安部総理がリスクを負ってまで衆院を通した安保法案が役立たずになる―。こんな指摘をするのは、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で国際関係アナリストの北野幸伯さん。集団的自衛権は日本にとってアメリカありきのものとも言われますが、そのアメリカが日本に激怒しているかもしれない、というのです。果たしてなぜ!?
オバマから見た、わけのわからない国日本
皆さんご存知のように「安保関連法案」が衆院を通過しました。この件でたくさんご質問をいただいております。
しかし、「安保関連法」「集団的自衛権行使容認」については、ダイヤモンド・オンラインさんの2つの記事で書き尽くしています。いろいろモヤモヤしている方は、こちら2つをぜひご一読ください。
●「集団的自衛権」行使容認は日本の「安全」のため 戦争準備に入った中国を牽制する唯一の道
「安保関連法案」が成立すると、日本は「集団的自衛権」を行使できるようになるのですね。それで大騒ぎしているのですが、「集団的自衛権」は、国連ですべての国に認められている「権利」です。
ウィキから。
集団的自衛権とは、ある国家が武力攻撃を受けた場合に直接に攻撃を受けていない第三国が協力して共同で防衛を行う国際法上の権利である。
その本質は、直接に攻撃を受けている他国を援助し、これと共同で武力攻撃に対処するというところにある。
日本も当然この権利を有している。
しかし、「集団的自衛権は憲法に違反していると解釈していた」ので、自ら封じていた。
ところが、今回政府は、「他のすべての国々同様、日本も集団的自衛権を行使することができると『解釈しなおした』」。
賛否両論あるでしょうが、解釈しなおした結果、日本は事実として
「他のすべての国ができることを、できるようになる」
それだけのことなのです。
本題に入ります。
というわけで、「集団的自衛権行使容認」は、「日本が他国と同じになる」ということ。
それ自体、問題ではないのです。
問題は、第2次大戦時同様、国のリーダーたちが、
- 世界で起こっていることを知らない
- 大局が読めない
- 相手国の意図がわからない
- 相手国の立場にたって考えられない
ということ。
今回は、オバマさんの気持ちをシュミレーションしてみました。
もちろん、フィクションですが。
>>次ページ オバマ氏が「イェス、ウィ~キャン!」を連発した出来事とは?
2013年12月26日
補佐官「ミスタープレジデント! 安倍総理が靖国参拝を決行しました!」
オバマ「なに~~~!! ジョー(バイデン)は、『安倍を脅しておいた !奴はいかないよ』といってたぞ!」
補佐官「副大統領の警告は、無視されたようです」
オバマ「属国の長が! 奴は、真正の歴史修正主義者だな!」
2014年3月
補佐官「ミスタープレジデント! プーチンがクリミアを併合しましたぞ!」
オバマ「なに~~~!! 制裁だ、制裁! プーチンに思い知らせてやる!」
補佐官「どの国と一緒に制裁しますか?」
オバマ「EUとオーストラリア、そして…。ち! 仕方ない日本も制裁に加わってもらおう」
2015年3月
補佐官「ミスタープレジデント! イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、イスラエル、オーストラリア、韓国などなどが、次々と『AIIB』への参加表明をしていますぞ!」
オバマ「なに~~! おまえ、ちゃんと首脳たちを脅迫したのか?」
補佐官「はい! びしっと脅迫しましたが、完全に無視されました」
オバマ「すべての親米国が裏切ったということか?」
補佐官「いえ! 日本だけは参加を表明していません」
オバマ「アイラブシンゾー! 俺は、彼のことを『右翼』『軍国主義者』『歴史修正主義者』と誤解していた。俺は、中国のプロパガンダに騙されていたのだ。」
2015年4月29日
米国国民を代表する皆様。
私たちの同盟を、「希望の同盟」と呼びましょう。
アメリカと日本、力を合わせ、世界をもっとはるかに良い場所にしていこうではありませんか。
希望の同盟──。
一緒でなら、きっとできます!
オバマ「イェス、ウィ~キャン! イェス、ウィ~キャン! イェス、ウィ~キャン! イェス、ウィ~キャン!」
補佐官「久々ですな。そのフレーズ」
オバマ「イェス、ウィ~キャン! アイラブシンゾー。これで、中国に思い切って反撃できるぞ! なんか中国をバッシングできるネタはないか?」
補佐官「南シナ海埋め立て問題はいかがでしょうか?」
オバマ「イェス、ウィ~キャン! それでいじめよう」
2015年5月
補佐官「わが国は、『南シナ海埋め立て問題』で中国をいじめています。オーストラリアも欧州も同調し、中国は追いつめられています。米中関係は、どんどん悪化してきました」
オバマ「それでいい。ところで、われわれの『希望の同盟国』日本はどうしてる?」
補佐官「……それが…」
オバマ「どうした? さっさといえ!」
補佐官「日本政府は、3,000人の訪中団を派遣しました。習近平が直接会って歓待し、日中関係は改善されつつあります!」
オバマ「なんだと!? シンゾーの奴、同盟国のアメリカ合衆国が、中国をいじめているときになんだって、中国と関係改善してるんだ?」
補佐官「私もわかりません。キッシンジャーは、『ジャップは最悪の裏切り者だ!』とコメントしていましたが……」
オバマ「う~~む。俺にもシンゾーの気持ちがまったくわからない。とにかく、『希望の同盟演説』は口先だけの大嘘だったことは間違いなさそうだ」
補佐官「そうみたいですね」
オバマ「とりあえず、中国と和解して、戦略を練り直そう」
なぜ?
私は、なぜこのようなことを書いたのでしょうか?
外国から見ると、日本政府の動きは、全く理解不能なのです。せっかく苦労してアメリカとの関係を強固にしたのに、なぜぶち壊すようなことをするのでしょうか?
なぜ同盟国が中国と戦っているときに、日本は敵との関係を改善するのでしょうか?
外国人には、理解不能。
しかし、日本人である私にはわかる気がします。
なぜ、日本は、中国との和解にむかったのか?
そう、中国側が「日本と関係改善したい」と「シグナル」と送ってきたからでしょう。
日本は「和をもって尊しとなす」なので、アメリカのことなどコロッと忘れて「仲良くしましょう」となった。
そんなお人よしなので、「世界遺産問題」で韓国にだまされるのです。
「安倍総理9月に訪中か?」
新聞は報じています。
私は、まず「希望の同盟国」アメリカと相談することをお勧めします。
アメリカとの信頼が破壊されれば(すでに破壊されているが)」安保関連法案」も「集団的自衛権行使容認」も役に立ちません。
アメリカはそのうち、「中国と組んでまず日本をつぶそう」となるかもしれません。
かつて、宿敵ソ連と組んで、日本・ドイツをつぶしたように。
『ロシア政治経済ジャーナル』
著者/北野幸伯
日本のエリートがこっそり読んでいる秘伝の無料メルマガ。驚愕の予測的中率に、問合わせが殺到中。わけのわからない世界情勢を、世界一わかりやすく解説しています。
≪登録はこちら≫