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なぜ日本の外交は信用されないのか? 外国人の目に映る「不誠実」行動

日本人は世界中の人々から「誠実」「親切」といった印象を持たれているにもかかわらず、肝心の外交ではそれがまったく生かされておらず、むしろ「信用出来ない」とまで受け取られている、とするのは無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さん。なぜそのような事態に陥っているのでしょうか。昨今の安倍総理の言動から、日本の外交の問題点を探ります。

なぜ日本政府の外交は信用されないのか?

もう「大昔」といってもいいと思いますが。私と親友のYさんは、フィンランドの首都ヘルシンキの公園で、昼間からビールを飲んでいました。すると、ある女性がやってきて、「日本の方ですか?」とたずねます。私たちは、「そうです」と答えました。なんでも、その女性はカナダ人で、一緒にきた彼氏とはぐれてしまった。さらに悪いことに携帯電話をなくしてしまった。それで、私たちに「助けてほしい」と言うのです。

私たちは、もちろん助けることにしました。しかし、当時私たちがロシアで使っていた携帯電話は、フィンランドで使えなかったのです(大昔ですから)。仕方なく、その女性と一緒に、すでに数少なくなっていた公衆電話を探しまわりました。幸い、彼氏の電話番号は手帳に書いてあったので、無事連絡がつき、公園で待ち合わせすることになりました。

彼氏を待っている間、私たちはその女性に、「こんだけたくさん人がいるのに、なんで私たちのところにきたの?」と質問しました。するとその女性は、「日本に留学していたとき出会ったすべての人がとても親切だったから日本人なら必ず助けてもらえると思ったの」と言いました。私は、留学中の彼女に親切にしてくれた日本の皆さんに、心から感謝しました。彼女は、カナダに戻って、「日本人はみんな親切よ!」と勝手に宣伝してくれているのですから。

私もいろいろな国に行きましたが、どこにいっても「日本人の誠実さ」は知れわたっています。これだけだと、「だから自虐史観は捨てましょう」という話になるのですが…。しかし、残念ながら「日本政府の評判は、「イマイチ」なのです。

「不誠実」と認識される日本外交

毎度同じ話で恐縮ですが。2012年11月、中国は、モスクワで「反日統一共同戦線」形成をロシアと韓国に呼びかけました。必読証拠はこちら。

反日統一共同戦線を呼びかける中国

この戦略のポイントは、

この後、中国韓国は、日米を分断すべく、大々的な「反日プロパガンダ」を開始しました。日本は、「反日統一共同戦線」戦略を「無力化」すべく、「アメリカとの関係強化が最優先課題になったのです。

その後、日米中関係は二転三転するのですが、2015年3月から4月にかけて、日本は大きな勝利をしました。

まず3月、「AIIB事件」が起こった。日本以外のすべての親米国家が、アメリカを裏切り、中国側についた。しかし、日本は「AIIB不参加」を表明し、アメリカの完全没落を食い止めたのです。

4月、安倍総理は、「希望の同盟演説」を行い、アメリカ議員たちを泣かせます。オバマさんも大喜びし、「日米関係がこれほど強固だったことはかつてなかった!」とツイートしました。日本は中国の戦略を完全粉砕することに成功したのです。ところが…。

「希望の同盟演説」で力を得たアメリカは、翌5月から中国バッシングを本格化させていきます。具体的には、2013年から始まっていた中国による「南シナ海埋め立て」を突如問題視し始めた。両国関係は急速に悪化し、「米中軍事衝突」を懸念する声も聞かれるようになってきました。

この時、「希望の同盟国」日本は、何をやっていたのか? そう、二階さんが3,000人を率いて訪中し、中国と和解していたのです!!! これ、オバマさんは、どう思うでしょうか?

「ああ、やっぱり日本は信用できない。シンゾーの『希望の同盟』演説を喜び、信じた俺がバカだった。キッシンジャーが、『ジャップは最悪の裏切り者』と言っていたが、本当だった…」

となるでしょう??? 安倍総理は、「歴史的勝利」を、わずか1か月で失ったのです。逆に、アメリカから信用できない奴と警戒されることになりました。

アメリカとロシア、両国との関係を悪化させる外交

さて、外国には理解不能な日本外交は、今も続いています。5月、安倍総理はロシアに来られるのだそうです。これ、オバマさんから「今はまだその時期じゃないから、行かないでくれ」と止められたのですね。しかし安倍総理は、「ロシアとの平和条約は大事だから」といって、無視することにした。

これだけ聞くと、「おお! 『自立外交』ですね、総理!」と思うでしょう? しかし、わざわざアメリカとの関係を悪化させて訪ロしても、ロシアとの関係は良くならないのです。

なぜ? 話のテーマが、「平和条約締結」だけだからです。「平和条約締結」といえば美しいですが、要は「北方領土返しやがれ!」ということです。

ところで、「4島を返すことは、ロシアやプーチンに「お得」なのでしょうか? もちろん「お得」ではありません。逆に「大損」です。だってそうでしょう? 戦争で奪った土地を、実質「無料」で返すわけですから。だから、プーチンは、「北方領土問題」の話は全くしたくないのです。

