ソフトバンクが発売する「Natural AI Phone」。利便性の向上が期待される一方で、アプリの利用機会そのものを減少させる可能性も指摘されています。メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』の著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さんは今回のメルマガで、AIがもたらす新たなユーザー体験は、既存のビジネスモデルをどこまで変えるのか注目しています。
ソフトバンクのAIスマホ登場は、広告ビジネス崩壊の序章か
ソフトバンクはアメリカのスタートアップであるBrain Technologiesが手掛ける「Natural AI Phone」を4月24日に発売する。
特徴はOSのカーネルに統合されたNatural AIで、ユーザーとの会話が情報として蓄積、管理されていく。蓄積された情報をもとにNatural AIがユーザーの意図を予測しながら、スマホでやりたいことをサポート、提案してくれるというものだ。
2年ぐらい前からスマホ業界で言われていた「スマホの未来」を具現化するようなデバイスだ。
AIが先回りするスマホは昨年、MWCでモトローラが参考出展していたが、昨年末にZTEがバイトダンスと組んで中国で3万台限定で販売。一瞬で売り切れたという。
ただ、ZTEのAIスマホが出たことによって、中国のアプリ業界ではAIスマホを敬遠するようになり、AIスマホが規制の対象になりつつあるという。
AIスマホは、ユーザーのやりたいことをAIが先回りしてアプリを操作してくれる。つまり、ユーザーはアプリの画面を見なくてもよくなる。結果として、アプリ上に表示される広告が無視されることとなり、アプリ事業者としては「AIスマホは普及しちゃ困る」というスタンスになったようだ。
AIスマホによってデリバリーやECサイトなど、ユーザーがアプリを起動しなくても利用できるとなると広告を見なくなるというのは至極当然の流れだ。
しかし、デリバリーやECサイト、ホテルサイトなどをよく見ると「スポンサー」として、提供者側がコストを負担し、検索上位に掲載するという仕組みが存在する。これがつまり広告なわけで、アプリ提供者側としても、それなりの収益源になっているのは間違いない。
Brain TechnologiesのCEOは、AIによって、ユーザーの操作体系に革新が起こるということを誇らしげに語っていたが、一方でアプリを提供する側とすれば煙たがられているのは間違いない。
グーグルやサムスン電子などもAI OSを開発し、ユーザーの先回りをするようなユーザーインターフェースを作ろうとしているようだが、そうしたアプリ事業者のビジネスモデルまで崩壊させる気はあるのだろうか。
グーグルが検索でAIモードなどを導入した際、同じように「AIが要約をまとめてしまうので、広告が見られなくなる」という懸念があった。しかし、グーグルは「検索の体験が向上すれば、ユーザーはよりサイトを見るようになるから、広告の表示は減らない」と主張していた。
ユーザー体験としては「要約が読めれば満足」という気がしつつあるが、一方で、グーグルの広告収入が劇的に悪化したという話は聞かない。ウェブサイトにおいて、ディスプレイ広告はかろうじてまだ機能しているのだろう。
そんななか、AIスマホの登場によって、アプリ上の広告ビジネスはどうなっていくのか。
Natural AI Phoneをはじめ、今後、グーグルが出してくるAIスマホの普及で広告ビジネスにどんな影響を及ぼすのか、ウォッチしていきたい。
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