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あの中島聡が解説。なぜNVIDIAはOpenAIに「15兆円」もの巨額投資をおこなったのか?

NVIDIAがOpenAIに対して約15兆円(1000億ドル)もの巨額投資を行ったことで、世界を驚かせました。市場が熱狂する一方で「実質的にはお金を回しているだけではないか」という冷静な見方もあります。その背景にあるのが、ベンダーファイナンス(Vendor Finance)という仕組みです。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では著名エンジニアで投資家の中島聡さんが、このベンダーファイナンスについてわかりやすく解説しています。

NVIDIAによる支配、ベンダーファイナンス

NVIDIAによるOpenAIへの$100billion(約15兆円)の投資が発表された後、NVIDIAの株価は再び急騰しましたが、この件に関しては、「お金を循環させているだけだ」と指摘する否定的な意見もあることは否定できません。

NVIDIAのような製品やサービスを提供する会社(ベンダー)が顧客に対して商品を購入する資金を提供する仕組みのことを「ベンダー・ファイナンス」と呼びますが、つまり、通常は銀行やリース会社が担う「資金調達」の役割を、製品を売る側のベンダー自身が担う形です。特に高額な設備投資や大型プロジェクトではよく見られます。

よく知られた例が、ボーイング社による航空会社に対するファイナンスです。ボーイングの旅客機は一台あたりの値段が数百億円と超高額商品です。購入する航空会社が必ずしも十分な資金や銀行からの信用を持っているとは限らないため、販売をスムーズに進めるために「ボーイング・キャピタル(Boeing Capital)」という金融子会社を持ち、以下のようなファイナンスを提供しています。

直接融資:航空会社に対して、ボーイング自身が資金を貸し付ける形で航空機の購入をサポートします。

リース契約:航空会社がすぐに資金調達できない場合、ボーイングが航空機を保有したまま貸し出すリース方式を取ることもあります。これにより航空会社は大きな初期費用を負担せずに運航を開始できます。

保証付き融資(ファイナンス保証):ボーイングが銀行など第三者金融機関からの融資に保証を付けることで、航空会社が資金を借りやすくする仕組みです。

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ベンダーファイナンスは「売るために自分で買えるようにしてあげる」仕組みで、ボーイングのような超高額製品のメーカーには不可欠な仕組みであり、製品販売と金融が表裏一体になっているのが特徴です。

NVIDIAの場合、融資ではなく投資という違いがあるため少し変則ですが、本質的にはベンダー・ファイナンスと言って良いと思います。NVIDIAはOpenAI以外にも、複数の顧客に対して、投資などの形でファイナンスを行っています。

その理屈で言えば、MicrosoftによるOpenAIへの投資もベンダー・ファイナンスの一種であり、最先端のAIの開発に必要な資金が大きく膨れ上がる中、NVIDIAやMicrosoftのように潤沢な資金を持つ会社が、業界全体に対して成長に必要な資金を提供するようになっているのです。

ベンダー・ファイナンスは、製品やサービスが生み出すキャッシュフローを、業界全体を大きくする再投資に回すという意味ではとても効果的ですが、投資先の会社の倒産や貸し倒れのリスクもあるので注意が必要です。

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image by: Shutterstock.com

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マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。IT業界から日本の原発問題まで、感情論を排した冷静な筆致で綴られるメルマガは必読。

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【著者】 中島聡 【月額】 初月無料!月額880円(税込) 【発行周期】 毎週 火曜日(年末年始を除く) 発行予定

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