新聞やテレビがこぞって総裁選の勝馬探しに奔走しています。しかし、メルマガ『佐高信の筆刀両断』の著者で辛口評論家として知られる佐高さんは、スピード優先の報道が誤報を生み、政治の本質的な問題が置き去りにされていると語ります。
新聞より旧聞を
『朝日新聞』をはじめ、大手紙が長嶋茂雄の死を1面トップで報じてスポーツ新聞になったと思ったら、今度はテレビを含めてほとんどのメディアが競馬新聞と化した。
誰が自民党総裁になるかの予想に血道をあげている。
石破茂の退陣をめぐって、『読売新聞』や『毎日新聞』の誤報が騒がれている中で、私は『日刊ゲンダイ』に求められて9月6日付の同紙に次のコメントを寄せた。
「『世襲・裏金・統一教会』と私は言っているんだけど、この3つを追及するのが新聞の役割なんじゃないか。
それなのに、今の政治の問題点を指摘することなく、『退陣へ』などと『予告記事』ばかりに血道を上げる。読売だけじゃなく、メディア全体が方向をはき違えています。だから、報道の自由度で発展途上国並みの66位なのですよ。メディアにはその事実を噛みしめて欲しい」
城山三郎の皮肉な新聞の読み方を思い出す。
「新聞は原則として夕方まで読まないようにしています。新聞を読むと腹が立つことが多くて仕事の邪魔になるから」
それで夕食の時に夕刊と一緒に目を通す。
「僕は、早い情報よりも正確な情報を取るべきだと思うんです。新聞の場合、早いことは確かだけれども、誤報の場合もありますし、実際に調べてみたら、全然違う理由によるものだったということがよくあるでしょう。そういう情報に振り回されて腹を立てたり悩んだりしても、損をするだけですからね」
「情報はスピードじゃない」という城山の指摘は、とりわけ、『読売』や『毎日』の幹部の耳には痛いのではないか。
スピードにこだわると、裏金や統一教会の問題を取り上げなくなる。『旧聞』だとしてである。
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自民党総裁選では小泉進次郎が有力らしいが、私は2023年2月4日付の『日刊ゲンダイ』の適菜収のコラムを忘れない。適菜は「自民党総裁のバカ息子5」の3位に小泉を挙げ、こう批判している。
「人妻と不倫し、その際利用したホテル代を政治資金で支払っていたと報じられた。同時期には復興庁の元部下の女性とホテルで密会。さらにメークアップアーティストの女性を赤坂の議員宿舎に呼びつけていた疑惑も。小泉ジュニアの“ジュニア”が暴走したというオチ」
ちなみに、バカ息子の第1位が岸田翔太郎で、2位が菅正剛、4位が福田康夫の息子の達夫で、5位が河野太郎である。
福田達夫は、統一教会と自民党の関係について「何が問題か正直わからない」と発言したが、適菜は祖父の福田赳夫が「アジアに偉大なる指導者現る。その名は文鮮明」と讃えたのを挙げて皮肉っている。
進次郎と共に有力と言われる高市早苗は統一教会関連の『ViewPoint』(世界日報社)の対談に出ていた。
そうした「旧聞」を新聞やテレビはもっと問題にすべきだろう。
予想は要らない。
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