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なぜ今「SpaceX」は上場するのか?中島聡が読み解く、電力不足を宇宙で解決するイーロン・マスクの壮大な戦略

イーロン・マスク氏がSpaceXを2026年に上場させる意向を表明し、「Teslaの株主にIPO株を渡す方法を考えている」と発言して注目を集めています。これまで上場に消極的だったマスク氏が方針を転換した背景には、「宇宙空間のAIデータセンター」構想があります。AI業界で深刻化する電力不足を解決するため、24時間太陽光発電が可能な宇宙空間にデータセンターを構築する計画です。メルマガ『週刊 Life is beautiful』では、著者で著名エンジニアにして投資家でもある中島聡さんが、この壮大な構想の実現可能性と未来のAI社会について解説しています。

※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです

プロフィール中島聡なかじま・さとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

SpaceXのIPO

Elon MuskがSpaceXを2026年には上場させたいと発言し、にわかに注目を集めています。それも、「Teslaの株主に、IPO株を渡す方法を考えている」と語ったので、私を含めたTeslaの株主たちは大喜びです。

未上場株やIPO株の配布に関しては、色々と細かな制限があり、実現するかどうか分かりませんが、もし、IPO株が入手できるのであれば、喜んで購入する予定です。

これまで、Elon Muskは、SpaceXの上場には消極的でした。SpaceXは、Elon Muskが「火星に大勢の人が住めるコロニーを作る」というビジョンのもとに作られた会社ですが、上場してしまうと、利益を優先する株主の反対でその計画を実行できなくなってしまう可能性があるからです。

にも関わらず、Elon MuskがSpaceXの上場の話を始めたのは、「宇宙空間のAIデータセンター」のためです。

AI業界が直面する電力不足

現在、AI業界では、OpenAI、Google、xAI、Meta、Anthropicの間のAI市場の覇権争いのために、莫大な投資が行われようとしています。そんな中で明確になって来たのが、電力不足です。

大量のGPUやTPUを入手しても、十分な電力が確保できなければAIデータセンターを作ることができません。そのために新たに発電施設を作るにしても、火力には環境、原発には安全・安心、再生可能エネルギーには時間と場所、とそれぞれ問題があり、AI業界が必要とするスピードで電源インフラを構築することは困難です。

宇宙空間のAIデータセンター構想

そんな中で、急に浮上して来たのが、(先週のメルマガでも触れた)「宇宙空間のAIデータセンター」構想です。宇宙空間であれば、太陽光で24時間発電することが可能だし、冷却は太陽光が当たらない側の放射冷却が可能なため、蓄電池も冷却装置も不要です。

宇宙空間への打ち上げコストは、SpaceXの誕生以来下がり続けており、現時点では1キログラムあたり$1,500程度です。SpaceXはさらに大型のロケットにより打ち上げコストをさらに下げる予定であり、そうなると、「宇宙空間のAIデータセンター」が現実的になって来ます。

Elon Muskは、さらにその先には、(重力の低い)月面上に衛星の製造設備を作れば、電磁砲(レールガン)で衛星を低コストで打ち上げることが可能になるため、「年間100TW」のペースでAIデータセンターを構築することが可能になると指摘しています(レールガンで地球の脱出速度を実現するのは困難ですが、重力が弱く、空気抵抗もない月からの脱出速度であればレールガンで十分に実現可能と考えられています)。

AIへのニーズは爆発的に増える

MulmoCast/MulmoChatを開発していて、さらに強く感じるようになりましたが、AIに対するニーズが、今後、爆発的に増えることは明らかです。AIは、私たちの働き方やライフスタイルを根本的に変えます。AIアシスタントが、1日24時間、私たちが見ているもの聞いてるものを同時に見聞きし、適切なアドバイスをくれて、仕事を手伝ってくれる時代が必ず来ます。

そのためには、APIコストを今の100分の1にする必要があるし、データセンターの規模は今の1000から1万倍の規模にする必要があります。そんなデータセンターに供給する電力を、宇宙に求めるのは当然の話なのです。

【参考資料】

【関連】中島聡が憂慮する「AI自給率」が低い日本の未来。先の大戦での石油資源に相似も「国産LLMでは国民の幸福を保証できない」理由とは?

(本記事は『週刊 Life is beautiful』2025年12月23日号を抜粋・再構成したものです。「私の目に止まった記事(中島氏によるニュース解説)」、読者質問コーナーなどメルマガ全文はご購読のうえお楽しみください。初月無料です )

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image by: MAG2NEWS

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