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なぜ今、議員定数を削減するのか?自維国の合意が軽視する選挙制度の本質

衆議院の議員定数削減をめぐり、自民党・日本維新の会・国民民主党の3党が比例代表31議席の削減で合意しました。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』ではジャーナリストの高野孟さんが、1994年の政治改革から現在までの選挙制度の変遷を振り返りながら、今回の3党合意の問題点と、選挙制度改革に必要な議論について考察します。

「そもそも論」抜きで選挙制度を政局のオモチャにするのは止めてもらいたい!/自維国の安易極まりない合意

衆議院の定数削減について、与党の自民・維新、野党の国民民主の3党が「比例区31議席削減案」で合意したため、今国会で法案が成立することがほぼ確実となった。

しかし、そもそも、なぜ国会議員定数を削減しなければならないのか。少なくとも、国民=有権者の側からどうしても定数を減らさないと困るという声が沸き起こっている事実はない。

●維新に引き摺られて

政党側で熱心なのは「身を切る改革」を売り物にしてきた日本維新の会で、前々から「国会議員の議員報酬・議員定数3割カット」を掲げてきたが、2025年10月の自民党との連立政権合意ではだいぶトーンダウンし、「衆院議員定数の1割を目標とした削減」「小選挙区比例代表並立制の廃止、中選挙区制の導入を含め選挙制度を検討」などを盛り込ませた。

自民党はこの問題にあまり熱心でないーーというか、利害関係によって濃淡さまざまで、意見集約がまったくなされていなかったが、この時は維新を連立に引き込むのが先で、そのためろくに検討もせずに「1割=45議席減」を呑み込んでしまった。そのため、維新に迫られていざ法案化し国会で成立させようとすると、党内がまとまるのか、まとまったとしても参院を通せるのか、怪しかった。

そこにすかさず手を差し伸べたのが国民民主党である。同党はかねて「中選挙区連記制を一案とした選挙制度見直し」「参議院の合区見直し」などと併せ「衆議院定数の19減」を主張していたが、自民党が「45」と「19」の間をとっただけの「31」という妥協案を出してくると、すぐにそれに飛び乗り、“連立与党入り”への一歩を踏み出した形である。

3党3様の目先の党利党略の絡み合いで、議会制民主主義の基本である選挙制度の重大な変更が、かくも軽々しく扱われることに強い違和感を覚える。

●まだ使いこなしていない現行制度

この問題を考える場合に、まず踏まえなければならないのは、我々が今なお、1994年に細川護熙首相によって扉が開かれた「政治改革」の第1段階を卒業し得ていないという歴史認識である。

「えっ、まだ第1段階なの?」と思われるかもしれない。が、「政権交代ある政治風土」を耕すことを目標に現行の小選挙区比例代表並立制を導入し、奥健太郎/中島政希編著『民主党史』(ミネルヴァ書房、26年2月刊)の終章で境家史郎=東京大学教授が評価しているように、現実に民主党が自民党政権という「鉄壁要塞」を歴史上初めて打ち崩し、2009年に堂々たる政権奪取を実現した。しかもこれは、一過的な『風』だけに頼った勝利ではなく、10年余にわたり着実に支持を積み上げた結果であった。この教科書的な政権交代は、今後も長く非自民勢力、いや日本の政党政治そのものの達成として記憶され、参照され続けるに違いない」という、まさに狙い通りの結果を生んだのであるけれども、しかし、逆に言うと、制度導入から3分の1世紀を経て、本格的な政権交代は1回こっきりに終わっている。

なぜかということは、私が近く上梓する『来るべきリベラル』(講談社)で語っているので、詳しくはそれを参照して頂きたい。ここで一点だけ強調しておきたいのは、この折角の制度を日本国民がまだ使いこなしていないという認識に立たないと、すぐさま「別の制度に変えればうまくいくかもしれない」といった邪念が頭をもたげてきて、実際にこの3分の1世紀の間にも、徐々に“改悪”されてきて、そのため余計に政権交代が起きにくくなりつつあることに気が付かないことになる。

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選挙制度は一般に、小選挙区制の部分が大きくなればなるほど2大政党制、一党優位制、究極的には一党制に近づいていき、比例代表の部分が大きくなれば逆に多党制に傾いていく。小選挙区比例代表並立制は、その中間にあって、小選挙区制による極端な結果を比例代表制によって補正しようとするものだが、その配分が細川当初案のように250:250であればかなり補正度が高くなるが、300:200となるとその分、小選挙区制バイアスが強くなる。それでも細川の望んだ「穏健な多党制」は実現可能な範囲だったろう。現在はその後の定数是正により小選挙区289+比例代表176=465であるけれども、自民・維新の旧案では289+131、自維国案では少し改善されて289+145となるが、それで小選挙区と比例の議席配分はすでに比例が3分の1を切る寸前で、それだけ小選挙区制によるいわゆる「民意集約機能」に傾くけれども、少数党の勝ち残りを含めた「多様な民意の反映機能」は弱まる。

なので、自維国はこの案でいくとして、それが民意をどう集約し反映するかについて国民によく説明し、了解を取り付けるのでなければならない。

参考までに、90年代以来の衆議院選挙制度の議席配分の変遷を一覧にしておく。これが国民にとって何を意味するのかという議論が肝心要である。

改革年   小区+比例=合計  小区:比例の配分

細川原案   250+250=500 → 50 :50

94年細川  300+200=500 → 60 :40

00年小渕  300+180=480 → 62.5:37.5

12年野田  295+180=475 → 62.1:37.9

16年安倍  289+176=465 → 62.1:37.9

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

26年自維国 289+145=434 → 66.6:33.4

26年自維  289+131=420 → 68.8:31.2

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image by: w_p_o / Shutterstock.com

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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