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利権のドロドロ追求…小池都知事はなぜ14人のブレーンを入れたのか?

小池都知事の就任から1カ月、早くも築地移転問題で世間を騒がせています。無料メルマガ『ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」』では、外部のブレーンを迎え入れたのは都民ファーストを実行しようとする小池都知事の強い意思の表れであると高く評価。東京オリンピックに関しては、森喜朗氏をはじめとする大物にどこまで立ち向かえるかが今後の見どころであるとしています。

小池都知事とブレーン

本日は、就任から1ヵ月。小池都知事についてお話したい。この間、オリンピックの問題や築地の移転問題など、短期間に相当話題を振りまき、毎日のように新聞やテレビに登場し話題をよんでいる。

その中でも、築地移転延期と同時に都政改革本部を発足し14人のブレーンが入ってきたことが特に話題となっている。9月1日に第1回都政改革本部会議が行なわれたが、今後このブレーンと副知事や局長ら30人あまりで東京のこれからを話合い、決めていくようだ。

14人の外部ブレーンの顔ぶれ

14人の顔ぶれを見ると、統括をするのは非常に有名な経営コンサルタントの上山信一氏慶應大学教授)。運輸省(現在の国土交通省)を経て、コンサルタント会社「マッキンゼー」に勤務し、企業経営改革を手がけた。2008年に橋下氏が大阪府知事に就任すると特別顧問として迎えられ、赤字財政だった大阪府政の再建に尽力。11年ぶりに黒字決算で人件費を抑制し、約3%歳出を減少させた

小池都知事はオリンピックの無駄を見直すと明言しているので、そういう意味からもそこに大阪流で斬りこむ狙いがあるのだろう。私は上山氏に2、3度あったことがあるが、コンサル的に物事を論理的にきちんと話される方。大阪の橋下氏の下で改革されているので、大阪維新の色がついている可能性があるという懸念はあるかもしれない。

原則に合わせた問題解決

今回の都政改革本部のメンバーには弁護士、税理士、企業の顧問など幅広い人を集めているように思う。他の主なメンバーとして、小池都知事が環境大臣在任中に環境省の地球環境審議官を務めた小池都知事の懐刀である小島敏郎氏、弁護士の加毛修氏、都知事選の時にサポートした若狭氏と同じ弁護士事務所に属する弁護士の坂根義範氏、シャープの社外監査役を務める須田徹氏などがいる。

このように有識者を集め、当面は築地の問題とオリンピック問題の改革をしていくだろう。小池都知事の偉い所は、都民ファースト情報公開税の有効活用といった原則に合わせてこれらの問題がうまく解決できるかどうかということを表明している点だ。築地に関しては9月中旬くらいまでに中間報告を出すことも表明している。

日本の将来構想の礎

このようにブレーンを集めることを遡ってみると、大平内閣を思いだす。大平氏は1978年12月に総理に就任し、その翌年79年に「大平構想」を発表。79年は第二次石油ショックの最中で、日本がこれからどう動くのかということを非常に皆心配していた。その時、大平氏は官邸にいると世間が狭くなる、裸の王様にならない為にはいろんなブレーンを集めた方がいいという考えの基、200人近い学者等のメンバーを集めた。

香山健一氏牛尾治朗氏など、その後ブレーンに欠かせない人たちがメンバーとなった。「大平構想」では、田園都市構想、環太平洋連帯構想、総合安全保障構想や財政問題構想などの9つの委員会を作った。これはそれまでのブレーン政治とは違った今後の新しい日本の将来を考える構想の基になったことが大きく、民間活用ということもはっきり出ていた。

この大平氏が集めたメンバーはその後、中曽根政権下でも引き継がれる。前川春雄・元日銀総裁らによる「前川リポート」が出来たり、細川政権下では平岩外四・元経団連会長を座長とする平岩委員会にて「平岩リポート」を作って、規制緩和の流れを作った。役所の意見をバックアップするというより、日本全体の構想を考える委員会を作っていったというのが、「大平構想の大きな特色である。

過去の国政にヒントを得る!?

小池都知事もそれに類するような形でブレーンを考えたのではないかと思うが、14人のブレーンを引き連れてとなると都の職員も身構えてしまう。そんな中、小池都知事は「私たちは戦後のGHQとして都庁に乗り込んでいるわけではなく、外部から連れてきた人によって全てを決めるわけではない」と表明し、副知事や幹部も含め皆で議論しようとしている。原則の都民ファースト、情報公開、税の有効活用に合わせ、外部から来た人たちだけで決めるというものではないということの表れなのだろう。

今後の行方に注目

それがどこまで説得力を持ち素直に聞いてもらえるのかというのがポイントだと思う。オリンピック問題でいうと森喜朗氏やJOCの竹田恒和氏との関係をうまくやっていけるかどうか、実に難しい。森氏と小池都知事は因縁の仲。また、竹田氏が承認したコンサル料2.3億円は違法性はないということになったが、無駄な予算をどうやって削減していくかということを掲げており、このあたりにどう斬りこんでいくのかというのも大きい。

都知事選で小池氏を応援した元検事の若狭氏の仲間が今回のメンバーに入っていることから、どこかで衝突する可能性はある。

今は都民の支持をバックにしてやっているが、これがうまくいかなくなり小池都知事の支持が下がってくると小池都知事は孤立する可能性もある。今、小池都知事は孤立しないように都民ファーストといった原則を決め、それに基づきながら行なうことで論理を取ろうとしているのだろう。なかなか面白い戦いだと思う。

※参考資料:東京都のホームページ:活動紹介「第1回都政改革本部会議」

(TBSラジオ「日本全国8時です」9月6日音源の要約です)

image by: 東京都

 

ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」
ジャーナリスト嶌信彦が政治、経済などの時流の話題や取材日記をコラムとして発信。会長を務めるNPO法人日本ウズベキスタン協会やウズベキスタンの話題もお届けします。
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