2005年に発生した、もはや「犯罪行為」とも言うべき重大事態いじめを隠蔽し続けてきた神戸市教育委員会。その組織的な不正の実態は、いまなお同市の教育行政に深刻な影を落としています。今回のメルマガ『伝説の探偵』では、現役探偵で「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、20年にも及ぶ隠ぺい工作の全容をあらためて紹介。その上で、第三者委員会の調査すら無力化しようとする「無敵の組織」化した教育委員会の問題点を指摘するとともに、再発防止策の欠如がもたらす危険性を問題視しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:神戸18年いじめ隠ぺい事件は更新されて今何年?
「隠ぺい記録」更新中。重大事態いじめを20年間隠し続ける神戸市教委の大罪
「神戸18年いじめ隠ぺい事件」を皆さんはご存じだろうか?2025年現在ではすでに「神戸20年いじめ隠ぺい事件」として更新されてしまったのだが。
伝説の探偵では数回にわたり、この驚くべき問題を取り上げた。
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まさに、酷いいじめのみならず、証拠の隠匿(15年間)、証拠のねつ造、虚偽答弁に虚偽報告など犯罪行為と言っても過言ではない行為が次々と行われていた事件だ。
さて、私の手元には、被害側から提供された「陳情の取り下げ書」がある。
この問題に関わる陳情が被害側から取り下げたという内容の書面だ。
なぜ取り下げたのか。この事情を知ると、問題の闇深さが浮き彫りになる。
まずは、振り返りも含めて、どういう問題なのかを見ていこう。
当時小学5年だった男児が、2005年4月より1年あまりにわたって、言葉による精神的な嫌がらせや肉体的暴力などのいじめに遭ったうえ、56万円余の恐喝被害を受けた。しかし、学校と市教委は2006年2月のいじめ発覚後、事件が表ざたになるのを嫌い、次の不法・不当行為を行なった。
これらの事実は、後に第三者委員会の調査(2020年11月~2023年5月)などから明らかになった。
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被害側からの提訴を想定し「偽証拠」までねつ造
もう一度書く。
以下に記す事項は、全て第三者委員会の調査により明らかになった事実であり、審議に関する明確な証言や証拠があるものだ。
- 被害者側には「いじめである、恐喝である」と説明していたが、加害者側には「いじめではない、恐喝ではない」と説明を行い、加害側がいじめを認めないように裏工作を行っていた。
- いじめや恐喝の事実を把握していたにもかかわらず、公式には確認できないとして、いじめを黙認、放置した。
- いじめ被害から逃げるために、被害側は転校を申し入れたが、いじめを隠ぺいするために転校を妨害した。
- 被害側は加害者やその保護者らに虚偽の噂を流されていた。被害側は校長に調査と指導を求めたが、実際に風評被害を生徒指導係の教諭から校長は報告を受けていたにもかかわらず、「そのような噂は全くない」と虚偽説明をして、名誉回復をしようとはしなかった。
- 学校長は市教委に「いじめがあった、恐喝があった」と公文書として報告書を提出していたが、市教委はそのような報告は受けていないとして、いじめの存在を否定していた。
- 市教委は被害側がモンスターペアレンツであるかのような印象を与え、「被害者当事者からの聞き取りができなかった」などと事実無根のねつ造理由を列挙して、いじめは確認できなかったと裁判所に虚偽の報告書を提出した。
- 6と同様に市議会でも、虚偽答弁を繰り返し行った。
- 市教委と学校の隠ぺい工作実態調査を求める議会陳情に対し、この調査に賛成する議員のところへ虚偽説明に回り、否決するように働きかけた。
- いじめの事実を示す重要な証拠を「不存在」として15年間も隠し続けてきた。
- 被害側に提訴されることを想定して、偽証拠をねつ造していた。
- いじめではないとするために、作為的なアンケート調査をおこなったり、作文を書かせるなどしていた。(ねつ造の手段の1つ)
- 神戸市教委は不祥事の再発防止を表面的な目的として、教育委員会内に「監理室」を独立した部署として新設したが、内情は市議会でも批判をかわすための不当な調査結果を出したり、本件の第三者委員会の調査の妨げになるような報告書を作成していた。
さて、調査報告書を見ればまだまだあるが、これを読む読者の皆様も、もう腹いっぱいだろう。書いている私もお腹いっぱいだ。休憩を挟まなければ、精神的にきつくなってしまう。
