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【書評】腹八分目、一流の男のみが知る「残り二分」の深い意味

今回の「3分間書評」で取り上げるのは、水戸徳川家の流れを汲むという由緒正しき家柄の女性による自己啓発の書。武士の時代から連綿と受け継がれているという「松平家の教え」は、現在を生きるビジネスマンにとっても大いに有益と、『毎日3分読書革命! 土井英司のビジネスブックマラソン』の著者・土井英司さんは語ります。

 


『一流の男になる松平家の教え』松平洋史子・著 日本文芸社

 

こんにちは、土井英司です。

先日、出版講座の生徒さんの懇親会での食事マナーが悪く、将来のことを考えて、いくつか指摘させていただきました。

人前に出る人は、最低限の作法を心得ていなければなりません。とはいえ、本気で一流を目指すなら、自分もまだまだ至らないのが事実。

そこで、これを機にきちんと学ぼうと思い、手に取ったのが、本日ご紹介する一冊『一流の男になる松平家の教え』です。

著者の松平洋史子(まつだいら・よしこ)さんは、水戸徳川家の流れを汲む讃岐国高松藩松平家の末裔で、高祖父が井伊直弼、曽祖父が旧佐賀藩主の鍋島直大、祖母が昭和女子大学の校長を務めた松平俊子という、由緒正しい家系のご出身。現在は、大日本茶道協会会長として、ご活躍されています。

この『一流の男になる松平家の教え』は、そんな著者が書いた、一流を目指す男のための心得書。一流の心構えからマナー、所作、人とのコミュニケーションにいたるまで、細かな指摘がなされており、一流のリーダーを目指す方には、うってつけの一冊です。

今の自分にとっては、耳が痛い指摘もなされており、とても良い勉強になりました。

本書を読めば、ビジネス誌で「成功者」と崇められている方も、人間的にはまだまだと理解できるはず。

それではさっそく、その耳に痛い教えを見て行きましょう。

松平家の男性は、「腹八分目」の精神を身につけています。「腹八分目」は、暴飲暴食に対する戒めであると同時に、「自分の人生の二分を人のために役立てなさい」という献身性を説いた教えです。一流の男性は、地位も名誉も富も、独り占めすることはありません

「一番」を目指す人生は、他人と自分を比較する“常に足りていない”人生です

私が幼いころ、祖母の姪である秩父宮妃殿下のご自宅で、おせち料理をいただいたことがあります。箸がうまく使えなかった私は、厳かな雰囲気の中で、粗相をしました。里芋をつまみ損ね、じゅうたんの上に転がしてしまったのです。すると、妃殿下が「あらあら、この里芋さん、ころころ転がって元気ね」といって、場をやわらげてくださいました。妃殿下が私を責めず、私がしたことをなごやかな笑いに変えてくださったから、幼かった私の心は救われました

一流の人は、どのような相手であっても、ミスをとがめたりせずに「やり過ごす」ことがあります。なぜなら、恥をかかせないことは、一流の思いやりだからです

二流は仕事を「作業」と捉え、一流は仕事を「夢」と捉える

茶道では、相手を敬い、思いやりの心を残すことを「残心」といいます。何をするときも「最後まで気を抜かず、清らかな余韻を残せる」人は一流です。ドアは、静かに閉める。電話は、相手が切ったことをたしかめてからそっと切る。お客様に書類をお渡しするときは、両手で差し出す。相手が書類をきちんと受け取るまで、自分の手を少しだけ留めておく……。ほんのわずかなことですが、思いやりの心を残そうとする所作は相手に伝わります

「語尾」は崩さずに、はっきり伝える。「語尾」の「ます」に思いを込めるのが、一流の挨拶です

会話の基本は、聞く。人の話を最後まで聞かず、自分の話ばかりするようでは、一流とはいえません。「相手の気持ちを吐き出させる」ことに徹してこそ、一流です

会話中は相手の「目」よりも、相手の「心」を見る

貧乏とは、お金がないことをいうのではありません。「人のために何もできない(しない)こと」です

隣の人が困っていたなら、手を差し伸べる。知らないふりをしない。通り過ぎない。踏みつけない。その人のために労を惜しまない。一流の人の心根にあるのは、「隣人へのやさしさ」なのです

月並みな表現で恐縮ですが、本当に背筋が伸びる一冊で、良いタイミングで良い本に出合ったと感謝しています。

部下に指導する時でも、子どもに指導する時でも、なぜこのマナーが大切なのか、所作が大切なのか、その本来の意味を知らなければ説得力に欠けるものです。

その点本書は、人を大切にするための根本的な考え方が示されており、いつでも応用可能な心構えとなっています。

タイトルに偽りなし。

これは読み応えのある一冊です。

image by: Shutterstock

 

『毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン』
著者はAmazon.co.jp立ち上げに参画した元バイヤー。現在でも、多数のメディアで連載を抱える土井英司が、旬のビジネス書の儲かる「読みどころ」をピンポイント紹介する無料メルマガ。毎日発行。
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