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“カネの亡者”に信じ込まされた幻想。「核兵器の存在が世界平和を維持させる」という核抑止論の大ウソ

人類史上もっとも残虐で非人道的な核爆弾が広島と長崎に投下されてから80年。しかし現在世界を見回せば、各国の市民から上がる核軍縮の声をよそに、日増しに核の脅威が高まりつつあるのが現実です。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、「核抑止論」はフィクションであると喝破。さらに「核なき世界」実現を妨害している勢力を暴くとともに、彼らの意図を解説しています。

※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:Fragileな国際安全保障の裏にある核抑止というフィクションと幻想

「意図的に作られた脅威とその強調」。核ミサイルの雨が降り注ぐ“第3次世界大戦勃発のシナリオ”を描いているのは誰か

「核兵器による抑止システムは幻想的な安全保障である」

8月6日に原爆投下から80年を迎えた広島に対して、ローマ教皇レオ14世が寄せた講和の内容です。

教皇レオ14世はまた「約7万8,000人が一瞬にして命を失った広島の惨事は『核兵器による破壊に対する普遍的な警告』となるべきだ」と指摘し、「強い緊張と流血の紛争がまん延する現代世界において、相互破壊の脅威に基づく幻想的な安全保障に対話の実践が取って代わることを願う」と述べました。

また平和式典において、広島県知事である湯崎英彦氏は、核抑止および力の均衡による抑止を“フィクション”と呼び、核兵器に頼らない(依存しない)抑止の在り方を今こそ構築するために世界の英知を集中させるべきであると訴えました。

私は2021年4月以降、湯崎知事と直接にお仕事をさせていただき、「核兵器が存在する世界は、私たちに真に持続可能な未来を与えない」との信念のもと、核廃絶に向けた取り組みを国際的に展開しています。

同時に紛争調停官として核兵器が存在する現実に直面し、ロシアによるウクライナ侵攻、インドとパキスタンという核保有国同士の衝突、インドと中国のデリケートな緊張の高まり、公表はしていないものの確実に核兵器を保有していると見られているイスラエルと、核兵器の保有の手前まで来ていると言われ続けているイランの刮目、そして非常にfragileな安全保障環境に懸念を高めて核兵器の保有に傾くサウジアラビア王国やUAEなどの中東諸国の議論など、非常に複雑に絡み合う懸念と安全保障に対する焦りに直面しながらお仕事をしています。

核廃絶の必要性が世界中で声高に叫ばれる半面、非常にfragileな国際安全保障環境は、核保有国に軍拡の選択をさせ、英仏は相互の核兵器を欧州の核の傘として用い、使用の権限はそれぞれが保持することを明示するものの、自国の核兵器の存在を再度鮮明にすることで、ロシアによる欧州に対する野心に警戒する姿勢を示しています。

また今週に入り、アメリカの核がNATOの核という名目で英国に運び込まれ、再度、英国領内に核兵器が配備されるという事態に至り、“核による抑止”が再び強調される事態になっています。

英国に配備された核は“使用可能な核兵器”と例えられる戦術核兵器であり、来るべきロシアからの攻撃を抑止するための目的を持ち、英国が原子力潜水艦に搭載する戦略核(一発の使用で壊滅的な破壊を招くもの)とは違いますが、これは長年守られてきた「核兵器は使われてはならない」という核のタブーを脅かし、核兵器を再び“使う可能性のある兵器“というステータスに置く【第3の核時代】への突入を意味すると理解しています。

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トランプが生んだ混乱を巧みに利用するプーチンと習近平

大の戦争嫌いまたは関心がないトランプ大統領は、場当たり的または有権者の関心を惹くだけの目的かもしれませんが、誰も本気で手を付けたがらなかったロシア・ウクライナ戦争の停戦にコミットし、イスラエルとガザの問題に、その手法に賛否は存在するものの、首を突っ込んでアメリカのプレゼンスを上げ、そして“マイナーな”戦争と言われたインドとパキスタンの武力衝突(カシミール地方)や、最近のタイとカンボジアの国境をまたいだ紛争の処理にコミットしたことは、それぞれの紛争が連携して、大きな惨禍に広がらないようにしていることは評価できると考えます。

