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累積赤字383億円以上の「クールジャパン機構」ついに廃止へ。グーグル日本元社長が当初から見抜いていた“天下りの楽園”の末路

「クールジャパン機構」をご存じでしょうか。日本の食やアニメ、伝統工芸品などを海外に広めるとして2013年に発足した官民ファンドですが、累積赤字は383億円に達し、ついに政府が廃止の検討に入ったことが報じられました。なぜここまで巨額の国費が無駄に費やされてしまったのか。メルマガ『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』では、著者で元グーグル日本法人社長の辻野晃一郎さんが、発足当初からこの機構と接点を持っていた自らの経験をもとに、その杜撰な投資判断の実態と、誰も責任を取らないまま有耶無耶にされかねない決着への懸念を語っています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです

「クールジャパン機構」廃止へ

今週は、以下のポストを取り上げます。

日本文化や日本製品を海外に売り込むため、安倍元首相の肝いりで、主に国内企業に資金を投じることを目的として2013年に設立された官民ファンド、通称「クールジャパン機構」(正式名称:海外需要開拓支援機構)を廃止する方向で政府が検討に入ったことが12日に報じられました。

天下りばかりだった発足当初

同機構は経済産業省所管で、日本の食やアニメといった文化や伝統工芸品などを海外に広め、新たな市場を開拓する目的で発足しました。同じ時期に設立した当社のコンセプトが「日本から世界へ」というもので、日本が生み出したマイナー商品を海外に広める事業を立ち上げていたので、同機構が発足した時には、「出資を検討させて欲しい」という打診を私ももらって何度か話を聞いたことがあります。ですから、発足当初の同機構の内情を良く知っているのですが、六本木ヒルズに贅沢なオフィスを構え、幹部職員も国内大手百貨店をリタイアした人とか官僚の天下りのような人たちばかりで、あまり良い印象を持てませんでした。それ以来、同機構にはできるだけ関わらないようにしてきたのですが、正しい判断だったと思います(笑)。

同機構は、国がリスクマネーを供給して民間資金の呼び込みを狙いましたが、当初から投資対象の選定が杜撰で収益はまったく上がらず、24年度末時点での累積赤字額は383億円に上っています。25年度の累積赤字額目標は426億円でしたが、140億円を出資したバイオ素材開発の新興企業スパイバー(山形県鶴岡市)が債務超過で私的整理に入ることが決定しています。

最近のAI業界などでは兆円単位の話ばかりですし、先日はスペースXの大型上場の話もあったので、数字に対する感覚がすっかり麻痺しています。国策半導体企業ラピダスの件などと比較しても、数百億円規模という数字は非常に小さく感じてしまいますが、長年にわたる国費の無駄遣いという面では決して看過できません。

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「ジャングリア」が示す投資判断の甘さ

なお、冒頭の写真は、沖縄県のテーマパーク「Junglia(ジャングリア)」ですが、同テーマパークを企画・運営する株式会社刀には80億円を出資しています。私自身、沖縄はよく訪れますし、名護方面など北部に行くこともしばしばありますが、私はこの話を初めて知った時、直感的に、到底成功するはずがないと思いました。沖縄の歴史の重み、沖縄の自然の魅力、交通の便など、さまざまな観点から考えて、このような安っぽい人工テーマパークが成功する立地ではないと感じたからです。実際、宣伝内容と現実の乖離も大きく、開園直後から来場者は伸び悩んでいます。

刀の創業者森岡毅氏は、セルフブランディングの達人で、大阪のユニバーサルスタジオを立て直した功労者ということになっていますが、コンサル先から契約を打ち切られてトラブルになったり、自前のテーマパーク第1号として開業したお台場のテーマパークが僅か2年で廃業に追い込まれたりと、最近では悪評ばかりが目立ちます。この一案件だけでも、クールジャパン機構の投資判断の甘さがよくわかるのではないかと思います。

誰が責任を取るのか

同機構は、かねてよりほとんどの出資先の業績が振るわず、国費の無駄遣いの典型として厳しい批判を浴びてきました。今回の廃止に向けた動きは、遅きに失した感もありますが、公的資金の使い道として、同機構の投資判断やリスク管理が適切だったかどうかの検証や責任の追及は今後どうなるのでしょうか。過去には、往々にしてこの手の国費の無駄遣いは曖昧にされてきましたが、今回も、他の官民ファンドとの統廃合などで有耶無耶にされてしまうのではないでしょうか。どのような決着になるのかについて、引き続き注視していきたいと思います。

※ 本記事は『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中 』2026年6月19日号の一部抜粋です。このほか、「今週のメインコラム」や「読者の質問に答えます!」、「スタッフ“イギー”しかのつぶやき」など、レギュラーコーナーも充実。この機会にぜひご登録をご検討ください。

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image by: Kugel~commonswiki, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

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辻野 晃一郎(つじの・こういちろう):福岡県生まれ新潟県育ち。84年に慶応義塾大学大学院工学研究科を修了しソニーに入社。88年にカリフォルニア工科大学大学院電気工学科を修了。VAIO、デジタルTV、ホームビデオ、パーソナルオーディオ等の事業責任者やカンパニープレジデントを歴任した後、2006年3月にソニーを退社。翌年、グーグルに入社し、グーグル日本法人代表取締役社長を務める。2010年4月にグーグルを退社しアレックス株式会社を創業。現在、同社代表取締役社長。また、2022年6月よりSMBC日興証券社外取締役。

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【著者】 辻野晃一郎 【月額】 ¥880/月(税込) 【発行周期】 毎週 金曜日 発行

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