アメリカとイスラエルによるイランへの空爆で、大混乱に陥っている中東地域。この奇襲攻撃はまた、中国の立場にも大きな影響を及ぼしているようです。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では、イラン攻撃ではからずも露呈してしまった中国製兵器の「実力」を詳しく紹介。さらに米国のベネズエラとイランへの軍事行動が、中国の外交を揺さぶりつつある理由を解説しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:【中国】イラン攻撃で中国を窮地に追い込んだアメリカ
イラン攻撃で中国を窮地に追い込んだアメリカ
● 伊朗敗在「中國製雷達」?温朗東:「看得到」與「能攔截」差很大(イランは「中国製レーダー」で負けた?評論家は「見える」のと「迎撃できる」のは違う)
イスラエルとアメリカによるイラン攻撃は、世界に大きな衝撃を与えました。しかし、この事態で最も焦っている国の一つは中国でしょう。
今回の攻撃で露呈したのは、中国製兵器の実力でした。イランが運用していた中国製レーダーは、米国とイスラエルの空爆に対してほとんど役に立たなかったのです。
実は同じことは、以前ベネズエラが米軍の攻撃を受けた際にも起きていました。中国製レーダーは有効な警戒情報を提供できず、防空システムも機能しなかったのです。そして同国のマドゥロ大統領は、アメリカ軍に捕獲され、アメリカに連行されてしまいました。
台湾の著名コメンテーター温朗東氏は、中国メディアですら「中国の電子戦能力は米国に10年遅れている」と厳しく批判していると指摘しました。今回の空爆でも、中国製レーダーや防空システムはほとんど存在感を示せませんでした。
温氏はこれを野球にたとえて、「観客は大谷翔平の投球を見ることはできます。しかし、打席に立ってそのボールを打つことはできません」と述べました。つまり、「見える」ことと「阻止できる」ことの間には決定的な差があるということです。今回の戦闘は、その差を世界に示しました。
しかも、中国はイランの「戦略的パートナー」を自称してきた国です。しかし、米イスラエルの攻撃が始まると、中国が行ったのは口頭での非難だけでした。中国外交部は「軍事行動の即時停止を求める」とする一般論の声明を出しただけで、実質的な支援は何一つ行っていません。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、中国の王毅外相はイランと電話会談を行い、主権支持を表明しました。しかし、北京が提供できる支援は言葉だけだと見られています。フランス系銀行ナティクシスのチーフエコノミスト、アリシア・ガルシア・エレロ氏は「中国は本当に必要なときには現れない」と率直に指摘しました。
イランは中国の支援でBRICSや上海協力機構に加盟しました。しかし今回の事態は、こうした枠組みが安全保障の保証にはならないことをはっきり示したと言えるでしょう。中国は「戦略的パートナー」と言いながら、決定的な局面では傍観する国なのです。
もっとも、中国にとって今回の戦争は完全な損ではない、という見方もあります。中国当局は、米軍が大量の精密誘導兵器を消耗している点を注意深く見ています。本来は台湾海峡有事に備えていた可能性のある兵器が、中東で消費されているからです。
同時に中国は、今回の戦闘を利用して「米国こそが世界の不安定化の原因だ」と国際社会に印象づけ、自らを平和維持者として演出しようとしています。
しかし、中国がイランに本格的に肩入れできない理由は、経済的な事情にもあります。中国はサウジアラビアやアラブ首長国連邦に対して、イランよりはるかに大きな投資を行っています。もし中国がイランを軍事的に支援すれば、これら産油国との関係は深刻な打撃を受けるでしょう。
また、中国は確かにイラン産原油の約90%を購入していますが、それでも中国の石油輸入全体の12%程度にすぎません。中国にとっては、地域全体との関係を維持する方がはるかに重要なのです。
さらに、中東紛争の拡大は中国経済にとって重大なリスクでもあります。中国は1日1,000万バレル以上の石油を輸入し、その約半分を中東に依存しています。液化天然ガスの約30%もカタールからの輸入です。もしホルムズ海峡が封鎖されれば、中国経済は大きな打撃を受けることになります。