しかし、ロシアのプーチン大統領や中国の習近平国家主席に圧力をかけるために、核の存在を使うことは、長い目で見ると、核兵器を含む紛争の拡散および拡大の危険性を高め、氏が防ぐと宣言した第3次世界大戦を近づけてしまったリーダーとして名を残すことになるかもしれません。

アメリカ政府、特にトランプ大統領が信じる“力による外交・平和”は、世界一の軍事力と経済力を持つアメリカが用いる場合には有効な手法となることがありますが、それを“有効”にする必須条件があるとすれば、紛争の芽を摘み、戦争の連鎖を防ぐリスクマネジメントをしっかりと考慮する明確な長期戦略が存在することだと考えます。

その明確な長期戦略は、これまで戦後80年を通して構築してきた【自由資本主義陣営・民主主義陣営の確固たる同盟関係に基づく連携と協調】を必要とします。

しかし、トランプ政権がこの半年ほどで行っていることは、同盟国の欧州各国や日韓に関税戦争を仕掛けて結束を乱し、国連や国際的な枠組みを軽視し、国際ルールでさえも平気で崩し、デリケートなバランスで世界の破滅の最後の砦となってきたり、全体主義の浸透を防いだりしてきた壁に綻びを生じさせ、結果として、欧州やアジアの安定を損ない、ラテンアメリカとアフリカ、そして中東地域をまた混乱の底に叩き落すことになりかねないとの懸念を強めます。

そしてそのような力の空白と混乱を利用するのが非常にうまいのがロシアのプーチン大統領であり、中国の習近平国家主席です。

最近、ロシアのプーチン大統領が一向にウクライナ戦争の停戦に応じないこと(のらりくらりとかわすこと)に苛立ち、関税の発動をチラつかせ、かつ2隻の原子力潜水艦をロシア近海に配備するといった脅しをかけてみるトランプ大統領ですが、すでにロシアはそれらをただのブラフと意に介さず、プーチン大統領は8月1日の演説で「ロシアの目標は変わらず、国家安全保障に対する脅威の除去という根本的な目標の獲得のために尽力する」と対決姿勢を示し、メドベージェフ前大統領はアメリカからの核の威嚇を「アメリカがそのようにロシアを脅すことを選ぶのであれば、ロシアはそれに応えるまでのこと。アメリカは本当にそれを望むのか?」と挑戦的な反応をぶつけ、核の威嚇には核の威嚇で返すことを選んでいます。

中国については、いろいろな紛争の仲介に乗り出し、解決に向けた提案を行いながら、自国の軍拡、特に核戦力の拡大に勤しんでいますが、それは抑止力というよりは、アメリカとその仲間たちが、台湾の防衛を理由に中国に軍事的なちょっかいをかけてくる場合、自国防衛のために実際に使用する可能性が高い戦術核兵器を含めた核戦力の拡充と意図していると理解できます。

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「何かの機会に使ってみたい」。核保有国リーダーの本心

協調の綻びは世界のパワーバランスを変え、分断を助長し、“力による平和”ではなく、“力による強制”に国際情勢の現実を変えてしまいます。

それがロシアによるウクライナ侵攻に現れ、イスラエルによるガザへの容赦ない攻撃とヨルダン川西岸地域の支配を通してのパレスチナという“自国の安全保障の最大の敵であり、自らの生存の最大の脅威”を葬り去るという決意に現れ、力によりアジア・南シナ海沿岸を自国のsphere of influenceに染め上げようとする中国の狙いとして表れています。

そしてそれらすべてが核保有国であり、それと対峙するのもアメリカや英国、フランスといった核保有国です。そしてインドやパキスタン、さらには北朝鮮が両ブロックの隙間で不安定要素として存在するのみならず、次第に力をつけて国際情勢の趨勢に影響を与え始めています。

負の力の均衡が核兵器の存在において行われており、それを核抑止の“成果”という専門家も多々いらっしゃいますが、湯崎広島県知事の挨拶にもあったように、核抑止も戦後80年間無事に守られたわけではなく、核兵器使用手続きの意図的な逸脱や核ミサイル発射拒否などにより、破綻寸前だった事例も歴史に記録されています。

