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テレビの時代は終わった。世界的エンジニアが語るYoutubeの可能性

「最近のテレビはつまらなくなった」と言われて久しいですが、他の娯楽があふれるようになった現在、テレビの影響力が弱くなったという事実は誰もが認めるところでしょう。一方、インターネットの世界では、Googleが提供するYoutubeなどの動画共有サイトが隆盛を極めています。世界的エンジニアでメルマガ『週刊 Life is beautiful』の著者・中島聡さんは、ネット上の動画広告がテレビ放送の広告を上回る日もそう遠くないと指摘。さらに、テレビ局の前時代的な体質に疑問を投げかけています。

4Kテレビ

日本の放送は「地上波デジタル」で高画質になりましたが、さらに高画質な4Kデジタルの仕様を決める場で、民放キー局が「無料放送の録画禁止」を仕様に盛り込むことを強く提案しており、議論が紛糾しているそうです(参照:「4K番組は録画禁止」という驚愕のシナリオ)。目的は、もちろん「CMスキップ視聴を不可能にすること」です。

そもそも、国民の財産である貴重な電波帯域を特定の営利業者のコンテンツ配信に使わせるという発想そのものが時代遅れですが、ネット上では批判する声も多く、これでますます放送離れが進むだけだと私は思います。

しかし、一方で、GoogleYoutubeの中に巧みな方法で広告を混ぜ込み、放送局よりもはるかに効率的に消費者に広告を配信する仕組みを作り上げつつあります。今のペースで進化を続ければ、ネット上の動画広告の市場が、放送のそれを上回る日も遠くないと思います。

放送局とYoutubeの根本的な違いは、ソフトウェアにあります。

放送局は決められた放送規格に基づいて放送を流し、消費者はその放送規格に基づいて作られた受像機で放送を見るわけですが、その受像機で走るソフトウェアを作るのはメーカーであり、放送局は全く手を出すことができません。つまり、「録画できるか」「コマーシャルをスキップできるかどうか」などのユーザー体験は、業界標準である放送規格で規定されてしまっているのです。その上、放送は一方通行なので、視聴しているユーザーが録画したかどうか、コマーシャルをスキップしたかどうかなどの情報を放送局は得ることが出来ません。

唯一、放送局が得ることができる情報は、「視聴率」ですが、人々のライフスタイルがここまで大きく変化した今、視聴率そのものがあてにならないものになりつつあります。視聴率は各家庭に置かれたテレビがどの時間にどのチャンネルを見ているかに基づいて算出されていますが、テレビを持っていない人は統計の対象にはならないし、「家族でそろって茶の間でテレビを見る」というライフスタイルそのものが崩壊しつつある今、世帯単位で視聴率を測定してもあまり意味がありません。たとえ視聴率20%という数字を稼ぎ出した番組も、テレビを持たない人、家族と一緒にテレビを見ない人も含めて全人口を分母にして計算し直せば、実際には数パーセントの人しか見ていない計算になります。

それに対して、Youtubeは、Googleが開発したアプリケーション上で動くため、ユーザー体験は100%Youtubeがコントロール出来るのです。それも、ウェブ上のアプリケーションなので、視聴者の反応を見ながら、細かな微調整をしていくことすら可能です。Youtube ビデオの先頭に流れる広告をスキップできるかどうかを決めるのも Youtube だし、実際にユーザーがスキップしたかどうかの情報も Youtube は集めることができるのです。スキップされてしまう広告を減らすために、Youtube から広告主に対して「スキップされにくい広告にするためのノウハウ」すら提供されています。

どんなビジネスでもそうですが、顧客により良い体験を提供し、かつ、収益に結びつけるには、ユーザー体験に全責任を持つ、かつ、きめ細やかに改良し続けることが何よりも大切です。放送規格というものに縛られている放送局と、自らアプリケーションを開発してユーザー体験を作り出しているYoutubeとではどちらが有利かは明白だと思います。

image by: AmsStudio / Shutterstock.com

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