令和8年度の年金額が発表され、基礎年金は約1.9%、厚生年金は約2.0%の増額になりました。しかし、その他の変更もあり、年金を受け取る人にとっては無視できないものも含まれています。今回のメルマガ『事例と仕組みから学ぶ公的年金講座』では、著者で年金アドバイザーのhirokiさんが、令和8年度の年金額改定について、基礎年金・厚生年金・各種加算・在職老齢年金の停止基準額までを整理しながら、実際の計算の考え方と注意点を具体例とともに確認しています。
令和8年度からの年金額が1.9%~2.0%増額とその他の金額変更の計算
1.令和8年度から基礎年金の年金額が変更。
1月23日に令和8年度の年金額等が発表されました。
※令和8年度年金額改定(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/12502000/001639615.pdf
まず老齢基礎年金の満額からですが、令和7年度は831,700円(昭和31年4月1日以前生まれの人は829,300円)だったのが、847,300円(昭和31年4月1日以前生まれの人は844,900円)となりました。
令和8年度の物価変動率は3.2%アップ、賃金変動率は2.1%アップ、年金の伸びを抑制するマクロ経済スライドは0.2%(厚生年金は0.1%)となりました。
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※参考
マクロ経済スライドというのは固定された保険料の中(平成29年9月で厚生年金保険料が18.3%上限になった)で、年金給付が行えるように、平均余命の伸びや現役世代の減少を数値化したものです。
平均余命が伸びて年金給付を受ける人が増加したら年金支給がそれだけ増えるし、現役世代が減少すると保険料収入が減ってしまって年金財政に悪影響になる。
保険料収入の中に給付が納まらない可能性が出てくる。
よって、保険料収入の中に給付を納めるためにマクロ経済スライドという数値で年金額を抑制して年金財政を健全化している。
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物価が賃金よりも高い場合は、賃金変動率を用いるので年金額改定には2.1%を用います。
この2.1%にマクロ経済スライド0.2%を引いて1.9%(令和8年度の厚生年金は0.1%引いて2.0%)の伸びとなります。
という事は令和7年度の基礎年金満額831,700円×1.019=847,502円となりますが、正式な計算としては以下のようになります。
平成16年基礎年金本来水準780,900円という金額に、令和7年度年金額改定率1.065に1.019をかけると780,900円×(1.065×1.019=1.085)=847,276.5円≒847,300円(百円未満四捨五入)となります。
月額としては70,608円ですね。
昭和31年4月1日以前生まれの人は780,900円×(1.062×1.019=1.082)=844,933.8円≒844,900円です。
月額としては70,408円です。
年金額の変更は令和8年4月分からになりますので、振込額が変化するのは令和8年6月15日分からとなります。
少し計算事例を示します。
例えば20歳から60歳までに300ヶ月の国民年金記録があったとします。
令和7年度は満額831,700円÷480ヶ月×300ヶ月=519,812円(一円未満四捨五入)で、月額は43,317円(一円未満切り捨てて、翌年2月に端数はまとめて支払う)となります。
令和8年度からは満額が847,300円になるので、480で割って300ヶ月をかけると529,562円(月額44,130円)となります。
まあこの場合は、月額で1000円くらいの伸びですね…
なお、年金は偶数月に前2ヶ月分を支払うので、上記の月額を2倍にします。
このように基礎年金額が変更されました。
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2.厚生年金額の変更
では次に厚生年金ですがこちらも同じように計算するのでしょうか。
まず、令和8年度は2.0%の伸びとなって、基礎年金の1.9%よりも少し多いです。
これはマクロ経済スライドの影響を厚生年金は3分の1に緩和するとされたためです(2025年6月改革法)。
とりあえず2030年までの措置。
そうするとマクロが0.2%÷3=0.06%となって、これを切り上げて0.1%とされました。
という事は賃金変動率2.1%ーマクロ0.1%=2.0%の厚生年金の伸びとなります。
さて、厚生年金の計算は今までの厚生年金の報酬記録と加入期間と乗率を用いて計算します。
乗率は平成15年3月までは1000分の7.125で、平成15年4月以降は1000分の5.481となっています(昭和21年4月2日以降生まれの人は)。
例えば今までの給与の平均報酬が20万円で昭和53年度の12ヶ月の記録しかないとします。
そうすると、老齢厚生年金は20万円(再評価済み)×7.125÷1000×12ヶ月=17,100円となります。
じゃあ、この17,100円という数字に1.020(2.0%のこと)をかけて17,442円と算出するのでしょうか。
これもちょっと計算に気をつける必要があって、どこに2.0%を用いるのかというと、報酬額に用います。
この20万円の部分ですね。
再評価済みとしていますが、これは昔の低い給与を今の賃金水準に直すという事を示しています。
例えば昔は5万円の月給与でも生活できましたが、今その金額もらっても生活は厳し過ぎますよね。
その低い給与のまま厚生年金を計算してしまうと年金額が下がってしまうので、今の賃金水準に直す「再評価」というものをやります。