以前、何度か核兵器の開発に携わる科学者たちと議論する機会があり、その際に明かされた“本当の気持ち”を思い返し、ちょっとぞっとしています。

「人間が作り出した自らを種として破滅させるための最初で最後の兵器が核兵器だ。自らの知見がこのような地獄の兵器を作り出したことに対して、言葉では言い表されない罪の意識と後悔を感じざるを得ないが、正直なところ、『作り出したものがどれほどのものなのかという成果を目にしてみたい』という抗しがたい欲求があることは否定できない」というものでした。

それを軍の当事者やリーダーたちが明かしてくれた“本心”と合わせてみると、非常に恐ろしいことが想像できます。

「これらの究極手段を使ってはいけないことは頭でも心でも理解している。自分が生きている間はもちろん、その先の何世代にもわたって、これらが使われることが決してない、ただの象徴でありつづけるように最善を尽くすことが使命だと感じている。しかし、実際に使うことができるものを持っているという現実は、同時に、何かの機会に使ってみたい、いや、使わなくてはいけないという欲求が沸き起こることに繋がることを認識させる。国家を守る、国家を預かるというのは、そういうことなのではないかと考える」

これらの心の中のジレンマが、これまでは良い方向に傾いていてくれたから、戦後80年において核兵器は使われずに済んでいると思われますが、それでもベトナム戦争しかり、朝鮮戦争然り、数度にわたる中東戦争然り、そして中東を混乱に陥れた湾岸戦争や、アフガニスタンにおける20年にわたる戦い、そしてミャンマー内戦、アフリカ全域で続く数々の内戦と紛争など、戦争を防ぐことはできていません。

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核使用を含め何が起きても不思議ではない中東情勢

「国家を預かる者の責務、国民にとっての生存に対する脅威の除去こそがリーダーの責務」と訴えかけて、現在、無差別殺戮が行われているのが、言い過ぎかもしれませんが、イスラエルによるガザ壊滅作戦であり、パレスチナに対する後戻りできない戦いであり、シリアやレバノンに対する武力介入であり、そして宿敵イランへの攻撃と言えるのだと思います。

ハマスが2023年10月7日に行ったことや、その後、人質の生命を犠牲にしていること、そして数日前に国際的に流されたイスラエル人人質の悲惨な現状などは、どのような理由があっても決して許される行為ではありませんが、その後のイスラエルの反応は過剰という表現では言い尽くせないほどの残酷なものであると考えます。

そしてそれを利用したイスラエルの奥底に根付く対パレスチナ、対アラブの心理が政治的に利用され、今、ネタニエフ首相と政権による超強硬姿勢を後押しすることに繋がっていると見ています。そこには「イスラエルは絶対に負けない」という信念を支える核兵器の存在があります。

「アメリカはいずれ離れるかもしれない。でも我々には究極の防衛兵器、防衛力がある」

10月7日以降、イスラエルの高官と協議した際に出てきた表現ですが、その“究極の防衛兵器”が具体的に何を指すのかは言ってはくれませんでしたが、尋常ではない覚悟が宿っていることをひしひしと感じました。

パレスチナにイスラエルが核を用いることはないと考えますが、今週、ネタニエフ首相が行う“限定的な安全保障協議”においてガザ全域をイスラエルが占拠し(「敵の打倒」と「ガザがイスラエルの脅威に再度ならないことが大事」との目標設定)、ヨルダン川西岸地域の完全制圧まで目指す方針が示された場合には、これまでギリギリのラインでイスラエルに対する攻撃を思いとどまってきたアラブ諸国が、国内の声に押されて、一気に徒党を組んでイスラエルに戦いを挑むような事態になった場合、核の使用が作戦のテーブルに上がらないということは、誰も保証できないと思われます。

「自らの生存の確保のために持てるものはすべて活用する」ことがイスラエルの方針であれば、何が起きても不思議でありません。

それに比べると、米国やロシア、中国の核はまだ厳しい管理下に置かれ、使用のためのハードルはかなり高いと言えますが、今後、インドとパキスタンのいざこざが再噴火したり、中印が偶発的な衝突を起こしたりした場合、そして北朝鮮が暴発するような場合には、核兵器が現実的な兵器として、作戦上に現れるかもしれません。

