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デジタル・ユーロとは何か? ECBが進める公的デジタル通貨の正体

欧州中央銀行(ECB)が「デジタル・ユーロ(Digital Euro)」の導入に向けて本格的に動き始めています。デジタル通貨といえば「仮想通貨」や「ステーブルコイン」を思い浮かべる人も多いでしょうが、ECBが検討している「デジタル・ユーロ」はそれらとはまったく異なる性質を持っています。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では著名エンジニアの中島聡さんが、ECBが公表している情報をもとにポイントを整理してデジタル・ユーロについて解説します。

Digital Euro

「デジタル・ユーロ」に関する記事(ECBのデジタル通貨、1人50万円に制限案 預金流出抑え銀行安定)を目にしたので、少し調べてみました。

欧州中央銀行が「Digital Euro」というページを公開しているので、それがとても良い参考になります。

まず最初に、最も重要な点を指摘しておくと、「デジタル・ユーロ」は、欧州中央銀行が発行する「デジタル通貨」であり、カテゴリーとしては、CBDC(central bank digital currency)と呼ばれるものです。

CBDCは、国の中央銀行が発行する「法定通貨」であり、「元」や「ユーロ」などの紙の法定通貨と全く同じ価値を持つものです。CBDCは、法定通貨立てのデジタル通貨という意味では、今話題の「ステーブル・コイン」ととても良く似ていますが、本質的には大きく異なるものです。

しかし、類似点の多さゆえに勘違いしている人も多いし、その誤解を利用して儲けようとする悪い人たちもいっぱいいるので、注意が必要です。

以下に違いを箇条書きにします。

発行者:CBDCの発行者は国の中央銀行ですが、ステーブル・コインを発行するのは国とは独立した法人(ほとんどの場合は営利企業)です。

管理者:CBDCの管理は中央銀行が行いますが、ステーブル・コインは、ブロックチェーン上のソフトウェア(スマートコントラクト)により自動化されたもので、非中央集権的に設計されています。しかし、非中央集権的とは言いながらも、発行者が多くの権力を持ち続けることが多いので注意が必要です。

法定通貨との関係:CBDCと法定通貨との交換は中央銀行により保証されています。ステーブル・コインは、それを発行する会社が、発行額と同等の法定通貨や国債を持つことにより、法定通貨との交換を保証しています。

リスク:CBDCは法定通貨を発行している中央銀行自身が発行しているため、法定通貨との交換に関してのリスクはゼロです。ステーブル・コインの場合、それを運営する会社が約束通りに発行額と同額の法定通貨や国債を保有していれば問題はありませんが、その約束が破られてしまうというリスクがあります(実際に、それによって破綻してしまったステーブル・コインが複数あります)。

テクノロジー:ステーブル・コインはパブリック・ブロックチェーンをテクノロジーとして使いますが、CBDCの場合は、(1)通常のデータベースを使う、(2)パブリック・ブロックチェーンを使う、(3)プライベート・ブロックチェーンを使う、などのいくつかの選択肢があり、まだどれが主流になるかは決まっていません。

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欧州中央銀行は、CBDCをどのように実装するかを現在も検討中です。 ブロックチェーンを使う場合、特にパブリック型では次のような課題が指摘されています。

マイニングによる膨大な電力消費

トランザクション速度の遅さと高コスト

技術的に未成熟で、電力効率と安全性の両立が難しい

こうした理由から、通常のデータベースで実装すべきだと考える専門家は多く、私もその一人です。 ブロックチェーンは間違いなく革新的な発明ですが、その真価が最も発揮されているのは、中央銀行などの権威に依存しないビットコインのような非中央集権型通貨においてです。

一方で、国家が発行する法定通貨をデジタル化するのであれば、信頼性・効率・ガバナンスの観点から、CBDCを中央集権的に運用するほうが合理的だと私は考えます。

米国では、(トランプ氏を再び支える人々の影響もあり)ステーブルコインを国家として支援する方向に動いています。しかし、これは大きな誤りでしょう。通貨をデジタル化するなら、公的なCBDCを、通常のデータベース技術で実装するのが筋だと思います。

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image by: FilipArtLab / Shutterstock.com

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