隠ぺい工作、証拠のねつ造、公文書の隠匿など様々な犯罪行為に手を染めつつ、これが追及されないように新設部署を作ったり、市議会への工作活動等を行い続けているというのが、異常都市、神戸市の現状なのだ。
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文科省の指導をも突っぱねる「無敵の組織」と化した市教委
陳情の題名は「いじめ隠蔽を認定した調査報告書を認め、関与した教職員らの処分等を求める陳情」である。
これは実は採択されている。
令和5年11月30日に採択されたが、教育委員会はこの陳情採択を実質無視しているというのだ。市議会に教育委員会は、この陳情採択について「採択陳情の処理経過及び結果の報告」という書面を出しているが、この内容も虚偽記載があるという。
もはや、お前らの言うことなんぞきかんぞ、嘘は嘘で塗り固めれば、どうにでもなるんじゃい!と突っぱねた形だ。
結果、令和7年11月20日に同様の陳情が出された。
前代未聞の同様陳情である。
しかし、当然と言えば当然だ。やっていないのであるから、再度しっかりやれというのは当たり前の事でもあろう。
本件の第三者委員会の調査には全国で最高額とされる費用が投じられている。そもそも、調査においては、時間の異常な経過もある上、隠ぺいに次ぐ隠ぺいと裏工作、証拠のねつ造までがあるのだ。ただでさえ、重大事態いじめの調査は真摯にやればやるほど大変であろうに、すでにあるハードルは前代未聞の異常であったわけだ。
ただし、これも税金の投入ということになるのだから、再発防止に全力でなければならないだろうが、神戸市教委は再発防止策を講じていないと評価出来る状況だ。
令和7年に入り、政府はこの問題を重く見て、総理補佐官が文科省に調査と指導を指示している。しかし、調査をする文科省に神戸市教委は「解決済み」として虚偽説明を行い、混乱が生じた。結果として文科省は再調査を行い、事実を把握した文科省は令和7年1月から5月まで粘り強い指導を繰り返したのだが、これも無駄に終わった。
神戸市教委は文科省の指導に従わなければならない法的根拠は存在しないとして、開き直ってしまったのだ。
※ 教育委員会は「独立」した行政委員会である
もはや「無敵の人」もとい「無敵の組織」なのである。
被害側に陳情を取り下げさせた巧妙な「骨抜き」
陳情の中には7項目あり、適正な処分や虚偽答弁の訂正などが求められている。
特に着目すべきは、教育委員会主導による組織的かつ計画的、しかも継続的な隠ぺい工作の数々だ。これは、第三者委員会の調査報告書でもしっかり記載されているにもかかわらず、これを主導した教育長や学校教育部長、児童生徒課長の処分を審査対象外としたことだ。
そもそも採択されていた陳情で当然に履行するはずのものなのだが、神戸市議会は陳情の一部を審査対象外としたのだ。これにより、審査対象は「いじめ隠蔽を認定した調査報告書を認めること等を求める陳情」に変えられてしまった。
いわゆる骨抜きであり、陳情趣旨が変わってしまった以上、被害側はこれを取り下げるに至ったというわけだ。
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間違えを認めぬ自分だけが偉いと思っている「痛い人」
教育委員会の制度自体、私は公に否定するつもりはない。良き面もあるし、悪い面もある。また独立した行政委員会というようになった経緯もあり、それ自体は否定する事はできないだろうと思っている。
しかし、こうした一部の傍若無人に振る舞う組織を見ると、結果はどうあれ、この制度自体をよくよく考える必要もあるのではないかと思えてならない。
きっとそれはそれは偉い人が必死に権力を振りかざした結果なのだろう。これだけの長い期間、隠ぺいを繰り返し、あらゆるところがその問題を指摘し、文科省までもが指導しても、挫けない。それはそれは、とっても偉い人だから平気なのかもしれないが、この事実を知った人のみならず、これを主導していた人や引き継いだ人らを知っている人も、一切、尊敬の念は抱いていない。
いわゆる、自称偉いと自分だけが思っている結構痛い権力者なのである。
神戸市議会においては、善良な判断ができる議員さんが結構いると耳に入っている。ぜひとも、この陳情にはよく耳を傾けて、神戸に暮らす子どもたちのためにも、不正は許さぬ態度をとってもらいたいところだ――(『伝説の探偵』2025年12月9日号より一部抜粋。続きをお読みになりたい方はぜひご登録ください。初月無料でお読みいただけます)
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