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民主と維新の合流にシラケた空気。「新党結成」なぜ盛り上がらない?

いまいち盛り上がりに欠ける民主党と維新の党の合流。世論調査でも国民の注目度の低さが明らかとなりました。とは言え近頃自民党にもスキャンダルが多発、イメージダウンが深刻なのも事実。これは大きなチャンスでもあるのではないでしょうか? 無料メルマガ『ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」』では、過去の新党結成を振り返り、今回の合流を成功させるためのヒントを記しています。 

新党結成、野党連携、政権交代の足がかりに?現状では国民の期待なし

本日は政治の世界に目を向け、「新党結成野党連携」をテーマに話したい。まず、民主党と維新の党が合流。衆院93人、参院59人とそれなりの数になり、共産党が選挙協力する。本気になって動き出せばなんとかなるのだろうが、民主党内部もガタガタしている上に、政策で一致できるかどうかはっきりしていないことから、なかなか難しいように思う。日経新聞が実施した世論調査(3月1日の新聞に掲載)では、64%が期待しない」との回答であったことから、国民の間でも期待されていない。これをどうやって期待に変えていくということが、これからの大きなポイント。

本気で闘う気はあるのか?

自民一強にどう立ち向かうのか、野党の力が試されるところ。本当は健全に立ち向かう力が出てこないと、政治の世界は拮抗した面白さがなくなってくるので期待したいところだが、成立前からこの数値というのは厳しい。なぜこのようにいわれるのかというと、まず民主党の岡田氏と維新の党の松野氏双方の表情が暗く、新しい政党を作ろうという盛り上がりが感じられない。共産党が協力すると言っているのに、協力しなくてもよいという感じなので、野党が本気になって政権を奪取しようとしているのかが見えない

かつては良くも悪くも民主党が小沢一郎氏の自由党と合流した時には「政権交代な二大政党を目指す」というビジョンを示し、それなりに国内も盛り上がった。そういったことが今回は無いように感じられる。

過去の動きにヒントを

過去にも新党結成の動きはあったが、かつての新党結成の動きを見ながら今の新党結成を考えた方がよいと思うのだが、古い話で言うと1955年11月に旧日本民主党と旧自由党の保守合同」があった。合併前に日本民主党を率いていたのが鳩山一郎氏であり、三木武吉氏、河野一郎氏、岸信介氏など党人派と言われたような人が多くいた。一方、自由党には吉田茂氏を筆頭とする官僚政治家勢で、池田勇人氏、佐藤栄作氏らが名を連ねていた。この2つの党が一緒になって、「保守合同」が出来た。社会党も負けじとほぼ同じ時期に右派と左派が一緒(55年10月)になり、この2つの党自由民主党と日本社会党が戦後ずっと闘ってきた

戦後日本は、「護憲・革新・反安保」の社会党路線と「改憲・保守・安保護持」の保守路線の国家ビジョンの対立があり、財界もどちらを応援するかという日本全体が大きく動いているという感じがあった。

自民党のホームページには(以下引用)

政局を安定させ、経済の飛躍的発展と福祉国家の建設をはかるためには、自由民主主義勢力が大同団結し、一方、社会党も一本となって現実的な社会党に脱皮し、二大政党による健全な議会政治の発展をはかる以外にない

当時の総括の記載があり、新党結成、野党再編ということから日本の新しい政治のエネルギーを出そうという勢いが見えた。しかしながら、今回の民主党と維新の党の合流はビジョンではなく党の名前をどうするのかということばかりが報じられ、世論調査にも表れているように期待が出てこず、どういう党を作ろうかということが見えてこない。

クリーンな政治へ

野党共闘に関してももう1つ、前例がある。一番大きいのは細川政権を作った時の動き。「55年体制」で自民党政治は安定しているように見えたが、90年代冷戦が崩壊すると、自民党政権が混迷。派閥の悪い面が出始め金権腐敗政治を生み「リクルート事件」などの汚職事件も多発した背景から、野党が頑張ろうじゃないかということでうねりが出てきた。

自民党内からも宮沢内閣に対する不信感が募り、「不信任決議案」が提出され、過半数を取っていないが「さきがけ」、「新生党」、「日本新党」など8党が連合。普通はその中で一番議席が多い政党の党首が日本の首相になるのだが、第3党の細川氏が首相就任し「非自民・非共産」のスローガンを掲げ連立政権が誕生した。族議員の癒着から離れた「クリーンな政治」を作ろうという動きは国民に受けた

「顔」を意識した政治

この当時新生党党首の小沢一郎氏も随分力を発揮し、第1党党首であった小沢氏が党首になれたのだが、自分が首相候補に出るより細川氏を首相候補に出した方が国民の人気が出るだろうとの施策があった。つまり「顔」を意識し、小沢氏の政治顔に対し、細川氏は元新聞記者で熊本のお殿様の直系で、お金持ちで卑しさがなくカッコ良かった。APECの総会でマフラーをたなびかせる姿はカッコ良く、日本の首相も変わったなという印象だった。それまでの政治家はずんぐりむっくりであったが、背が高くようやく日本にもヨーロッパ人と並んでも見劣りしない政治家が出てきたなという感じがあった。

「視える政治」カッコイイ政治家へ

また、記者会見のときにはボールペンで「はい、君。はい、君」とさすようなカッコイイところもあり、やはり政治家はカッコよくなきゃいけないなという雰囲気を出した。この時に「視える政治」というスタイルを確立し、これからはそこを意識しなくてはならないというようになった。

この時は細川氏のイメージ戦略と当時に、共闘ビジョンがきちんとあった。野党共闘してクリーンな政治をやるんだと言ったのだが、細川氏は突然「国民福祉税」と言い出し、バックに小沢氏がいることが見えてきたため野党が分裂して結局つぶれていくのだが、今回の野党の結成は果たしてこれまでのようなものになるのかどうなのかということを考えると難しいように思う。

「顔」をきちんと作れるか?

話を戻して民主と維新の合流に関しては、議席数も多く、大きなビジョンを出して、「をきちんと作っていけば案外国民も期待するということはあるだろう。「アベノミクスに期待しない」という人が過半数を割る所まで来ている上に、さまなざまスキャンダルがあるにも関わらず野党はそこにつけこむことが出来ない状況。そこからも野党共闘のうまさが出ていないというように思う。これは何かというと政策ビジョン国家ビジョンがはっきりしない。それをやるならダブル選挙をやってつぶしてやるぞという安倍首相の脅しに対してなんとなく弱腰。さらに、野党共闘で誰が顔になるのかというが見えず、岡田氏なのか松野氏なのか、もう少し新たな清新な顔が出てこないと国民的な人気が出てこないように思う。

迫力不足

共産党は1人区の大半で候補を取り下げるという事を言っているが、これらの働きかけに対してどこまで野党共闘が進んでいくのかが見えない所に迫力不足を感じる。共産党と一緒になるのは嫌だという声があり、せっかくの共産党の申し出をつぶしている。カリスマ性のあるいい顔を作るということが大事だと思う。

(TBSラジオ「日本全国8時です」3月1日音源の要約です)

image by: Wikimedia Commons

 

ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」
ジャーナリスト嶌信彦が政治、経済などの時流の話題や取材日記をコラムとして発信。会長を務めるNPO法人日本ウズベキスタン協会やウズベキスタンの話題もお届けします。
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