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メンツを捨てて巨利を得る。米「鉄鋼王」カーネギーが魅せた交渉術

交渉の際に「絶対にこれだけは譲れない」というこだわりを持って臨むことは多いかと思います。しかし、無料メルマガ『弁護士谷原誠の【仕事の流儀】』では、その「メンツ」によって不利な条件に追い込まれることの危険性を指摘するとともに、メンツを捨てて利を取ったアメリカの鉄鋼王・カーネギーのエピソードを紹介しています。

メンツをとるか、利をとるか?

こんにちは。弁護士の谷原誠です。

交渉では、金銭や納期等をはじめ、さまざまな条件で駆け引きが行われます。その諸条件について、双方がいかに歩み寄りできるかによって合意できるか否かが決まります。

条件となるのは金銭等のように、数字で計算可能なものだけではありません。中でも、意外と大きいものに「メンツ」があります。メンツは、代理人として交渉実務に当たる弁護士にとって難問のひとつ。メンツは当事者の感情から発するものであり、第三者にはわかりにくいからです。

私たちの仕事は、依頼人の利益が最大になるような条件を引き出すことなのですが、思ってもみなかったところで

「それではメンツが立たない」
「この条件だけは何があっても譲れない」

依頼者のこだわりが入ります。いくら「こうしたほうが得ですよ」と説明しても納得してもらえないことがあり、私たちは苦悩することになるのです。

さて、交渉におけるメンツについて思い出すのが「鉄鋼王」と称され、米国の実業家、慈善事業化としてもその名を遺す、アンドリュー・カーネギーのエピソードです。

カーネギーの会社は、ある地域で、鉄道車両の売り込みを行っていました。ライバルとなったのは、こちらも大物実業家のジョージ・プルマンの経営する会社。激しい価格競争によるシェア争いを繰り広げ、消耗戦の様相を呈していました。

そこでカーネギーは、プルマンの会社と合併し、新会社を設立することを思いつきます。そうすれば、企業間の激しいシェア争いを避けることができます。かくしてカーネギーとプルマンは、合併に向けた交渉の席に着きました。

このとき、プルマンも合併には反対ではありませんでした。しかし、彼には気がかりな点が一つありました。それは金銭面の問題ではなく、新会社の「社名」が何になるかでした。そのことを見抜いたカーネギーは、プルマンから、

「ところで、社名ですが…」

と切り出されたとき、すぐさま「プルマン・パレス車両会社にしましょう」と提案します。そこから交渉はトントン拍子に進み、合併が実現。新会社は大きなシェアを取り、カーネギーは巨大な利益を得ることになりました。

このようにメンツの問題は、交渉において非常に重要な要素となります。カーネギーは、相手の心理を読み、相手のメンツを立てることで実利を取り、自分が思う通りの結果を得ました。逆に、交渉でメンツにこだわることにより、ほかの条件をすべて丸呑みしなくてはならなくなることもあります。

私は、メンツやプライドを大切にすることを否定するわけではありません。ただし、交渉において絶対に譲れないメンツの問題がある場合、それが不利な材料になる可能性が高いことはあらかじめ覚悟しておかなければなりません。

交渉前には、そのメンツがどれほど重要なもので、代わりに飲まされる可能性のある不利な条件に、どこまで譲歩できるのか、ということをあらかじめ検討しておく必要があります。

メンツは感情の問題ではありますが、交渉におけるリスクについては論理的に検討することが求められるのです。

今回は、ここまでです。

image by: Shutterstock

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【著者】 谷原誠 【発行周期】 不定期

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