例えば昭和53年度の再評価率は1.93ですが、5万円に1.93をかけると今の賃金水準は96,500円になります。
このような過去の報酬に今までの賃金変動率または物価をかけたりします。
※再評価率(日本年金機構)
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/kyotsu/nenkingaku/20150401-01.files/7_kounen.pdf
そうするとどうなるか。
昭和53年度の再評価率は1.93(令和7年度再評価率)なのでそれに1.020をかけますと、1.969(小数点3位未満四捨五入)となります。
これで改めて計算してみましょう。
昭和53年度の当時の給与が10万円だった人ので計算してみます。
・老齢厚生年金(報酬比例部分)→10万円×(令和7年度再評価率1.93×1.020=再評価率1.969)÷1000×7.125×12ヶ月=16,835円となります。
このように、厚生年金は過去の給与記録に物価変動率や賃金変動率をかけますので、単純に年金額に新しい変動率を用いるわけではありませんのでお気をつけください。
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なお、各年度の再評価率は膨大なものなので、さすがに手計算はやりません^^;
生年月日によっても異なってきますしね…
日本年金機構のコンピューターが再評価を全てやってくれます。
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※参考(その他の主な令和8年4月からの年金額の変更。正式な発表は年度が変わってから)
・加給年金(子の加算金も同じ額)→平成16年度基準額(下に書いてるその他の基準額も同じ平成16年度価額)224,700円×(令和7年度改定率1.065×賃金スライド1.020=1.086)=244,000円(100円未満四捨五入)
加給年金は厚生年金に合わせて2.0%(1.020)増。
・老齢厚生年金に付く加給年金に加算される特別加算→165,800円×1.086=180,100円
特別加算というのは昭和60年改正で国会修正にて、加給年金と特別加算を合わせれば老齢基礎年金額の半分程度の金額になるように追加されたもの。
よって、令和7年度配偶者加給年金415,900円から令和8年度の配偶者加給年金は244,000円+180,100円=424,100円
・加給年金(三人目以降)→74,900円×1.086=81,300円(100円未満四捨五入)
・差額加算の定額単価→1,628円×(1.065×賃金スライド1.019=1.085)=1,766円(一円未満四捨五入)
昭和31年4月1日以前生まれの人は1,628円×(1.062×1.019=1.082)=1,761円
・遺族基礎年金と障害基礎年金2級→847,300円(昭和31年4月1日以前生まれの人は844,900円)
・障害基礎年金1級→847,300円×1.25=1,059,125円(昭和31年4月1日以前生まれの人は1,056,125円)
・中高齢寡婦加算→847,300円÷4×3=635,500円(100円未満四捨五入)
・障害厚生年金3級(最低保障額)→847,300円÷4×3=635,500円(昭和31年4月1日以前生まれの人は633,700円)
・経過的寡婦加算の基準額→844,900円÷4×3=633,700円
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3.在職老齢年金の停止基準額が65万円に
令和7年度の在職老齢年金の停止基準額は51万円だったのですが、令和8年度からは一気に65万円へと変更になります。
それは令和8年度は停止基準額の元になる金額を、48万円から62万円に改正されたためです。
これにより在職中の年金が停止される人はさらに少なくなります。
今までは平成16年停止基準額48万円に各年度の名目賃金変動率(物価変動率と実質賃金変動率をかけたもの)をかけ続けて、令和7年度は51万円まで引き上がりました。
なお、この48万円という金額は何なのかというと、「現役男子の平均賃金を元に出されている金額」でした。
そして、毎年度賃金が変動すればそれをかけて新たな停止基準額を出していました。
ところがその停止基準額が令和8年度になると62万円まで一気に引き上がりました。
でもどうして令和8年度は62万円じゃなくて65万円になったのでしょうか。
これは62万円に名目賃金変動率を掛けてるからです。
計算としては、62万円×令和7年度名目賃金2.3%(1.023)と令和8年度名目賃金2.1%(1.021)を掛けてるからです。
そうすると、62万円×1.044(小数点3位未満四捨五入)=647,280円≒65万円(1万円未満四捨五入)となりました。
令和9年度の停止額を出す時は、この1.044に新しい名目賃金変動率を掛けてまた新しい数値を出します。
ちなみにこの62万円という基準額は平均的な収入を得る50代の労働者が、60代で賃金の低下を経る事なく働き続けた場合の賃金(52万円)に加えて、一定以上の厚生年金加入期間に基づく年金収入(9.7万円)を得ても支給停止とならない基準額です。
この大幅な停止額のアップで、ーーー(『事例と仕組みから学ぶ公的年金講座』2026年1月28日号より一部抜粋。続きをお読みになりたい方は、ご登録の上1月のバックナンバーをお求めください)
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