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元国税OBが教える「税務署泣かせの新戦法(1)」確定申告ボイコットより高勝率!「税務調査」で調査官に一泡吹かせろ

読者の労力や時間に配慮し、これまで「税務署と戦う」方法を積極的には指南してこなかったという元国税調査官の大村大次郎さん。そんな大村さんの気が変わる出来事が、今年の確定申告シーズンに起こりました。そう、裏金国会議員の脱税事件と、それを追及しない国税庁に対してSNSで巻き起こった「#確定申告ボイコット」運動です。国会議員だけが脱税してもお咎めなしという今の状況は、憲法で定められた法の下の平等に反するもの。しかし安易に確定申告をボイコットすれば、一発で追徴税を課されてしまう――そこで大村さんは、一般市民が税務署と徹底的に戦う方法を一から研究しました。今回はその第1回として、任意の「税務調査」に不服を申し立て税務署に抗議の意志を示す方法をお届けします。(メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:税務署と徹底的に戦う方法1

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税務署との戦いは正義である。元国税調査官が考えるワケ

今年の確定申告では、国会議員の裏金問題などで国民の反発が高まり、「確定申告ボイコット」というワードがトレンドに上がったりしました。

でも、さすがに確定申告をボイコットしてしまうと、一発で追徴税を喰らってしまうので、ダメージが大きいです。だから、それはすすめられません。

が、自分の権利を駆使して税務署と戦うというのは良いことだと思います。

特に自営業者や経営者は税務署と直接向き合うことが多いものです。

その際に、税務署に不要な協力はせず、自分の不利になることは受け入れない姿勢をとることは、大事です。それは自分の利益を守るとともに、国民の不満を国に表明する一つの手段でもあります。

筆者としては、税務署と戦うのはそれなりの労力と時間が必要なので、これまであまりオススメしてきませんでした。税務署に対しては言いなりにならないようにけん制しつつ、上手に付き合っていく方が現実的だと思われたからです。

が、裏金国会議員に国税がまったく税務調査をしない様子を見て、筆者は気が変わりました。裏金というのは、税務上、もっとも悪質なものです。収入も支出も帳簿に載せていないわけですから。

【関連】元国税調査官が激怒!政治家の脱税を見逃す国税庁の不正腐敗ぶり #確定申告ボイコット 前代未聞のトレンド入りは当然か

これが国税にスルーされるとなると、収入も支出も帳簿に載せる必要はない、つまりは申告の必要はないということになります。

もちろん、ほかの納税者にはそれは許されるものではありません。国会議員だけにこの無法状態が許されるということは、憲法で定められた法の下の平等に反することです。

裏金国会議員を放置している国税庁には、ほかのどんな納税者も税務調査する権利はないはず。だから、税務署と戦う時間的、労力的余裕のある人は、どんどん戦うべきだと筆者は思うようになったのです。

税務調査の大半は「違法調査」の疑いがあるという事実

自営業者や経営者の人たちにとって、税務署との関係で一番厄介なのは「税務調査」でしょう。

この税務調査は、2種類あります。「強制調査」と「任意調査」です。

強制調査というのは、脱税の証拠があがっており裁判所の許可を得て行われるもので、納税者側に拒絶する権利はありません。刑事事件での令状による捜索のようなものです。

一方、任意調査というのは、納税者の同意を得て行われるものです。

が、国税調査官には、税金に関してあらゆることを質問できる「質問検査権」というものがあり、納税者はこの質問検査権に対して、受忍義務があります。

この「質問検査権」を盾にして、税務署はかなり自由に税務調査を行ってきました。

が、質問検査権があるからといって、すべての納税者に自由に税務調査できるわけではありません。

税務調査というのは、納税者に多大な労力と時間を取らせるものなので、税務調査をするにはそれなりの理由が必要となります。裁判の判例でも、「社会通念上、税務調査が必要と認められる理由」は不可欠であるとなっています。

つまりは、一般的に言って申告内容に「これは税務調査をしないとならないだろう、と思われるくらいの不審な点」がないと税務調査はできないのです。

調査官の「ノルマ」が生み出す、違法な税務調査

では、すべての任意調査において、「これは税務調査をしないとならないだろう、と思われるくらいの不審な点」があるかというと、決してそうではないのです。

というより、任意調査のほとんどのケースは、不審らしい不審はない状態で行われています。

税務調査というと、任意調査であっても、税務署側が集めた情報の中で怪しい納税者をピックアップして、ある程度、下調べをして、「ここは調査するべき」という納税者に行なうものというイメージがあります。

