MAG2 NEWS MENU

ホルムズ海峡封鎖が本当に恐ろしい理由。「原油価格高騰」より深刻な世界経済の“信頼コスト”

開戦から4年以上が経過したウクライナ戦争や、依然として緊張状態が続く中東危機。世界各地で同時進行する紛争や対立は、なぜ根本的解決を見ないのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の「無敵の交渉・コミュニケーション術」』では元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、イラン情勢やロシアの思惑、中国を巡る動向を分析しつつ、現代の国際社会が抱える「複合的な危機」の構造を解説。さらに相互信頼の崩壊によって加速する世界の不安定化と、その破局を回避するために必要な視点について考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:破局を避けるための技術‐最後の調停官が読む世界同時危機‐ロシア・ウクライナ戦争、ガザ、レバノン、ホルムズ海峡から台湾海峡へ

本当に恐ろしいのは「偶発的衝突から始まる戦争」。最後の調停官が読む世界同時危機

現在、複数の紛争が同時進行で起き、解決の糸口がなかなか見えない状況に陥っています。紛争による人的犠牲が拡大していくというおぞましい状況に加え、同時多発的な紛争が世界のサプライチェーンを混乱させ、インフレを起こし、そして相互不信を世界中で引き起こし、至る所で連鎖しています。

“国際協調の下で安定を確保し、世界をより平和な世界にする”時代は終わり、力をもつ国々が自らの利害の追求を最優先し、意に沿わないものを力で抑えつけて屈服させようという特徴が鮮明になってきています。このまま進むと戦後国際秩序は崩壊し、力あるものが一方的に弱きものを抑えつける破局の時代がやってきます。

これまでにもこのコラムでいろいろなケースについてお話しし、警鐘を鳴らしてきたつもりですが、再度、【今、世界では何が起きているのか?】、そして【どのような危機が迫っているのか?】について整理してみます。

その上で、普段はあまりこのような場で行わないのですが、【もし私が今、主導的に紛争調停を行うことを依頼されたら、どのように様々な利害と思惑が複雑に絡み合う危機を収束に導くか】についてお話しいたします。

一つ目は【終わりの見えないイラン情勢】です。

今年2月28日のアメリカとイスラエルによるイランへの大規模攻撃に始まった紛争。イランも即時に報復攻撃をし、その戦火と被害は広く周辺国にも及んでいます。

それから3カ月が経過しましたが、紛争はまだ解決の糸口が見えないまま、世界に混乱を引き起こしています。

物理的な被害はもちろん、世界経済の大動脈ともいえるエネルギーの要であるこの地域での混乱と破壊、そして物流の停滞は、大きな負の影響を世界各国に与えており、一刻も早い解決が望まれます。

ただ、この“戦争”のカギとなる特徴は【戦争をしたくない・一刻も早く終わらせたい国同士の争い】という危険な状況です。

これまでのところ、米国とイランも、互いに軍事圧力を強めながらも、完全な全面戦争には踏み込んでいません。

【本当に戦争をしたくないのだが、退くに退けない】状況が生まれてしまい、両国の睨み合いが続き、緊張だけが高まっています。

実は、これは紛争調停を行うに際、最も危険な状態です。なぜなら、双方とも、【相手が先に退くだろう】と考え、具体的な妥協を行うことを躊躇い、その結果として、エスカレーション傾向になりがちだからです。

交渉および紛争調停の世界では、これを“miscalculated stand-off(誤算が生み出す膠着状態)”と呼びます。

イラン側は、【欧米とその仲間たちによる厳しい経済制裁による国内の不満が充満していること】や【エネルギー輸出の停滞による深刻な外貨不足】が顕在化していて、国内の不満解消による体制の維持と国際社会への復帰という観点から、一刻も早くbusiness as usualに戻したいと考えています。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

初月無料で読む

米国とイランが進める協議に水を差すイスラエルの動き

一方、米国側は、【原油価格高騰によるガソリン価格の高騰】や【(ホルムズ海峡の封鎖による)物流の停滞が引き起こすインフレの再燃】、さらには【11月に予定される連邦議会中間選挙や、2028年の次期大統領選への影響への懸念の高まり】を警戒し、こちらも一刻も早く戦争を終えたいと考えています。

つまり双方とも、長期戦を避けたいのですが、miscalculated stand-offによって、そのための具体的な提案や行動を実行に移すことが出来ていません。

問題は、紛争における行動心理、特にリーダー層によくみられる行動心理の特徴なのですが、長期戦を避けたい国家ほど、短期的威嚇・超近視眼的威嚇を強める傾向がより鮮明になってくることです。

