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セルビアの議会選挙が映し出す「民族主義」と「リベラル勢力」の対立、欧州に広がる“分断”の現在

旧ユーゴスラビアの解体と内戦を経験したセルビアでは、民族主義と民主主義、欧州との連携をめぐる対立が続いています。汚職疑惑をきっかけとした学生運動や、ロシアとの関係を重視する政権の姿勢は、国内政治だけでなく欧州全体の情勢にも影響を及ぼす問題です。今回のメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』ではジャーナリストの引地達也さんが、セルビアの選挙をめぐる動きや旧ユーゴスラビア地域に残る民族間の対立を振り返り、民族主義とリベラル勢力の分断が国際社会に投げかける課題について考察します。

世界史の中心となったセルビアの選挙と民族主義

旧ユーゴスラビアを構成したセルビアで10月25日に議会選挙が行われる。

1990年代に連邦国家、ユーゴスラビアが解体し、その過程で民族浄化や民族主義の名のもとに多くの内戦と虐殺があった国のうち、熾烈な犠牲を出した国で、セルビア民族主義を推進するブチッチ現政権と欧州寄りのリベラル志向の市民勢力との争いとの構図である。

国連の設置した旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所(オランダ・ハーグ)で「人道に対する罪」に問われたミロシェビッチ元大統領を擁護し、情報相として元大統領を批判するメディアに制限を加えるなどを推進したブチッチ氏は2017年に大統領に就任した。

EU加盟を目指し、ロシアのウクライナ侵攻にもウクライナ側に立っていた立場は、現在はロシアとの関係を重視する姿勢に変わりつつある。

伝統的にロシアとセルビアは正教会キリスト教徒が多数を占め、もともと民族主義だったことから、ロシアとは親和的な関係が成り立つのであろう。

この選挙は、2024年、ノビサド駅の工事現場で起こった屋根の崩壊事故に端を発する。

事故は与党関連の業者による手抜き工事だったとして、与党の汚職が背景にあると指摘され、学生の汚職反対の声は、反政府デモにつながった。

この学生運動は、政治団体「学生リスト」を結成し、解散総選挙を要求した。

セルビア憲法は大統領の3選を禁じており、ブチッチ大統領の任期は来年5月までだった。

そのため、権力を維持しようとするブチッチ大統領は9月末に大統領を辞任し、総選挙の与党勝利を受けて首相就任を目指している。

国際法廷で民族虐殺の首謀者とされたミロシェビッチ元大統領の流れを汲む大統領が権力の座にあり、そして、それが維持され続けるのを「西側」の人たちは疑問に思うかもしれないが、現地ではそれぞれの正義がいまだに語られている。

または民族虐殺さえ賞賛されていることを私自身、実感している。

セルビアが関与したボスニア・ヘルツェゴビナの内戦はデイトン合意で終結している。

しかし、反目しあった当事者間の憎悪が消えたわけではなく、今も現地メディアではそれぞれの立場からの視点から報じる「偏り」がある。

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いつでも戦闘は起こりうる可能性はある。

特に旧ユーゴスラビアの中心であったセルビアは19世紀からのセルビア民族主義が力を帯びる傾向にある。

連邦国家であるボスニア・ヘルツェゴビナを構成するスルプスカ共和国はセルビア人が多数を占めるが、10月4日の議会選挙では、親露的なセルビア民主主義勢力が勝利し政権を維持している。

国連戦争犯罪法廷で大量虐殺の関与、投獄や人道に反する罪で裁かれた初代大統領でセルビア民族主義のカラジッチ氏を擁護してきたミロラド・ドディックが9月まで政権の座にあった。

ドディック氏はそのセルビア民族主義によりデイトン合意履行妨害で出馬禁止となった経緯がある。

今回の選挙はドディック派が選挙に勝ち、この結果、セルビア民族主義の政権が維持されたことになった。

欧州全体を見ればフランス、イタリアではデモが暴徒化するケースが相次いでいる。

社会不安は人を内向きにさせ、排外主義に向かうのが常だ。

「セルビア」のキーワードは、サラエボでセルビア民族主義者の発砲で第一次世界大戦の発端となったことを思い出す。

セルビアは、2009年にEU加盟申請したものの、まだ加盟できていないことは、EUと距離を置く姿勢の表れかもしれない。

2000年にセルビアのミロシェビッチ大統領が「ブルドーザー革命」によって権力の座から降り、「国際法廷」で戦争犯罪を裁かれた(本人は2006年に判決が出る前に死亡)ことを念頭に、この革命を西側諸国が後押ししたとして、ロシアは今回のセルビアでのデモを警戒する。

前述の学生デモに対し、ロシアのラブロフ外相は西側諸国がデモを支援しないように指摘している。

セルビアの選挙結果は、民族主義とリベラルに分断される世界の輪郭を鮮明化していくように思える。

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障がいがある方でも学べる環境を提供する「みんなの大学校」学長として、ケアとメディアの融合を考える「ケアメディア」の理論と実践を目指す研究者としての視点で、ジャーナリスティックに社会の現象を考察します。

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