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夢の外資系企業に転職、その後に待ち受ける「キャリア固定化」のワナ

高卒・派遣社員という立場から、外資系IT企業の部長になったという経歴を持つ佐藤しょ~おんさん。自らのメルマガ『サラリーマンで年収1000万円を目指せ。』では、そんな体験談も大いに交えつつ、自分のキャリアを育てていくための意識の持ち方が伝授されています。

キャリアは公平な採用のために出来た制度

私は香港に香港人の友人がいるんですが、ずいぶん前、まだサラリーマンだった頃に久しぶりに会った時に、お互いの近況の話になったんです。当時私は営業系のある部門の責任者をやっていたんですが、それを聞いた彼は、「ちょっと待って、どうやってキャリアチェンジをしたのよ?」と驚いたのを覚えています。

確かに彼と一緒に仕事をしていた時というのは、同じIT系とは言え、サポート業務でしたから。普通サポートを生業にしている人が出来るキャリアチェンジって、せいぜいがエンジニアリングに行けるかどうかというところで、それが10年も経たないのになんで営業系の仕事、しかも部門責任者になれるのよ?というのが彼の率直な疑問だったんです。

ちなみにこの人、未だに仕事はITのサポート系で、その中で部下を何人か持っているというキャリアで、たぶん10年後も同じような職種に携わる事になるんだと思います。それが良い悪いじゃ無くてね。

これって欧米的なビジネス観の典型例である事に気付いた人は鋭いです。欧米では自分がどんなスキル、実績を持っていて、それが募集されているポジションにどれだけフィットしているかをアピールする事で仕事を手に入れるんです。だから外資系の求人要項には必ず、「ジョブディスクリプション(職務記述書)」という情報が公開されていて、そこには、

▼その業務でやるべき事の範囲
▼数値目標や要求される責任レベル
▼必要となる学歴や知識、そして資格
▼希望する経験年数
▼他社での実績
▼これ以外に仕事に取り組む姿勢

が書かれているんです。これが明確になっているというのは応募者には分かりやすいですし、なによりもフェアですよね。ここは大事なところなので正確に書くと、欧米でなぜこのようなやり方で求人をするかというと、人種や年齢、性別による差別を防止するためなんです。

このジョブディスクリプションが曖昧な状態で、白人が採用されて、黒人が落とされたら、これは人種差別だって事になっちゃうんです。会社としてはそう言われないように、「このような細かい要項を出して、それに合致したから採用したんです」って言えるようにしたんです。

そのための小道具がジョブディスクリプションなんです。採用されなかったのはあなたが黒人だからでは無くて、もうひとりの人の方が経験年数が3年長かったからなんですよ、と理由を言えるわけですよね、ここまで細かくしておけば。

確かにこれはフェアです。

でも、だからこそキャリアが固定化されてしまうんです。さらに言えば、会社からみたらワイルドで面白い人を採用しづらくなったんです。

実はこれが外資系企業の弱点でもあるんです。

もう一つの問題は、こうやって採用されるとジョブディスクリプションに書かれた事以外の仕事はやらなくなるんです。

例えば、サポート業務で雇われたのに、「ちょっと人がいないからウェブサイトの更新をやってよ」なんて言われて、これをやってあげても自分の評価にならないんです。だって自分の評価軸はジョブディスクリプションに書かれている職責の範囲内に於ける実績だけですから。さらにこれを手伝って失敗をしたら面倒な責任だけ負わされる事になるでしょ。

だから外資系で頻繁に聞く会話は、「なんでオレがそれをやらなきゃならないの?」だったりします。

これがまた自分のキャリアを固定化させるんですよね。 

キャリアを変えるために必要な事

外資系ではジョブディスクリプションに与えられる仕事の細かな内容が記述されている、その業務を出来る人、やった事がある人、実績がある人、そのために必要な知識や能力を持っている人を、人種や性別、年齢に関係無くフェアに雇いますよという制度になっているんですね。

