第1四半期営業利益が過去最高の1,342億円を記録するなど、好調さを見せつけるスバル。無料メルマガ『MBAが教える企業分析』では、同社の戦略・戦術を詳細に紐解きつつその成功の理由を分析しています。
戦略をいかにして実行させるか
今回は顧客ターゲットを変更することで、更なる成長を図っている企業を分析します。
●今回の分析対象企業⇒スバル(富士重工業)
戦略分析
■戦場・競合
- 戦場(顧客視点での自社の事業領域):クルマ
- 競合(お客様の選択肢):トヨタ、ホンダ、マツダなどの国内勢、フォルクスワーゲンなどの海外勢など多数
- 状況:国内市場は右肩下がり。
■強み
- 安全(ぶつからないクルマ)
⇒独自技術のアイサイトにより予防安全評価及び衝突安全評価で最高ランクを獲得している。さらに、渋滞でも楽に運転でき、高速道路の運転では車線中央維持機能が働くため、運転を助けてくれる。女性も安心して乗れるクルマであると言える。 - 運転しやすく、乗り心地が良い
⇒独自技術により高い走行安定性を実現しており、坂道や曲り道も苦にならない。
■顧客ターゲット
- アウトドア好きなファミリー層
家族で乗るからこそ安全性を重要視する。
戦術分析
■売り物
家族を乗せるクルマ
- アウトバック(SUV:スポーツ・ユーティリティ・ビークル)
- レヴォーグ
⇒顧客ターゲットに合わせて、売り物を展開。
■売り場
- 国内スバルの4割を、利用シーンを演出した売り場へ変更
⇒売り場に人工芝を敷き、川や岩、木、テント、カヌーなどをクルマの近くに配置しスバル車のあるアウトドアライフを提案。
■売り方
- キャッチコピー
顧客ターゲットに合わせて変更
「安心と愉しさを SUBARU」
「クルマは人生をのせるものだから」
「そのクルマはあなたの人生を高めていく」 - TVCM
前は車種や技術を連呼していたが、現在は家族愛をテーマにクルマを介した家族との絆を訴求しており、笑顔を前面に出すよう意識している。 - 販促
「スバルネクストストーリー」と題した釣りやスキー登山、自転車などのアウトドアイベントを企画しスバル車で出掛ける愉しさを訴求する(クルマの話はしない)。 - 試乗
以前は店の近くを回る程度であったが、アイサイトの売りである車線中央維持機能や車間距離を保つ機能を実感してもらうために高速道路での試乗を実施している。
まとめ
マニアを中心にした顧客ターゲットでは先細りが避けられないことを見越して、新たな顧客ターゲットを取り込んだと推察されますが、自社の強みが活きる顧客ターゲットを選択し、フルラインで商品を揃える競合との違いを明確にする戦略をとることで、自分たちのポジションを確立することに成功しているといえます。
スバルは大手と戦うために、顧客ターゲットを絞って、その絞った戦場でNo.1を目指しています。もちろん勝算があるからこそ、現場からの反対を押し切って、売り場展開を変えるなど振り切った行動がとれているといえます。また、リソースも限られており、大手のように全ての顧客のニーズに応えることはできませんので、一点に集中し、その一点で勝つというのは、理にかなった戦略をとっているといえます。
課題は独自の技術であるアイサイトに他社が追いついてきていることです。売り物の差が無くなってきますと、スバル車の独自性が薄れることに繋がることが懸念されます。今後は新しい技術開発ももちろん重要ですが、アウトドア好きなファミリー向けブランドとしての地位をしっかりと確立することが重要です。そのために、他社が真似しにくい顧客ターゲットを絞った売り場展開の徹底やアウトドアブランドとの連携などもおもしろそうです。
分析のポイント
戦略の変更に合わせて戦術も変化しているか? スバルは顧客ターゲットを変更しましたが、それに合わせて戦術も変化させていることが、当たり前のようですごいことです。
多くの企業では、戦略を変えても、現場はそのままということがよくあります。つまり、戦略が絵に描いた餅となってしまうのです。スバルではそうならないために、社長が売り場展開など、どんどん試行錯誤するよう若手を鼓舞しているようです。戦略をいかにして実行させるかは企業経営のカギのひとつといえますが、スバルはそれを実践しているといえるでしょう。
image by: SUBARU OFFICIAL WEBSITE
『MBAが教える企業分析』
本メルマガをとおして、ビジネスパーソンにとって重要となる企業分析能力を磨くことであなたの価値向上のお手伝いができればと思っています。
<<登録はこちら>>