この恐ろしい戦争の連鎖を止めるためには、現存の危機の種を早く収め、解決に導く必要があります。

それがタイとカンボジアの武力衝突であり、ロシアとアゼルバイジャンの間で燻る武力衝突の可能性です。

今、どちらのケースも国民感情が高まり、政府が行う懲罰的な戦いを容認する空気が生まれていて、それがいつさらなる紛争の勃発に繋がるか分からない状況になってきていますが、これらが本格的な戦争に発展した場合には、イスラエル絡みの紛争から中央アジア、ロシア・ウクライナ戦争に繋がり、カザフスタンからスタン系の国々を通り、最後はインド南端に及ぶ回廊を伝ってインドとパキスタンの紛争に繋がるだけでなく、南シナ海で高まる中国とその他の国々との緊張の高まりが武力衝突の連鎖に発展することになるかもしれません。

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決して忘れてはいけない「戦争は儲かる」という事実

現在、中国については、フィリピンやインドネシア、ベトナムという潜在的に衝突しかねない国々があることを認識し、インドとの不必要な衝突も回避する方針が取られており、中国の安全保障上の関心は台湾海峡を巡るアメリカとその仲間たちの出方に集中しているようですが、戦争の連鎖が意図せずに南下してくる場合には、中国も戦争の輪に巻き込まれることになり、そうなると何が起こるかわからないだけでなく、日本も確実に直に巻き込まれることになりますし、第3次世界大戦という“お化け”が現実になると思われます。

実際のこのような究極のシナリオになるかどうかと問われれば「ありうる」と答えますが、同時に「でもその可能性はかなり低いと考えている」と答えます。

私はただの紛争調停官ですので決してすべてを知っているわけではありませんが、いろいろなやり取りを通じて感じることは、これらのシナリオの源になっているのは、【誰かによって意図的に作られた脅威とその強調】ではないかということです。

最悪の事態を考えればキリがありませんし、なぜか私たちはそのような時に非常にクリエイティブになってしまうのですが、戦争は非常に儲かり、危機の存在の強調は防衛力の必要性と軍の存在意義をクローズアップすることに繋がることも忘れてはなりません。

アメリカの軍およびペンタゴンが議会の公聴会で定期的に繰り返し強調したロシアの脅威も、中国がアメリカを凌駕するという脅威も、これまでのところアメリカ合衆国の国家安全保障を脅かすものとして現実のものにはなっていませんが、その脅威が強調される度にペンタゴンと軍は予算を獲得し、軍備を拡張しています。

それはアメリカだけでなく、欧州各国もそうでしょうし、賛否両論あるでしょうが、日本の自衛隊を巡る予算措置も同じだと考えます。

「備えあれば患いなし」

これは防災にも防犯にも、そして国防においても事実であると思います。しかし、国防・防衛の拡充にフォーカスした場合、一体、私たちは具体的に何に対して備えを拡充させているのでしょうか?

相互に相手に危機意識を持ち、脅威に感じるスパイラルが固定化することで、国々は防衛費の拡充に走り、それが各国の軍拡につながり、そして究極には核戦力の拡充と非核であっても非常に高い殺傷能力を持つ兵器の開発と拡充へと繋がります。

このような事態を眺めつつ、背後でほくそ笑むのは誰でしょうか?

兵器産業の皆さんとそこから利益を分け与えられているリーダーたちです。

余談になりますが、毎年2月に私は2つの全く違った会議に呼んでいただいています。1つは皆さんもご存じのミュンヘン安全保障会議(MSC)、そしてもう1つがトルコ・イスタンブールで開催される通称武器フェアです。

前者では各界のリーダーたちが国際安全保障の確保について話し合い、どのように協力できるのかが議論されますが、その次週に開催されることが多い“武器フェア”では、最新鋭の武器・システムなどが所狭しと並べられ、世界中の武器商人とその顧客となる各国の軍のリーダーたちが真剣に商談を行っています。