これはこれでフェアなんですが、こういう環境だからこそ、新たなキャリアを積む事が出来にくいんです。件の彼、実はサポートでは無くて、マーケティングや営業をやりたいのかも知れません。もしかしたら人事を任せたらものすごく実績を上げるかも知れません。ところが欧米の企業では、彼がそういう仕事に就ける可能性はほとんどありません。

だって彼にはそういう業務に必要な経験や実績が無いからです。-_-

会社としても彼をマーケティング担当で雇いたくても、他にマーケティングの経験がある人が応募してきたら、その人を不採用にするわけにはいかないんです。片や経験も実績もゼロ、片や5年間の経験があるとなったら、いくら前者の人にセンスや才能を感じても彼を採用するとアンフェアになっちゃうんですよね。

ですから欧米では、一度キャリアを作ったら、その枠の中でどうやって上を目指すか、さらに実績を究めて高い単価をもらうかという道筋の中でしか生きられないんです。つまりキャリアについてはスゴく不自由なのですよ。これがスペシャリストと言われる人たちなのです。

では私はどうやってあれこれと頻繁にキャリアを変えたかというと、当初香港の友人と一緒に仕事をしていた時には確かにサポート系の仕事をしていました。これが2年か3年くらい続きましたかね。その間に、人事上の部下が数名出来るようになって、所謂管理職(サポート系での)になりました。

ここまではごく一般的なキャリアの積み方をしています。

ところがここで事件が起こります。ITバブル崩壊によるリストラです。私も危うくリストラされそうになったんですが、降格降給でここを凌ぎます。リストラが実施されたため、社内では必要な人員まで削られてしまいました。ここが私にとってのチャンスでした。人がいない、少ないという事は、「一人で様々な業務をやらなきゃならない」という事です。

「それはボクの仕事じゃありません」なんて言ってる場合じゃ無いんです。目の前でお客さんが困っていたり、仕事をくれるって言ってるのに、「私は営業じゃ無いんでちょっとお待ちください」なんて言えるわけがありません。

そこで私は新たな仕事をお客さんからもらう根回しをしたり、いくらでこのサービスを売ったら儲かるのかを計算するためのコスト試算をしたり、派遣会社に連絡をして人を回してもらう準備をしたり、これ全部当時の私の職責には関係無い仕事だったんですが、これをやったんです。

そうしたら見事スポットでプロジェクトと、1年間のサービス契約をもらえちゃったんです。これが私の最初の営業として契約をもらった仕事でした。

しかもこの仕事を実施するのも私です。自分で取ってきた仕事を自分で実施する。そのために要員のやりくりをして、トレーニングをして、マニュアルを作って、利益が残るようにコストの削減もやって、さらにはこれを機にプロジェクトマネジメントの勉強もやったんです。

そしてこれが軌道に乗った時には、なぜだか部内で私の評判が上がっていたと。

それからは、いつも部内で一番厳しい仕事(仕事の報酬は仕事だって書きましたよね)が優先的に私に回って来て、それで鍛えられました。

▼サービス品質を上げるには……
▼でもコストをもっと下げるには……
▼人の教育ってどうやれば良いんだろうか……
▼何をやったら売り上げが増えるんだろうか……
▼なんですぐに人が辞めちゃうんだろうか……

これって完全に幹部クラスか経営層が持っている課題ですよね。

この時に私が、「その業務は私のジョブディスクリプションに書かれていませんから出来ません」って言ってたら、そういう経験も実績もそして知識も身に付かなかったんですよ。

その結果、程なくして部長に昇格したんですけどね。

そうしたらもっと垣根無くメチャメチャ幅広く色々な業務をやる事になったんです。それがいま、全部活きていますよ。

だからキャリアを変えたいと考えている人は、小さめの会社に転職する事をオススメします。人がいつでも、慢性的に足りなくて手を挙げればなんでもやらせてもらえる、そういう会社に行くと今までとは違ったキャリア、実績、知識を身に付けられますから。

image by:Shutterstock

 

『サラリーマンで年収1000万円を目指せ。』
著者/佐藤しょ~おん
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