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「はぁ?」の連発。沖縄県知事選への立候補をいきなり取りやめた“元衆院議員”の「矛盾だらけ」な不出馬理由

事実上、現職と自民党が推す新人の一騎打ちとなっている沖縄知事選。各メディアはその接戦ぶりを伝えていますが、勝敗を左右しかねない「キーマン」の固定票の行方にも注目が集まっています。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、告示前日に出馬を取りやめた下地幹郎元衆院議員の突然の方針転換と、同氏と自民党との間で結ばれた政策協定を詳しく紹介。その上で、専門家の予測等を交えつつ知事選の動向を解説しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:沖縄県知事選のキーマンとは?

告示日前日に突如として出馬取りやめ。沖縄県知事選のキーマン

東京ではテレビやラジオなどのメディアがほとんど取り上げないため、いったい東京都民の何割くらいの人が認識してるか分かりませんが、現在、沖縄では「沖縄県知事選挙」が絶賛開催中です。任期満了にともなう「沖縄県知事選挙」は、8月27日告示、9月13日投票なので、このメルマガが配信される9月9日は、まさに後半戦も佳境を迎えていることでしょう。

まずは、今「沖縄県知事選挙」が行なわれていることも知らなかった人たちのために、今回の候補者を届け出順に紹介します。

【新人】古謝玄太(こじゃ げんた)氏(42歳)
【新人】末吉正弘(すえよし まさひろ)氏(73歳)
【新人】兼島俊(かねしま しゅん)氏(48歳)
【現職】玉城デニー(たまき でにー)氏(66歳)
【新人】比嘉隆(ひが たかし)氏(49歳)
【新人】屋良朝助(やら ちょうすけ)氏(74歳)

以上の6人です。それにしても「いかにも沖縄」という感じの名前の人たちが並びましたね。どこの選挙か言わずに候補者6人の名前を見せても、沖縄の選挙であることが一目瞭然です。

で、今回はこの6人の他に、7人目の「キーマン」、消えた候補者がいたのです。自民党や日本維新の会などを渡り歩いた元衆議院議員の下地幹郎(しもじ みきお)氏(65歳)です。地元の宮古島を始め沖縄では一定の力を持つ下地幹郎氏は、今回の県知事選に早くから出馬の意向を示していました。そのため今回は、3選を目指す現職の玉城デニー氏と、自民党や日本維新の会などが推す前那覇市副市長の古謝玄太氏、そして下地幹郎氏の三つ巴の戦いになると言われていました。

それなのに、嗚呼それなのに、それなのに…というわけで、告示日の前日の8月26日、突然、下地氏が出馬を取りやめると発表したのです。この日、那覇市内で行なった記者会見で、下地氏は次のように説明しました。

鉄軌道(鉄道)の整備や基地返還問題の明確化など沖縄(の課題)を前に進めるため、政権与党である自民党と4項目の政策協定を結び、立候補を取りやめる決断に至った。

下地氏が出馬を取りやめる条件として、自民党と結んだ政策協定とは、次の4項目です。

  1. 沖縄県の子どもの貧困対策予算を300億円確保する。
  2. 沖縄本島の鉄軌道の実現に向けて5年で着工のメドをつける。
  3. 2030年G7サミットを沖縄県に誘致する。
  4. 辺野古移設工事を工程通り進め、36年に終了させ、その後速やかに普天間基地を返還する。その期日を明らかにする。

おいおいおいおいおーーーーい!1から3まではともかくとして、4番目は何だよ?下地さん、あなた、まだ出馬するつもりでいた7月23日に発表した自身の政策、覚えてる?その政策の中じゃ辺野古の新基地の2,800mの滑走路建設に「反対」と言ってたじゃん!それが「辺野古移設工事を工程通り進め」って、はぁ?その上「今後は出馬を予定している元那覇市副市長の古謝玄太氏を支持するよう支援者らに呼び掛ける」って、はぁ?

下地さん、あなたは8月23日に行なわれた選挙ドットコムチャンネル主催の「ネット討論会」で、古謝玄太氏が政府の辺野古移設案を容認していることを厳しく批判してたじゃん!それなのに、3日後の8月26日には「政府の辺野古移設案を丸飲み」って、はぁ?

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自民党が考えた古謝玄太氏を勝たせる極めて有効な作戦

さらには、古謝玄太氏が埋め立てた41ヘクタールの土地にヘリパッドを先行して造ってオスプレイ20機を移転させるという主張についても「政府案に相反するもので矛盾してる」って批判してたじゃん!

分かりやすく言えば、辺野古の新基地建設に全面的に反対して来たのが現職の玉城デニー氏で、部分的に反対して来たのが下地幹郎氏でした。ちなみに下地氏は、辺野古の新基地だけでなく、那覇軍港の浦添移設や敵基地攻撃用ミサイルの配備などにも反対して来ました。つまり、基地問題に関しては、多くの部分で自民党政権とは真逆だったのです。

そんな下地氏が、いったい何があったのか知りませんが、突然、手のひらを返して「辺野古移設工事を工程通り進め」と言い出したどころか、それを条件に知事選への出馬を取りやめ、さらには自分の支援者に「古謝玄太氏への支持」を呼び掛けると言うのです。あたしが思わず「はぁ?」を連発しちゃったのも分かるでしょ?

