、成長期の子供の脳にも作用して発達障害の原因になるとも言われており、速やかに禁止すべきだと思う。アメリカのかなりの州やEUでは基本的に使用禁止で、こんなに無闇に使っているのは日本だけだ。

他にも、キヌサヤやエダマメやカボチャなども作ってみたが、あまりうまくいかないので、もう作らない。キヌサヤはうどん粉病にやられて悲惨になるし、エダマメはサルに食べられるし、カボチャは木の上に上って小さな天空のカボチャになって、見た目は面白いが、食べられるほど大きくならなかった。

というわけで、今年は、ミニトマトとガブリエルという大きな実の成るパプリカだけを作った。連休の少し前にホームセンターに行ってガブリエルの苗を4つと「天使のほっぺ」という名のミニトマトの苗を1つ買った。

値段はよく覚えていないが、前者は1つ500円くらい、後者が300円くらいだったかしら。去年、沢山実が成った「千果(ずっとセンカと読むとばかり思っていたがチカと読むらしい)」と「アイコ」の苗が欲しかったのだが、ホームセンターには売ってなくて、去年、売っていた「道の駅八王子滝山」に行って見たら接ぎ木苗が1つ310円で売っていたので、6つずつ買ってきた。接ぎ木苗としてはこの値段は安い。苗に水をかけていたお兄さんにトマトの苗は背が低いのを選んだ方がいいよと教わった。背が高いほうが元気だと思うのは素人の考えらしい。プロはよく知っていると感心した。株間隔を70cmくらいにして庭に植えた。苗を植える時は40cmくらいでも十分な気がするのだけれども、大きくなってくると、株間隔が70cmくらいでも狭い気がしてくる。

去年までは教科書通りに1本仕立てで育てていたのだけれども、今年は欲張って2本仕立てにしてみた。主軸の最初の花房のすぐ下から出てくる芽を伸ばして2本仕立てにするのだ。それ以外の芽は全部見つけ次第取るのが肝心で、ちょっとさぼるとすぐに芽が伸びて花が咲いていたりするので、油断がならない。トマトは軸が細いほうが甘い。軸が太すぎると、葉が茂りすぎて実が水っぽくなる。軸が太くなる原因は窒素肥料のやりすぎだと、言われているが、同じ品種で同じように肥料をやっても、隣は軸が太くてその隣は細いこともあるので、本当の理由はよくわからない。個体差があるのかもしれない。

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軸が太くなりすぎた時は、脇芽を取らずに15cmくらいまで伸ばしてやると、栄養が脇芽に取られて、軸がそれ以上太くならないので、その後で、脇芽を取ってしまう。脇芽を伸ばしたままにしておくと花が咲いて、栄養が分散してしまうので、軸の太さを調整した後は、脇芽を全部取って、それでも葉が茂るようだったら、葉軸の先半分くらいを取って調整する。

1本仕立ての場合は下から6~7段くらいまでの花房を残し、その上の軸を切ってしまう(摘芯する)。2本仕立ての場合は5段目で止めて、その上を摘芯する。欲張ると、花が咲いても実が成らなかったり、実が成っても大きくならなかったりする。肥料やりが上手くいけば、2本仕立ての場合は1株から200~300個くらいのミニトマトを収穫できる(1本仕立ての場合は150個くらい)ので、2本仕立ての方が効率はいいが、失敗すると、大きな実ができない。なんてことを試行錯誤しながらやっているわけだ。

今年は他にも前述のように「天使のほっぺ」というミニトマトの苗をホームセンターで買ってきて植えたのだが、これが正解で、皮が薄くてとても甘い実が成った。2本立てにしたので、250個くらい実が付いた。他にも「プチプヨ」というとても高価なミニトマトを春先に女房が買ってきて、これがとても美味しかったので、女房が種を取って発芽させて、10本くらいの苗を作ってプランターに植えた。

プチプヨは栽培が難しいということだったので、上手くいかないだろうと思っていたが、これが案外うまくいって、小さな実が付いて来た。今朝、見ると、ほんのり色付いて来たので、見込みがあるかもしれないと思ってちょっとワクワクしている。プチプヨはそんなに実付きがいい品種ではないようで、全部で200~300個くらい成れば御の字かしら。有機栽培のミニトマトの種というのももらって撒いたが、草丈はどんどん伸びるのだが、花は少ししか咲かず、実はほとんど付かなかったので、途中で処分してしまったーーー(『池田清彦のやせ我慢日記』2025年7月11日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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image by: Shutterstock.com

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