Appleが発表した経営トップの交代は、単なる世代交代にとどまらず、同社の戦略転換を占う動きとして注目されています。メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』の著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さんは今回のメルマガで、アップルの人事がどういう流れを見せるのかについて語っています。
アップルCEO、ティム・クックからジョン・ターナスにバトンタッチ―-ハードと半導体のトップ体制でAI全盛時代も独自ポジションを築くか
アップルは2026年9月1日付で、ティム・クックCEOが取締役会長となり、ハードウェアエンジニアリング担当シニアバイスプレジデントであるジョン・ターナス氏が次期CEOになると発表した。
また、同時にハードウェアテクノロジー担当シニアバイスプレジデントであったジョニー・スルージ氏がCHO(最高ハードウェア責任者)に就任するという。
ジョン・ターナス氏はiPhone、iPad、Mac、AirPodsなどアップルのほとんどの製品開発に携わってきた。ジョニー・スルージ氏はiPhone向け半導体「Aシリーズ」やMacやiPad向け半導体「Mシリーズ」の生みの親とされている。
昨年後半、アップルの幹部が相次いで辞任する事態が起きた。ジョニー・スルージ氏もアップルを辞めるのではないか、という報道があった。
今回、ジョニー・スルージ氏にCHOというポストが与えられたのは、まさにティム・クックCEOからの引き留め工作があったものと思われる。
また、ジョン・ターナス氏は50歳ということもあり、相当な若返りが図られる。おそらく、彼のCEO就任に嫌気が差して辞めた人も多そうだし、今後も、アップルを去る人材が続出するのではないだろうか。
一般紙的には「アップルはAIに遅れているから、今回の人事に踏み切った」といった報道がされている。
ただ、最近の動きを見ると「AI全盛だからこそ、アップル製品が逆に評価されている」ようにも感じる。
特にローカル環境でAIをぶん回そうという需要から、いまMac miniが飛ぶように売れている。すでに標準仕様のMac miniは公式オンラインサイトでも売り切れ状態だ(後継機種が出るのかもしれないが)。
また、昨今、AIデータセンターへの過剰な投資により、メモリ不足となり、メモリの価格が高騰している。
そんななかでも、アップルはiPhone 17eやMacBook Neoなどを投入。日本では10万円を切る価格を維持しており、コスパのいいモデルとして人気が出ている。
いまのアップルの強みは、自社で半導体を開発し、それに見合った製品も投入できることにある。製造量をコントロールできるのも大きい。
その点、ハードと半導体が武器となっているからこそ、今回、そのトップが昇格したということなのだろう。
いま、AIに強いグーグルやオープンAI、アンソロピックがどんなに資金を集めようと、アップルのようなものづくりはかなり難しい。スマートフォンメーカーやパソコンメーカーは数あれど、いずれも水平分業なので、OSなどのソフトウェアと深く連携し、省電力で、コスパのいいモデルを作るのは限界がある。
AI全盛時代だからこそ「AIに触れるためのハード」が必要であり、その頂点にアップルは君臨している。
ティム・クックCEOはアップルの規模拡大に貢献したが、意外とその路線は今後も2人のトップによって継続していくのかもしれない。
この記事の著者・石川温さんのメルマガ
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