NVIDIAが発表した最新GPU「Rubin」は、45℃の温水で冷却するのが特徴で、出口温度は60℃近辺にもなります。この排熱を活用すれば、AIデータセンターの周りに温泉街を作ることも可能かもしれません。100MWの中規模データセンターなら、120~230軒程度の温泉宿に供給できる熱量が得られる計算です。日本の豊富な地熱を使った地熱発電とデータセンターを組み合わせれば、電力と排熱の両方を有効活用できます。メルマガ『週刊 Life is beautiful』では著者で著名エンジニアで投資家の中島聡さんが、AIデータセンターと温泉街の共存という斬新なアイデアを具体的な数値とともに検証しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです
プロフィール:中島聡(なかじま・さとし)
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。
45℃の温水で冷却する最新GPU
NVIDIAが発表した最新のGPU、Rubinは、45℃程度の温水で冷却するのが特徴です。直感的には不思議ですが、
- GPUダイ(チップ)は動作中もっと高温(ざっくり数十~100℃級)になり得る
- 45℃の水でも、チップとの温度差(ΔT)は十分ある
- 45℃は入り口の温度で、出口の温度は60℃近辺になることもあります
45℃まで冷やせば良いので、電力の必要なチラー(冷却装置)は不要で、外気を使って十分に冷やすことができる点が、従来型の水冷システムと比べて、優位になります。
しかしこれは同時に、この60℃のお湯を近隣で活用することが可能なことを意味しています。実際に暖房などに使われているケースもあるそうです。
そこで、AIデータセンターの周りに温泉街を作ることが可能かどうかを概算して見ました。温泉と名乗るには、地下から汲み上げたミネラルを含む水が必須ですが、それがある前提での概算です。
100MWで120軒の温泉宿が可能
最近だと、AIデータセンターの規模は電力で語ることが増えており、その単位はGWにまで増えています(1GWは大型の原発一機の発電量に匹敵します)。
仮に100MW(0.1GW)の中規模なAIデータセンターを想定して概算すると、100MWのデータセンターは、100MWの熱を発生するため、仮に70%の熱を使えるとすると70MW分の熱が使えることになります。温泉宿が使う熱量は、
- 小さめ(10~20室):100~200 kW
- 中規模(30~60室):300~600 kW
- 大型(100室~・温浴施設併設):1~3 MW
程度なので、大雑把に「120~230軒」程度の温泉街が作れる計算になります。
この記事の著者・中島聡さんのメルマガ
地熱発電との組み合わせ
日本にデータセンターを作る場合、一番の問題は電力ですが、これは日本に豊富な地熱を使うのが理にかなっています。100MW程度の発電量の地熱発電所を作ることは技術的に十分に可能であり(日本で最大のものは、現時点では55MWの大分県の八丁原発電所)、地産地消の観点からも理にかなっています。
しかし、地熱発電に適した地域は温泉地であることも多く、「地熱発電により温泉が出なくなったら困る」と言う理由から地熱発電が広まらないという日本特有の事情もあるので注意が必要です。
既に温泉が十分に出るところにAIデータセンターを作っても、排熱の活用ができないので、「地下水は十分にあるけど、温度が低い。でも火山活動が活発で地熱発電に適している」場所を選ぶ必要があります。
ボイラー不要で経営改善の可能性
調べたところ、有名な温泉地でありながら源泉の温度が低く、ボイラーで温めて提供している場所も数多くあるそうです。そんな温泉地では、ボイラーのための灯油代が経営を圧迫しているそうなので、そんなところにこそ、「地熱発電+AIデータセンター」をセットで提案するのも悪くないのかも知れません。
(本記事は『週刊 Life is beautiful』2026年1月20日号を一部抜粋したものです。「私の目に止まった記事(中島氏によるニュース解説)」、読者質問コーナーなどメルマガ全文はご購読のうえお楽しみください。初月無料です )
image by: MAG2NEWS