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【韓国】支持率急落の朴大統領はレイムダックを防げるか!?

急落の一途をたどる朴槿恵大統領の支持率

『辺真一のマル秘レポート』 Vol.39より一部抜粋

朴槿恵大統領の支持率が急落の一途を辿っている。

大統領就任時(2013年2月)は42%と、50%を切っていたが、一年後の2014年2月21日の調査結果では14ポイント上がり、56%まで上昇していた。ところが、8か月後の10月に49%、今年1月第一週40%、第二週35%と下落を続け、第三週目にしてとうとう30%に落ち込んでしまった。

前任者らの任期折り返し(3年目)での平均支持率を見ると、李明博前大統領は44%もあった。崖から飛び降り自殺した盧武鉉元大統領ですら33%もあった。朴大統領の現在の支持率は盧1990年の盧泰愚大統領(28%)に次ぐ最低水準だ。

支持率急落の原因の一つに1月12日に行った新年記者会見が国民の不評を買ったことが大きい。現に今回のギャラップ調査では国民との「意思疎通不足」が不支持の一番の理由に挙げられていた。しかし、原因はそれだけではない。最高指導者としての朴大統領の統治能力、行政手腕、人心掌握に問題がある。特に危機管理能力の欠如が問われている。

振り返れば、大統領に就任した年の2013年は、総理や閣僚の人事で二転三転したことから始まり、情報機関(国家情報院)による大統領選介入疑惑の発覚、南北首脳会談議事録の破棄・流出疑惑めぐる騒動、大規模な原発不祥事と電力危機、さらには老齢基礎年金支給額の見直し問題への対応に世論の批判が集まった。特に老齢基礎年金問題では大統領選で65歳以上の高齢者全員に月20万ウォンを支給するとの公約を掲げていたが、支給対象者を全員でなく、70%と限定し、支給額も所得水準によって月10万~20万ウォン(約9000~約1万8000円)を支給すると公約を後退させたことも評価を下げた。

また、昨年も300人以上の死者を出し、世界10大ニュースにランクされた旅客船「セウォル号」沈没事故への不手際な対応や大統領の元秘書や実弟らの政府人事介入疑惑が政界を揺るがし、大統領側近らの権力闘争説に発展したことも朴大統領にとっては痛手となっている。「セウォル号」は今もって真相が解明されておらず、側近らの「暗闘」の波紋もまだ収まってない。

この他にも韓国軍内で先輩兵士の暴行による兵士死亡や前線での銃乱射、さらには防衛産業不正なども相次ぎ、これも最高司令官としての失点となっている。

「セウォル号」沈没事故以降、自ら指名した首相候補者や閣僚が野党や国民の反発にあい、「不適格」の烙印を押され、軒並み辞退したことによる任命責任も問題にされた。同時に側近ばかりを重用する人事への批判も強まった。

それだけではない。不況の長期化への国民の不満も支持率低下の大きな要因となっている。今回の不支持の理由として「税制改正案・増税」(15%)、「経済政策」(13%)、「福祉・庶民政策が不十分」(9%)などが挙げられていたことからも自明だ。

朴大統領は新年の会見で「執権3年目であり、全国単位の選挙がない年だけに、経済活力を取り戻す絶好の機会である」と公言した。具体的には「潜在成長率4%台、雇用率70%、国民所得4万ドルの経済に変える」と宣言した。

世界的な景気低迷の中でも輸出額(約5731億ドル)、貿易黒字(約474億ドル)、貿易規模(約1兆100億ドル)とも過去最高を記録した自信からこのような目標を定めたようだが、どれもこれも前途多難である。例えば、成長率4%の目標だ。

韓国経済は昨年10-12月期が0.4%の成長で、5期連続で0%台の成長率となった。その結果、昨年の経済成長率は3.3%にとどまった。

韓国の全国経済人連合会(全経連)は昨年11月30日に加盟企業に対してアンケート調査を実施したところ、今年の経済成長率について政府の目標より低い「3.0~3.5%になる」との回答(34.1%)が最も多かった。今年も3%台となれば、2011年以降5年連続で3%台の低成長となる。

韓国経済を底上げしてきた輸出は必ずしも堅調とは言えず、政府系シンクタンクの韓国開発研究院(KDI)が1月7日に発表した報告書によると、12月の輸出は増加となったものの1日平均の輸出額は0.3%減少した。

韓国経済にとってアベノミクスによる円安進行がリスク要因となっている。韓国国際金融センターによると、アベノミクスが始まってからの2年間で日本の輸出企業の株価が平均74.3%上昇したのに対し、韓国の輸出企業は24.8%も下落した。

米情報会社トムソン・ロイターとIBK投資証券がこれまた1月7日に明らかにしたところでは、昨年は主要企業の純利益が米国や日本、中国、欧州連合(EU)では大きく増加したのに韓国企業の純利益は前年比2.2%減少した。

日本企業は円安を背景に昨年の純利益が41.3%増加し、米国企業も13.2%、中国企業も13.0%それぞれ増加した。デフレと金融不安に苦しめられたEU企業も17.7%もアップした。日本を除くアジア諸国の企業の純利益は7.3%増加しており、韓国だけが一人負けした。サムスン電子の9年ぶりの減収がその象徴だ。外需依存の経済構造を変え、内需を拡大しなければ、今後も景気不振は続くものとみられている。

朴大統領は大統領選挙の公約の一つに、経済の民主化を掲げていた。李明博政権の大企業中心の経済成長路線からの方針転換を図り、富の公平な分配を目指し、国民の70%を中産層にすると公言した。具体的には人口の16人の一人の割合となる322万人に及ぶ多重債務者への支援と中小企業の育成だ。特に中小企業には研究開発投資の拡大と人材確保の支援、さらに輸出の支援を約束している。

韓国最大財閥であった現代クループの中核企業である現代建設会長に47歳で就任し、その名を轟かせた経済大統領の李明博氏ですら国民所得4万ドルの目標を達成できず、逆に貧富の格差を拡大させてしまっている。

経済を活性化させ、景気を好転させなければ、支持率の上昇は期待できそうにもない。というのも、経済の失政を補填するだけの外交成果も期待できそうにもないからだ。

対日関係では、日韓国交正常化50周年を迎える今年上半期まで従軍慰安婦の問題で安倍政権が何らかの誠意を示さなければ首脳会談に応じることもできず、北朝鮮とも祖国解放及び分断70周年の節目の今年に離散家族の再会などを実現し、関係改善を図らなければならないが、北朝鮮が米韓合同軍事演習の中止、風船ビラの散布の中止、経済制裁の解除などを条件提示していることからこれまた成果を得るのが難しい。

 

『辺真一のマル秘レポート』 Vol.39より一部抜粋

著者/辺真一
1947年東京生まれ、明治学院大学英文科卒業後、新聞記者(10年)を経て、フリージャーナリストへ。朝鮮半島問題専門誌「コリア・レポート」創刊、現編集長。毎回驚きの真実をリークするメルマガは人気を集めている。
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