非常に不思議な光景なのは、そこに米中、米ロなどの緊張もなければ、イラン、北朝鮮などの軍の幹部も同じ空間におり、挨拶を交わしています。

そして講演などではいかに最新鋭兵器が世界の安定を“戦争抑止力”として守っているかが説かれます。

私は毎回、違和感を臆することなく表明し、講演やパネルなどでも考えを表明するのですが、2月のジレンマは毎年続き、それと並行してロシア・ウクライナ戦争は長期化し、ガザでは悲劇が拡大し、様々なところで争いの種が拡大しています。

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「フィクション」であることが見えてくる核抑止論

そして“脅威”を理由に核兵器と兵器システムも拡充されていきます。

ロシアは核兵器のアップデートを行い、それを実戦配備する予定ですし、中国は毎年100発以上のペースで核弾頭を増強し、アメリカも新型の核兵器(B61-13とB62-12など)を開発し、近日中に配備される予定になっています。

そして英国は本土にアメリカの核を再度配備していますし、英仏は“欧州の核の傘”としての核戦力の拡充に舵を切っています(英国はジョンソン政権時に核弾頭の増強に言及しています)。

そして北朝鮮は、これは推測に過ぎませんが、対ウクライナ戦への参戦とロシアへの武器提供などの見返りに、ロシアから核兵器関連技術とノウハウを得て、同じく獲得する弾道ミサイル技術と合わせて、核兵器の運用能力を高めています。

イランの核保有の有無と可否が、もしかしたら核兵器の終わりなき拡散と拡大を左右する最後の砦かもしれませんが、核不拡散を取り決め、イランも参加するNPTも、核の平和使用の番人たるIAEAも、イランを含む各国に核の平和利用のためのウラン濃縮は禁じていないため、“平和利用”との主張がなされる限りは、法的にイランなどを止める理由はないとも言えるため、現在行われている欧米諸国によるイランへの圧力の増大は、イランの核開発を急がせる危険な要素になってきているような気がしてなりません。

「核兵器が存在することにより、世界平和が保たれた」という核抑止論は、いろいろな要素が背景に存在して成り立ってきた考えですが、そのバックにある諸々の現実は必ずしも核兵器の存在を必要悪とする基盤とはなっておらず、あくまでも意図的に増幅された脅威の強調と、“だれか”の利害によってクローズアップされて本当のように信じられている幻想であり、そしてフィクションであることが見えてくるかと思います。

以前、どなたから教えていただいた表現に、「戦争とは、爺さんが始めて、おっさんが命令を下し、若者たちが死んでいくもの」というのは、現在の状況を見事に言い当てていると思いますし、まさにこれが今、世界で、そして紛争の最前線において起きている悲しい現実であると考えます。

日曜日は長崎への原爆投下から80年の節目を向かえ、来週15日には終戦80年を迎えます。そして世界に目を向けると9月3日には、中国・北京で対日戦勝80周年が祝われることになっています。

先の世界戦争から80年経った今、世界は平和で安心できる場所になるどころか、いつ再び世界戦争の惨禍に見舞われるか不安に感じる時代になっているように思います。

広島および長崎への原爆投下から80年。

被爆者の皆さんが身をもって世界に訴えかけてきた核兵器廃絶の必要性と願いの実現はもちろんのこと、皆さんが身をもって世界に示してきた「報復の連鎖を断ち切ることの重要性」を今、私たちは認識し、戦争の背後にある幻想を打ち払い、国際協調を取り戻すために力を併せることが必要であると、強く訴え、私自身も心血注いで平和と安心の実現のために働きたいという決意を述べて、今週号のコラムを終えたいと思います。

以上、今週の国際情勢の裏側のコラムでした。

(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2025年8月8日号より一部抜粋。全文をお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録下さい)

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世界各地の紛争地で調停官として数々の紛争を収め、いつしか「最後の調停官」と呼ばれるようになった島田久仁彦が、相手の心をつかみ、納得へと導く交渉・コミュニケーション術を伝授。今日からすぐに使える技の解説をはじめ、現在起こっている国際情勢・時事問題の”本当の話”(裏側)についても、ぎりぎりのところまで語ります。もちろん、読者の方々が抱くコミュニケーション上の悩みや問題などについてのご質問にもお答えします。

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