その結果、ドローン攻撃による攻撃や限定的な空爆の実施、サイバー攻撃の激化、そしてホルムズ海峡を舞台にした米・イラン両国の海軍の対峙および威嚇が増加し、その結果、偶発的衝突が起きる危険性が一気に高まります。

国際紛争において、本当に恐ろしいのは“綿密な計画の下で実施された戦争”ではなく、“偶発的な衝突という“事故”から始まる戦争“です。

偶発的な衝突に起因する紛争・戦争は、当事者たちの怒りの感情に後押しされ、不必要に状況をエスカレートさせていく傾向があるからです。

米・イラン間での協議が進められていることは、ポジティブな動きだと考えていますが、その出口を探そうとする動き・流れに水を差しているのが、イスラエルの動きです。

ネタニエフ首相がトランプ大統領を唆したかどうかは分かりませんが、米・イラン間で停戦・休戦の話が出て、具体的な条件が挙げられる度、イスラエルは米・イラン間の“合意”を覆すような行動を取って、イランを刺激し続けています。

最新の停戦案に“レバノンにおける戦闘停止”が含まれていると言われていますが、イスラエルは“ヒズボラ掃討”という旗印を掲げてレバノンへの部隊展開を強化し、イランを威嚇しています。

これは、ガザ和平を巡るイスラエルの行動とも一致します。

一応、直接的な戦闘は停止され、停戦が遵守されているというのが米国側の見解ですが、実際には散発的な攻撃は継続しており、加えてヨルダン川西岸地区へのユダヤ人入植地拡大が強行されており、これはヒズボラとハマス、そしてその背後にいるとされるイランを刺激し、戦争が終わらないように操作しているように見えます。

イスラエルの独断専行をアメリカ、または国際社会が阻止しない限りは、中東和平は絵に描いた餅になってしまいますが、それが現実的なオプションとして考えられているかは、非常に懐疑的です。

次に、すでに触れましたが、中東情勢の先を占う上で無視できないのがイスラエルの動きです。

今般の中東情勢を理解するうえで、絶対に見落としてはならないのがイスラエルの動きです。イスラエルの動きの“変化”を一言で表すとすると、【“抑止”から“先制的安全保障”への転換】と言えます。

現在イスラエルは、単にテロ対策としてガザやレバノンに対応しているのではありません。実際には【イラン主導の地域包囲網】と【イランを軸に形成されるネットワーク型脅威】を、今のうちに崩そうとしています。

具体的には、【レバノンのヒズボラ】、【イエメンのフーシ派】、【シリア内の親イラン勢力】、【イラクのシーア派民兵組織】、そして【ハマスに代表されるガザ地区の武装勢力】などの壊滅です。

イスラエル政府によると、これらは別組織ではなく、【複数方向から同時に圧力をかける一体型戦略を担う“イラン主導”の反イスラエル組織】として映っています。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

初月無料で読む

警戒すべき「予防的エスカレーション現象」という状況

そのため現在のイスラエルの安全保障戦略は、従来の“攻撃されたら報復する”という抑止モデルから、“相手の能力が完成する前に削る”という先制的安全保障モデルへ移行しつつあります。

だからこそ、【シリア領内攻撃】や【レバノンにおけるヒズボラ関連施設への攻撃】、そして【イラン革命防衛隊関連目標への圧力の強化】が継続しています。

イスラエルの考え方によると、【周辺国の親イラン組織はイスラエル国家および国民の生存の確保に対する最大の脅威であるため、先に脅威を潰すことが大事である】ということになりますが、ここで重要なのは、相手側もまた、「今、イスラエルに反撃しなければ、将来、自分たち・自国の存亡を脅かしかねないもっと危険な状況になる」と考え始めることです。

これを紛争調停では、【予防的エスカレーション現象(Preventive Escalation Symptom)】と呼び、警戒するべき状況として挙げています。

この“予防的エスカレーション現象”により、双方とも、【自国・自信の防衛のために動いているつもりが、結果として戦争リスクを高めてしまう】という典型的な紛争拡大の形態に陥る危険性に直面しています。

今の中東は、まさにこの構造に入っています。

その典型例がレバノン情勢の緊迫です。レバノンは一言で言うと【国家が機能しにくくなった危険地帯】と表現できますが、中東情勢の中で最も危険な火薬庫の一つに挙げられます。