一般の人の税務調査というのは、そういう認識があるはずです。が、実際の税務調査は、そんな丁寧な作業はしていません

というのも税務署の調査官には、調査件数のノルマが存在します。

これは、明確に文書に記載されたノルマではありませんが、実質的にノルマが与えられているのです。

このノルマをクリアできなければ、勤務評定が低くなりますので、実質的なノルマなのです。

そして調査件数のノルマを達成するためには、「不審な点がある納税者」だけではなく、ろくに情報がなく、ほとんど不審な点がない納税者も調査しなければなりません。

税務署は、

「売上が上がっているけれど、利益が出ていない」

「この事業者はしばらく税務調査に行っていない」

という程度のぼんやりとした理由で税務調査を行います。任意調査で「課税漏れの疑いのある資料」などを持っているケースは、10件に1件もないといえます。

もちろん、ぼんやりした理由しかないのに税務調査をすることはできないので、適当に税務調査をする理由はつくっています。

税務調査をすべき「正当な理由などない」ケースが多い

任意調査では、税務署は事前に納税者に対して、「税務調査の目的」を明示することになっています。

が、この税務調査の目的というのは、ぼんやりしたものであり、具体的に「こういう不審な取引があった」などという理由は、明示されません。

実際に「税務調査をする必要がある具体的な理由」があっての税務調査というのは、非常に稀なのです。

つまりは、税務調査の大半はノルマをクリアするために「取ってつけた理由」による調査なのです。

取ってつけた理由しかないのに「社会通念上、税務調査の必要性が認められるか」というと、おそらくほとんどのケースがノーだといえます。

もし裁判になれば、「税務調査そのものが必要性がない」とされるケースもかなりあると考えられるのです。

社会通念上、税務調査が必要なケースというのは、税務署がいろいろ調べてみて怪しい情報がある納税者に対して行うものという認識があるはずです。

何の情報もないのに、「ここは景気が良さそうだ」「ここはしばらく調査をしていない」などの理由で税務調査が行われているとは、一般の人は思っていないはずです。

一般の人が認めるだけの理由がなければ、本来、税務調査というのは行えないのです。

にもかかわらず、今はなぜぼんやりとして理由で税務調査ができているのかとというと、まだ納税者側が「税務調査の目的」を不服として裁判を起こしたケースがほとんどないからです。

納税者側にそこまでやる労力と時間がないのです。

しかし税務調査を受ける覚えがない納税者が、税務署の明示した「税務調査の目的」を不服として、税務調査そのものの中止を求めて裁判を起こせば、かなりの確率で勝てるのではないかと、筆者は思います。

税務調査を拒否した場合の罰則は?

では、納税者が税務署から任意調査の打診を受けたとき、「税務調査を拒否」したら、どうなるのでしょうか?

税法では「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」ということになっています。

税務調査を拒否して、税務署に起訴された例として、ちょっと古いのですが、昭和48年の判決があります。

この事案は、納税者が税務調査の打診を受けてもいつまでも応じず、税務署員が訪問しても拒否し続け、押し問答になった際に、税務署員がちょっとしたケガをしたとして、起訴されたものです。

この裁判では、納税者側は、「税務調査の目的がはっきりせず税務調査を受けること自体納得が行かない、税務調査の目的を示せ」と主張しました。

一審では納税者側の主張が認められ無罪となりましたが、二審では税務署側の主張が認められ、罰金3万円が課せられました。

最高裁では上告が棄却されたので、罰金3万円が確定しました。

納税者側が負けたとはいえ、罰金は3万円で済んでおり、また税務署側に対して、「税務調査をするには税務調査をしなければならない客観的な理由が必要」ということも示されました。

また当時は、税務署が税務調査の目的をあらかじめ納税者に明示することはしていなかったのですが、この判決の後、税法が改正され、現在では、税務調査の目的を明示することになっています。

税務署と庶民が互角に戦える「有力戦法」のひとつ

このように、税務調査をむやみに拒否することは、違法であり罰則もあるので、かなりのリスクがあるといえます。

が、まったく身に覚えがないのに、税務調査の打診があった場合、税務調査自体に正当性がないとして逆に税務署を訴えることも、一つの方法として考えてもいいと思われます。

次回は「反税団体」を使って税務署と戦う方法をご紹介したいと思います――(メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2024年5月1日号より一部抜粋。「共働き夫婦の税金の裏ワザ」「定年後のプチ起業入門1」「副業2億円の税務署員は税務申告していたのか?」「コロナワクチン訴訟について(編集後記)」など全文はご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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