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日本発「パンツ界のエルメス」はいかにして海外ブランドを蹴散らしたか?

「パンツ界のエルメス」を目指すという強烈なメッセージで注目を集める男性用アンダーウェアメーカーの「TOOT」(トゥート)。そのメッセージには経験に裏付けられた高度な技術や縫製に対するプライドが込められていました。無料メルマガ『MBAが教える企業分析』では、競合と一線を画する「TOOT」のユニークな戦略を紹介しています。

強力なメッセージ

今回は「パンツ界のエルメス」を目指している人気の企業を分析します。

TOOT(国産メンズアンダーウェアメーカー) 

戦略分析

■戦場・競合

・戦場(顧客視点での自社の事業領域):男性用高級アンダーウェア(男性用高級パンツ)
・競合(お客様の選択肢):ユニクロなどのファストファッションブランドや海外のデザイナーズブランドなど
・状況:市場規模はここ数年、縮小傾向のようです。

■強み

1.長持ちする(高い耐久性)

・何度も洗濯した後でも、だらしなく伸びない

2.履き心地がいい

・厳選された生地を使用
・ゴワツキの少ない肌触りの良い縫製

3.豊富なラインナップ

・スポーティーでセクシーなデザインなど、多彩なデザイン
・週に1回は新作をリリース

 ⇒上記の強みを支えるコア・コンピタンス

★「確かな縫製技術」と「縫製に対するプライド」

・国内自社工場の熟練した日本人職人による、確かな縫製技術
→ほつれにくいように下着には滅多に使わないカン止めを至る箇所に打っています。
・縫製に対するプライド
→通常2から3本針のミシンで接ぎ合わせるところを4本針ミシンで仕上げることにより、生地全体を平坦に縫い合わせるので、ゴワツキの少ない肌触りの良い縫製になります。

上記のような技術やプライドがあるからこそ、強みを実現できているといえます。

■顧客ターゲット

・見えないおしゃれを重視する男性
・下着にこだわりのある男性

◆戦術分析

■売り物

男性用アンダーウェア(パンツ)

・ベーシック
→シンプルだけど、格好いいパンツ
・ボクサーパンツ
→身体のあらゆる動きにフィットするため、 普段履きはもちろん、スポーツのインナーにも適しています

その他、トランクスやメンズビキニもラインナップ

■売り値

3,000円~4,000円くらい

■売り方

・新宿伊勢丹でパターンオーダー会開催
→シリアルナンバー入りのオリジナルボクサーパンツを作ることができます。
・キャラクターとのコラボ
→ハローキティやウルトラマンとのコラボパンツを発信

■売り場

・伊勢丹、三越、丸井などの百貨店で販売
・カナダ、フランスなど海外の店舗でも販売
・ネットでは自社サイトや楽天などで販売

※売り値や売り物は調査時の情報です。最新の情報を知りたい場合は、企業HPなどをご確認ください。

まとめ(戦略ショートストーリー)

見えないおしゃれを重視する男性をターゲットに「確かな縫製技術」や「縫製に対するプライド」に支えられた「長持ちする」、「履き心地がいい」という強みで差別化を実現しています。

男性用アンダーウェアを高価格で百貨店など高級品を扱う店舗で販売している。つまり、売り物、売り値、売り場の整合性をとることで、消費者の支持を得ています。

分析のポイント

「強力なメッセージ」

「パンツ界のエルメス」を目指すと聞いて、どう思いました? 私は「おもしろい発想」と思ってしまいました。パンツに特化した高級ブランドという発想はなかったですからね。私と同じように消費者目線から見ると「おもしろそう」と思った方も少なくないと思います。

では、パンツを扱う競合の方が聞いたらどう思うでしょうか。ただ注目を集めるための奇策だと思って相手にしなかったり、冗談だと思って聞き流してしまう方もいるかもしれません。

差別化とは、要は「競合と異なる価値を強みとして戦う」ことですが、競合から冗談だと思われるくらいの価値を提供することは差別化につながりやすいです。なぜなら、競合が相手にしないということは、競合として「認識していない」、「提供している価値が重ならない」ということであり、これは、「競合とは異なる価値を提供している(=差別化)」ということを意味するからです。

そして、その提供価値を求める顧客がいるという前提ですが、競合とは明らかに異なる価値を提供していれば、顧客から見ても、提供価値の違いがわかるようになりますので、差別化できていると言えるでしょう。

また、従業員から見て、社長から「パンツ界のエルメス」を目指すと言われたらどう思うでしょうかね。人によるとは思いますが、とてもイメージのしやすいメッセージですし、元々、尖った印象の会社ですから、わくわくする方や熱くなる方もいらっしゃるかもしれません。逆にこのメッセージを受け入れられない、合わない従業員の方は、離れていくのではないでしょうか。

つまり、このメッセージは目標達成のための組織の一体感を高める効果もあるということです。なぜなら、ビジョンに共感できる方が社内に残り、共感できない方が離れていき、共感できる方が採用されることになると組織としての一体感は高まるためです。もちろん、ビジョンに共感できる方々が適材適所に配置されることも非常に重要となります。

以上のように、強力なメッセージは「消費者」や「自社の戦略」、「従業員」にも影響を与えるということです。恐らく、TOOTの社長はこれらを意図して、このメッセージを発信しているのでしょう。

今後、TOOTが「パンツ界のエルメス」のような存在になれるのか楽しみですし、日本発のブランドとして非常に期待しています。

image by: TOOT 公式HP

 

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