そのため中国政府は、イランに対してホルムズ海峡を通過する石油やLNG輸送船への攻撃を控えるよう圧力をかけているとも報じられています。
さらに中国には、もう一つの問題があります。中国はイランやベネズエラから制裁下の石油を安く買うことで、年間100億ドル規模の利益を得ていました。しかし両国が米国の攻撃を受けたことで、この「割引石油」の利益が失われる可能性が出てきています。
加えて、中国はベネズエラに150億ドルの未返済融資を抱えているほか、イランにも300億~500億ドル規模の投資を行っています。これらの資金が回収不能になるリスクも高まっています。
今回の中東危機は、中国の軍事力の限界、外交の打算、そして経済的な弱点を同時に浮き彫りにしました。
強い言葉で「戦略的パートナー」を語りながら、いざとなれば助けない。そして兵器の実力も米国に遠く及ばない。
今回の戦争は、中国という国家の現実を、世界に改めて示したと言えるでしょう。
日本のメディアはつい最近まで、日本が中国からレアアース禁輸を受ける可能性を挙げながら、アメリカのトランプ政権すら中国のご機嫌を取り、習近平に膝を屈せざるをえなかったといった論調で語っていました。
しかし実際は、トランプ政権は中国を追い込んでいたのです。
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米国は1月にベネズエラを急襲した後、イランの最高指導者ハメネイを殺害し、相次いで中国の重要な同盟国2カ国を排除しました。この一連の強硬な軍事行動により、習近平は3月末に予定されていた「米中首脳会談」を目前に受動的な立場に追い込まれたという見方が世界に広がっています。
● 川習會前中國盟友連番被剷除 美前駐中大使:習近平左右為難
ロイター通信は、トランプ大統領は3月末に北京を訪問する予定であるものの、そのわずか2カ月前の1月に米軍がベネズエラを急襲しマドゥロ大統領を逮捕、続いて2月にはイランの最高指導者ハメネイ師を殺害したことについて、ベネズエラとイランはいずれも中国にとって長年にわたり重要なエネルギー供給国であり、米国の強硬手段は北京の外交的利益に直接的な打撃を与えたことは間違いない、と報じています。
トランプ政権は当初、今回の訪中は貿易交渉に焦点を当てるとしていましたが、中東での戦火が拡大する中、首脳会談が予定通り開催されるかどうかは依然として不透明です。
習近平国家主席はイラク戦争以来最大規模の米軍行動に直面しながら、現時点で外交部による「受け入れられない」「自制を呼びかける」といった定型声明を発表するにとどまり、反応は極めて慎重です。
元駐中国米国大使のニコラス・バーンズ氏はSNSプラットフォーム「X」で、中国は独裁的な同盟国にとって「信頼できない友人」であることを証明しつつあると指摘しています。
習近平氏は今、ジレンマに直面しており、米中首脳会談を予定通り開催すれば、同盟国の首脳を殺害した敵対国を国際舞台で歓待することになりかねず、また、会談を中止すれば、米中関係がさらに悪化する可能性があるからです。
トランプ大統領はイランに対する軍事行動が約4週間続く可能性を示唆しており、その終了時期はトランプの北京訪問予定時期と極めて近いのです。
米中首脳会談への影響について、中国駐米大使館は回答を避けていますが、日本のメディアが報じるような、「中国のレアアースの前にアメリカ、トランプがひれ伏した」というのは全くの間違いであったことがわかります。
むしろ、そのようなイメージをつくって、中国からの圧力を受ける高市政権を揺さぶりたいという思惑があるのではないかとさえ疑ってしまいます。
繰り返しますが、今年に入ってからのアメリカによるベネズエラとイランへの攻撃で、アメリカは中国に恥をかかせ、国際的な信用力を失わせたというのが、海外での見方なのです。
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※ 有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2026年3月4日号の一部抜粋。1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込660円)。
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