レバノンは、長年続く経済危機や実質的に無政府状態といっても過言ではない政治的混乱の長期化、通貨レバノン・ポンドの暴落、インフラの破壊、そして宗派の対立の激化により、国家機能そのものが大きく弱体化しています。

その中で、イスラエルによって攻撃を加えられ、リーダーが相次いで暗殺されていますが、それでも圧倒的軍事力と組織力を維持しているのがヒズボラです。

実質的に、レバノン南部でのヒズボラの統治・支配力は圧倒的で、精密誘導ミサイルやドローンを用いた越境攻撃能力を持ち、イスラエルへの攻撃を繰り返しており、それにイスラエルも本気で応戦しているため、イスラエル北部・レバノン南部の国境線は“中東全体のエスカレーション起点”になってきています。

アラビア半島の西側ではイスラエルとヒズボラ(レバノン)・ハマス(ガザ)との紛争が激化し、東側ではイラン情勢が緊迫の度合いを高めていますが、一見、別物に見えるイランとレバノン情勢は、完全に切り離して考えることはできません。

ここで強調しておきたいのは、現在の中東紛争は、従来型の国家対国家戦争ではなく、“ネットワーク型紛争”であるという点です。

イランは長年、直接、イスラエルや周辺国との全面戦争を避けながら、地域内に影響力を構築してきました。その中核の一つがヒズボラです。イラン側から見ると、ヒズボラは単なる同盟勢力ではなく、対イスラエル抑止の前方防衛ラインであり、イスラエルがイラン本土を攻撃しにくくするための、戦略的緩衝地帯という認識です。つまり、イラン防衛のための存在という位置づけです。

一方イスラエル側は、一連のイランの動きを対イスラエル包囲戦略と認識し、「イスラエルの安全保障のためにはこの包囲網を崩壊させなくてはならない」と考えて、「自衛のための攻撃」を行っています。

つまり双方とも、自らを相手側からの脅威に対して自衛する“防御側”だと考えていると言え、それぞれが自らの軍事的な行為を正当化する流れになっています。

ここに現代紛争の難しさがあります。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

初月無料で読む

「一点火災が全域炎上へ拡大している状態」にある中東の現状

そして最も危険なのは、この構造では、局地衝突が地域戦争へ発展しやすいことです。

例えば、レバノン南部での(イスラエルとヒズボラの)衝突が起き、それに対してヒズボラが報復するという、すでに頻繁に見ている事態が起これば、必然的にイスラエルによる対レバノン空爆が拡大し、恐らく地上作戦も行われることになります。

そうすると、イラン系勢力がこの争いに参戦することになりますが、それはイスラエル軍の介入を拡大させることになり、その拡大がイスラエルによるイラン攻撃へと発展することにより、現在、私たちが目撃しているように、ホルムズ海峡の緊張を生み、そして(親イスラエルの)米軍が介入するという連鎖が起こっています。

つまり現在の中東は、【一点火災が全域炎上へ拡大している状態】です。

ここにサウジアラビア王国やUAE、カタール、クウェートなどのスンニ派諸国が加わるような事態になると、一気に戦火は中東地域を飛び出し、地中海を介してアフリカ東部、欧州南部に広がり、ペルシャ湾を越えて中央アジア地域に拡大します。

そうなるともう世界的な戦争に発展する危険性が高まりますが、この状況を止めることができるのは、恐らくアメリカによる“中立的な”介入や、ロシアおよび中国の介入による休戦保証ですが、残念ながら、ロシアはウクライナに掛かりきりで、“同盟国”の危機に介入できていないことが明らかになっていますし、中国は軍事的な介入を“他の地域”において行うつもりはないため、実質的に“アメリカがどうするか?”が大事になってきます。

ではトランプ大統領のアメリカは何をしていて、どう動くべきなのでしょうか。

現在の米国の動きは、非常に複雑です。表面的には、空母攻撃群を展開して(イスラエル軍と共に)イラン攻撃に参加し、ホルムズ海峡の航行の自由を保障すべく、イランの革命防衛隊による封鎖に対抗する作戦を実施するという強硬姿勢を見せています。

