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日本海の漂流ゴミに異変。北朝鮮から謎の「歯磨き粉」が相次ぐワケ

以前にくらべれば情報は入ってくるようになったとはいえ、未だ謎に包まれたままの北朝鮮人民たちの「本当の生活」。彼らの真の姿を、北朝鮮近現代文化や市井の人々の暮らしに詳しい元山梨学院大学教授で宮塚コリア研究所代表の宮塚利雄先生が、メルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』で明らかにしています。

日本海側に流れ着く北朝鮮の漂流物

日本海側には韓国や北朝鮮からの漂流・漂着物が大量に流れ着いているが、圧倒的に多いのは韓国からのもので、ペットボトル類などは代表的なものである。

漂流・漂着物からその国の工業発展の水準、生活水準などを知ることができる。北朝鮮からの漂流物にペットボトルやビン類などは少ない。これは、ペットボトルやビン類は飲料水ばかりでなく、醤油や油類などを入れる容器として珍重がられるためである。北朝鮮の漁民は韓国から北朝鮮へ流れ着く韓国のペットボトルやビン類を見て、韓国の技術水準が北朝鮮よりも優っていることを知る。北朝鮮の市場ではペットボトルやビン類が堂々と売られている

そんな中で北朝鮮の歯磨き粉が漂着しているが、これは珍しい。北朝鮮では歯磨き粉は市中にはあまり出回っていなかった。というのも、歯ブラシの製造が最悪で、ブラシは硬くてしかも並びが雑なので、歯磨きをするのに痛そうだし、第一、北朝鮮の歯磨き粉は「歯を磨くというよりは歯を削る」というような効果がある、と日本の歯磨き粉メーカーが分析したことがある。さらに、歯ブラシの柄も折れそうにヒョロヒョロしており、よく日本のビジネスホテルなどにおいてあるものに似ており、歯を磨くにも磨きづらいということもある。

代表的な歯磨き粉に「60チョンチュン」や「ペクチョ(白鳥)」「コリョインサム(高麗人蔘)」などがある。「60チョンチュン歯磨き粉」は文字通り、「60になってもチョンチュン(青春)」ということで、「歯を丈夫にして長生きしよう」ということで、北朝鮮の平均寿命が60歳であることを示している。「白鳥歯磨き粉」は「白鳥のように歯を白く」ということで、歯を磨くことはイコール歯を白くする、ということであるが、歯を磨くのは歯を白くすることもあるが、歯を清潔にする、という第一義的な目標を通り越している。

「高麗人蔘歯磨き粉」は「高麗人蔘」と名付けただけあって、朝鮮ニンジンの香りを配合した「高級歯磨き粉」であることを示している。

中朝国境踏査をした時に、北朝鮮に親戚訪問した朝鮮族から「歯磨き」に関する興味深い話を聞いたことがある。朝ご飯を食べて歯を磨こうとしたが、歯ブラシと歯磨き粉を忘れてきたことに気付いた。そこで「貸してほしい」と言ったら、「そんなものはわが家にはない」と言われたという。北朝鮮の人はろくに歯も磨かないのかといぶかしがりながら「歯はどうやって磨くのか」と聞いたら、家の主人は傍にあった薄黒い塩を指さして「あれでこうやるんだ」と指で磨く真似をしたという。手を洗った石鹸は黒ずんでおり、かすかに魚の臭いがしたという。この石鹸は鰊カスなどで作った石鹸で、日本にも戦前はこのような石鹸はあった。

日本海側に流れ着いた歯磨き粉は漁師と軍人が物々交換したものと思われる。金正日が軍部隊を訪問した時に、軍人たちの歯並びなどがよくないことに気づき、歯磨きを徹底するように指示し、歯ブラシと歯磨き粉を軍隊に優先的に配給するようにした。このため、市中にあまり出回らない歯ブラシと歯磨き粉も軍隊にはありそれを漁師が獲ってきた魚と交換したのである。

北朝鮮でも最近は新しい歯ブラシや歯磨き粉を生産しているが、その量は決定的に少なく、平壌市内には「歯科病院」も少なく、地方では「歯医者がいないところもあると聞いたことがある。ミサイル発射や核実験を「科学技術の発展の成果」と金正恩は言っているが、科学技術をもっと「民生活向上」のために利用してもらいたいものである。

宮塚コリア研究所代表 宮塚利雄

image by: Shutterstock

 

宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』より一部抜粋

著者/宮塚利雄
元山梨学院大学教授、現宮塚コリア研究所代表。テレビなどのメディアでは決して話せない北朝鮮やアジアに関するマル秘情報、長年の研究対象である焼肉やパチンコだけではなく、ディープな在日朝鮮・韓国社会についての見識や朝鮮総連と民団のイロハなどについても語ります。
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