※ この部分、「ロシア政府は何を考えているか?」を話しています。「私の考え」ではありませんので、「北野さんあなたは間違っている!」などと批判メールを送らないでください。

しかもロシア経済は、「経済制裁」「原油価格低迷」「ルーブル安」の三重苦でボロボロになっている。だから、「経済協力」の話がしたい。要は、ロシアが儲かる話をしたい。ところが、日本政府から人が来ると、いうことは、「いつ島返してくれますか?」だけ。だから、ロシア側も「日本政府の人とは会っても損するだけ」という認識になっている。最近、ロシア側が強硬になっているのは、こういう背景があるのです。

つまりこういうことです。

プーチンと仲良くしたいのに、ウクライナ大統領を歓迎?

もっと最近の話に入っていきます。安倍総理は4月6日、ウクライナのポロシェンコ大統領と会談しました。毎日新聞4月6日から。

首相は会談の冒頭、「日本は情勢の平和的解決に向けたウクライナの改革努力を後押しする」と発言。国別で最大規模となる約18.5億ドル(約2,040億円)の経済支援の継続を表明し、引き続き2国間で緊密に連携する方針で一致した。

 

ポロシェンコ氏は会談後の共同記者発表で、ロシアによるウクライナ南部クリミア半島の編入について言及。「日本とウクライナは国際法に違反した力による国境の変更は容認できない立場を確認した。ロシアによるクリミアの違法占領について、日本の立場を発言してもらったことを高く評価している」と述べ、ロシアを強くけん制した。

これ、どうですか? 安倍総理は、プーチンと仲良くしたいんですよね?

ところで、プーチンはポロシェンコのことをどう思っているのでしょうか?

「親ロシア派ヤヌコビッチ大統領をクーデターで追放した、アメリカと欧州の傀儡政権で、ロシアの敵である!」

その敵に2,000億円もの血税をプレゼントする。ご理解いただけると思いますが、私はウクライナとの関係を深めることや支援に反対しているわけではありません。「プーチンの敵ポロシェンコと一緒にプーチンを批判し、2,000億円をプレゼントし、来月にはロシアを訪問し、『島を返してもらおう!』」と。そんな「虫のよすぎる話」が、この世にあるかというのです。

最近の日本外交の結果をまとめてみましょう。

  1. 安倍総理は、オバマの警告を無視し、訪ロすることで、日米関係を悪化させる
  2. 安倍総理は、プーチンにあって、「島返せ!」というだけなので、日ロ関係はよくならない
  3. 「プーチンと仲良くしたい」といいながら、敵ポロシェンコに会い、ともにロシアを非難し、2,000億円をプレゼントしたので、当然プーチンは、「安倍は信用ならん奴だ」と思っているはずである

結局、

良好になったのは小国ウクライナとの関係だけという、なんとも寒い結果なのです。

戦略不在

こういう外交の失敗はなぜ起こるのでしょうか? 戦前と同じで「戦略がない」のだと思います。「戦略」とは、「戦争に勝つ方法」という意味。そして、「戦略の重要ポイント」は、「優先順位をつけること」です。

たとえばアメリカ。第2次大戦のときは、宿敵ソ連と組んで、日本、ドイツと戦いました。戦後は、旧敵日本、(西)ドイツと組んで、ソ連と対峙しました。70年代には、戦いをさらに有利にするため、中国と和解しました。

日本には、こういう発想がない。それで、1937年に日中戦争が始まったとき、中国、ソ連、アメリカ、イギリスが、「みんな敵」になっていたのです。

こういう視点から現状を見てみましょう。アメリカ、ロシア、ウクライナ。この3国で、最重要は、軍事同盟国アメリカでしょう。次にロシアでしょう。最後のウクライナは、距離的にも遠く、実質破産国家であり、ほとんど何の関係もありません。

優先順位は

  1. アメリカ
  2. ロシア
  3. ウクライナ

であるはずです。ところが、日本政府は、

ところがその後、

結果、外国から見ると、日本政府の優先順位は、

  1. ウクライナ
  2. ロシア
  3. アメリカ

になってしまっています。

エゴ

もう1つの問題点はエゴです。エゴとは、「自己中心」という意味ですが。何かについて強く「欲しい」と思うと、冷静な判断力がなくなります。たとえば戦前、日本は、「世界を敵にしても満州国を建国する」と決意していました。そして、結果として破滅した。

今、総理は、「任期中に北方領土問題を解決する!」と決意しておられる。それはもちろんいいのですが、総理がそう思っても、プーチンが「嫌だ!」といったら、それまでです。それをゴリ押しすれば、ロシア側はうんざりして、日ロ関係はますます悪化するでしょう(実際、悪化しています)。また、「北方領土問題解決」にまい進することで、アメリカや他の国々との関係に無頓着になります。

というわけで、

という極めて常識的な方策が、今の日本には必要なのでしょう。

 

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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