しかしその一方で、実際には、“全面戦争回避”にもかなり神経を使っています。なぜなら、米国もまた、中東全面戦争のコストを理解しているからです。

もしホルムズ海峡危機が深刻化すれば、原油価格のさらなる急騰は免れず、これにより世界的なインフレが再燃する流れになります。そうなると、日本や欧州各国といった同盟国の経済の悪化を加速させて、対米不信が高まる恐れがあるだけでなく、ガソリン価格の高騰や戦費の著しい増大に加え、米軍兵士の人的犠牲が拡大した暁には、国内政治不安が深刻な状況に陥ります。

さらに現在、米国は【ウクライナ支援】、【インド太平洋戦略の充実】、そして【台湾有事や貿易戦争といった多面的な中国対応の徹底】も同時並行で進めているため、実際には中東地域、特にイラン対策に対して、無制限に資源集中できないというジレンマおよび現状が存在しています。

ゆえに、現在の米国の戦略は、“イランに対する圧倒的勝利”ではなく、“複数戦線を同時管理する戦略”へ移行しています。

そのため、米国の対イラン・中東外交の本音は、【“イランを崩壊させること”ではなく、“イランを暴発させないこと”】にシフトしていると見ています。

つまり両国とも、【全面戦争は望んでいないが、同時に、弱く見られることも避けたい】という矛盾に直面し、その結果、危機を長期化させ、解決の糸口を見いだせない状況に陥っていると言えます。

そのチョークポイントになっているのが、ホルムズ海峡を巡る争いです。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

初月無料で読む

世界の安全保障の継続性を左右しかねない中国の動き

現在、世界最大級の懸念の一つがホルムズ海峡です。ホルムズ海峡は、世界のエネルギー動脈であり、ここが不安定化すると、単に原油価格が上がるだけではなく、すでに私たちが見ているように、世界経済そのものの“心理”が壊れます。

実際、現在すでに、海上船舶に対する保険料の上昇、迂回路を通るがゆえに生じる輸送コストの高騰と輸送の大幅な遅延、それに伴う石油精製品を中心とするグローバル・サプライチェーンの混乱が起きています。

私は長年、エネルギー交渉やエネルギー・食糧安全保障問題にも関わってきましたが、ここで多くの人が誤解していることがあります。

それは、【封鎖が解除されれば、状況はすぐに元通りになる】という考えです。

しかし、現実は違います。一度でも“危険海域”という認識が広がると、物流企業はリスクを価格に織り込み続けます。つまり、世界経済のシステムが“平時コスト(Business as Usual)”に戻ることはありません。

現在の国際紛争は、軍事衝突による犠牲の拡大だけでなく、世界経済システムの“信頼コスト”を増大させており、このコストは、最終的に私たちの生活へ跳ね返ってきます。

この危機をさらに深刻なものにしているのが、いつまでも終わらないロシア・ウクライナ戦争の存在です。

ロシア・ウクライナ戦争の本質は、すでに古典的戦争ではなく、相手社会を疲弊させることへ移行しています。言い換えると終わりの見えない凄惨な消耗戦です。

ロシアは、ウクライナのエネルギー施設や重要な生活インフラを継続的に攻撃しています。これは単なる軍事作戦ではなく、【国家機能そのものを弱らせる戦略】です。そして、【国民の厭戦機運を高め、内側からウクライナを崩壊させようとする企て】です。

一方、ウクライナ側も、ドローンや長距離攻撃能力を強化して、ロシアのインフラを破壊し、首都モスクワ周辺を攻撃できることを示すと同時に、自前の兵器を用いて、ロシアに一方的に奪われた領土を奪還しています。

追い込まれている感が強まったため、ロシアは新型の中距離弾道ミサイル“オレシュニク(オレシニク)”を投入して、首都キーウのほか、ウクライナの主要都市を攻撃していますが、これはロシアの優位性を示すのではなく、ロシアが追い込まれていることを示す証ではないかと考えられます。

ロシア・ウクライナ戦争の様相が再び激しさを増す中、ここで皆さんにぜひ理解していただきたいことがあります。

それは、現代戦争は、“前線”だけでは決まらないということです。電力、情報、通信、金融システム、そして国民心理への影響など、これらすべてが“戦場”です。

だからこそ、“停戦”が難しいのです。なぜなら、“戦線”だけ止めても、“敵国への圧力”は継続できてしまうからです。

つまり、ロシア・ウクライナ戦争も、ガザ情勢やレバノン情勢も、そしてイラン情勢を見ても、仮に停戦ラインを引くことができても、戦争が終わらない時代に入っているのです。