…そんなわけで、これまでの「沖縄県知事選挙」は、辺野古の新基地建設をメインにした「沖縄の基地問題」が最大の争点でした。玉城デニー氏が初当選した2018年の選挙では、基地反対派の玉城氏が約39万6,000票、自民、公明、維新などが支持した基地容認派の対立候補が約31万6,000票と、その差は約8万票でした。

そして、玉城氏が2選を果たした2022年の選挙では、玉木氏が約34万票だったのに対して、基地容認派の対立候補は約27万5,000票と、その差は約6万5,000票でした。

しかし、これらの結果は、基地反対派が県民の7割を占めていた時代のデータなのです。皆さんご存知のように、沖縄の民意が明確に「辺野古の新基地反対」を示しても、自民党政権は沖縄の民意を完全に無視して新基地計画を進めて来ました。そして、現在はとうとう、現行の工事技術では建設など不可能と言われているマヨネーズ地盤の上に、巨大な滑走路を建設する無理筋な計画を強行しているのです。

つまり、自民党政権がバカのひとつ覚えのように繰り返して来た「辺野古に新基地を造り世界一危険と言われている普天間基地を返還してもらう」というお題目は「絵に描いた餅」であり、実際は複数のゼネコンという自民党のスポンサー企業を潤すため、そして既成事実作りのために「100年経っても完成しない意味のない工事」を続けているだけなのです。

そして、そんな流れの中、何度民意を示しても止まらない工事に、沖縄の人たちは疲れて来たのです。この国の政府は何を言っても聞いてくれない。そう思った人たちが、少しずつ反対運動から離脱して行ったのです。そして、いつの間にか、基地反対派と基地容認派の割合が拮抗するようになってしまったのです。

さらに言えば、もはや「基地問題」は沖縄の選挙での最大の争点ではなくなってしまったのです。沖縄の人たちも他の地域で暮らす人たちと同じで、まずは日々の生活です。これほど物価高や光熱費の高騰が続いているのに、いつまでも「基地問題」ばかりに目を向けてはいられません。どんなに反対しても新基地建設が止まらないのなら、たとえ「基地容認派」の候補者でも沖縄の経済を良くしてくれる人のほうがいい。そう思う人がジワジワと増え始めたのです。

そして、基地反対派と基地容認派の割合が拮抗した今、自民党は考えたのです。過去の選挙を見る限り、下地幹郎氏を支持している固定票は「5万~7万票」なので、下地氏が出馬を取りやめてくれて、その票が古謝玄太氏に回ってくれば、玉城デニー氏に勝てるかもしれない。過去2回の玉木氏と次点の票数差は「6万5,000~8万票」なので、これは極めて有効な作戦だ!すぐに下地君に電話したまえ!…なんて流れだったのかもしれません。

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沖縄のための県政か、米国の米国による米国のための県政か

その結果、投票日1週間前の時点での調査で、毎日新聞は「古謝、玉城両氏が横一線」と報じ、読売新聞は「古謝玄太氏が先行し、玉城デニー氏が追う展開」と報じ、QABと沖縄タイムスと朝日新聞は「古謝候補が一歩リード、玉城候補激しく追う」と報じました。ちなみに、毎日新聞は「古謝、玉城両氏が横一線」と報じましたが、専門家によると、本当に「横一線」なら通常は現職の玉城氏の名前を先に書くので、古謝氏の名前を先に書いたということは、わずかに古謝氏がリードしている可能性が高い、とのこと。

一方、別の専門家は、下地幹郎氏が出馬を取りやめたからと言って、その固定票が丸ごと古謝氏に流れるということは考えにくい。もともと下地氏は地元に密着した基地反対派なので、その点で下地氏を支持していた人たちは玉城デニー氏に流れるかもしれない。そして、これまでの選挙を「国の押し付け VS 沖縄の民意」と見て来た人たちも同様だろう、とのこと。

実は、約20年前に下地幹郎氏や玉城デニー氏が沖縄市議会議員だった時代、下地氏が旗揚げした政策集団「そうぞう」に、玉城氏も参加していたのです。そして、一緒に沖縄の未来について熱く語り合っていたのです。8月23日に行なわれた「ネット討論会」で、下地氏が玉城氏ではなく古謝氏の政策を厳しく批判したのも、もともと下地氏は玉城氏と政策が近かったからなのです。

また、玉城デニー氏の前の翁長雄志(おなが たけし)知事は、約30年間に渡って自民党に所属する保守派の地方議員でした。しかし、民意に応えて基地反対派となり、自民党を離党したのです。つまり、自民党がアメリカのほうばかり見て政治をしている「親米保守」なら、翁長知事は地元を最優先した「親沖保守」だったわけです。

そして、そんな翁長知事の意志を継ぎ、沖縄の人たちのために立ち上ったのが、現職の玉城デニー知事なのです。そのような現職と、アメリカのアメリカによるアメリカのための県政を進めるべく自民党から送り込まれた新人の古謝玄太候補、果たして下地氏の支援者たちは自分の大切な一票をどの候補に託すのでしょうか?その答えが、あと4日で出るのです。

(『きっこのメルマガ』2026年9月9日号より一部抜粋・文中敬称略)

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