そして、今後の世界の安全保障の継続性を左右しかねないのが、台湾海峡を含むアジア太平洋地域における中国の動きです。

皆さんご存じのように、中国は現在、南シナ海・台湾周辺で軍事活動を強化しており、そこにアメリカも絡んで緊張は確実に高まっています。

しかし私は、中国が直ちに台湾に全面侵攻する可能性は現時点では高くないと見ています。むしろ危険なのは、中国が選択する【グレーゾーン戦略】です。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

初月無料で読む

ロシア、中国、イラン、イスラエルは何を恐れているのか

それは、海上圧力の増大による海上封鎖と台湾とその仲間たち(日本を含む)に対する経済的な圧迫の強化、そして情報戦・サイバー攻撃を段階的に行う戦略のことを指しますが、中国は最近、これらを非常に巧妙に組み合わせて攻撃力を高めています。

しかし、懸念すべきは、台湾のみならず、日本や韓国、そして米国に“戦争開始”を明確に認識させないように、その戦略が実行されていることです。

戦略論では、これを“threshold ambiguity(境界・閾値の曖昧さ)”と呼びます。反応を誘発するレッドラインを曖昧にしてしまうことで、相手が“どこから反撃すべきか”判断できなくなる状態を指します。

そして中国は今、ロシア・ウクライナ戦争と中東危機を徹底的に観察し、特に【制裁への耐性】、【エネルギー資源および生活物資の確保の仕方】、【ドローン戦の効果(攻撃・防衛両方)】、【海上封鎖や情報統制に対する対抗策】などを綿密に研究し、作戦を立てていると推測できます。

中国の一連の動きを見るにあたり、極めて重要なことは、【台湾有事は、第二次世界大戦型の上陸戦ではなく、“経済窒息戦”として始まる可能性が高い】と考えられることです。

ここまで見ていただくと分かる通り、現在の世界は個別の危機の集まりではなく、それぞれが絡み合い相互に影響を増幅させている【複合的な危機】です。

そこに共通しているのは、【国際協調の基盤となっていた“相互信頼の崩壊”】です。

各国は、【相手を信用していない】、【国連などの国際機関も信用していない】、【国際安全保障というコンセプトを信用していない】、そして【国際協調に基づく世界経済秩序を信用していない】という認識に立ち、その結果、【自国・自国民のことは自分で守るしかない】という方向へ向かっています。

これが、【軍拡】、【封鎖の連発】、【先制攻撃論の是非についての議論の再燃】、そして【核軍縮から核抑止依存の高まり】につながり、今、世界は、【国際協調に基づく安定の追求】から、【恐怖による安全保障(力による支配・力による外交)】へと移行している基盤になっています。

では私が中東危機、ロシア・ウクライナ戦争、中国・台湾問題を含む包括的安全保障調停を依頼されたなら、どうするか?

もうすでに今回のコラムは非常に長くなっていますが、どうぞもう少しお付き合いください。

私は次の6段階で進めます。

第1段階では【相手を変えようとするのをやめる】ことを提唱します。

多くの外交は、突き詰めると【相手を屈服させる前提】で動いています。しかし、私が行う紛争調停の原則はその逆で、【相手の恐怖を理解すること】から始めます。

例えば、【ロシアにはNATO拡大への恐怖】、【中国には対中包囲網への恐怖】、【イランには体制崩壊への恐怖】、【イスラエルには国家と民族の生存の存続への恐怖】があります。

まず必要なのは、【相手の恐怖を認識すること】です。これを理解しない限り、交渉は先に進みません。

第2段階では【イスラエル・イラン間の“直接戦争回避ライン”を作る】ことを提唱します――(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2026年5月29日号より一部抜粋。全文をお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録下さい)

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

初月無料で読む

image by: Shutterstock.com

島田久仁彦(国際交渉人)この著者の記事一覧

世界各地の紛争地で調停官として数々の紛争を収め、いつしか「最後の調停官」と呼ばれるようになった島田久仁彦が、相手の心をつかみ、納得へと導く交渉・コミュニケーション術を伝授。今日からすぐに使える技の解説をはじめ、現在起こっている国際情勢・時事問題の”本当の話”(裏側)についても、ぎりぎりのところまで語ります。もちろん、読者の方々が抱くコミュニケーション上の悩みや問題などについてのご質問にもお答えします。

有料メルマガ好評配信中

    

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』 』

【著者】 島田久仁彦(国際交渉人) 【月額】 ¥880/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 金曜日(年末年始を除く) 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け