「自分の会社、お店がどの戦場で戦うのかという定義づけは、ひとりよがりにならないためにも非常に重要である」とするのは、無料メルマガ『MBAが教える企業分析』の著者・青山烈士さん。そんな青山さんが今回注目したのは、創業60年のパン屋さんが打って出た新たな戦場で成功を収めつつある「メロンパン専門店」です。はたしてこのお店、どのような戦略・戦術で存在感をアピールしているのでしょうか。
どこで戦うのか?(戦場はどこか?)
メロンパン専門店で注目されている企業を分析します。
● メロン・ド・パーネ(メロンパン専門店)
「メロン・ド・パーネ」は創業六十年の歴史を持つ群馬県のパンメーカー「グンイチパン」のメロンパン専門ブランドです
戦略ショートストーリー
メロンパン好きな方をターゲットに群馬県のパンメーカー「グンイチパン」のノウハウに支えられた「豊富な種類の美味しいメロンパンが楽しめる」という強みで差別化しています。
材料、味に妥協せず、完成度の高いメロンパンを提供することはもちろん、継続的に新商品をリリースすることで、顧客の支持を得ています。
■分析のポイント
どこで戦うのか?(戦場はどこか?)
「メロン・ド・パーネ」は、どこで戦っているのかというと、「グンイチパン」は「メロン・ド・パーネ」をメロンパン専門店として出店していますが、「スイーツ好きのパン屋さん」と看板にも書かれているとおり、主にスイーツの戦場で戦っています。要するに、自分たちをただのパン屋ではなく、スイーツのお店と位置づけたということです。
一般的なパン屋は、食パンやサンドイッチ、総菜パン、菓子パンなど様々なパンを取り揃えていますが、多くの顧客はパンを食事(主食)として購入しています。ということは、パン屋の競合は、パン屋だけでなく、ご飯類を扱うお店や麺類を扱うお店などが競合になりえます。例えば、今日のお昼は、パンにしようか、弁当にしようか、ラーメンにしようかなどと、顧客の頭のなかに浮かんだ食事の選択肢が競合になります。
では、スイーツのお店の場合、基本的に主食ではなく、おやつ(軽食)になるでしょう。スイーツが主食の方もいるかもしれませんが…。おやつということは、お菓子やコンビニ各社が力を入れているコンビニスイーツ、コージーコーナーなどの洋菓子店が競合になりそうです。自店の位置づけを変えるだけで、戦う相手(競合)が大きく変わっていますね。
つまり、「グンイチパン」は「メロン・ド・パーネ」という新しいお店を通じて新しい市場(戦場)に打って出たということなのです。言い換えれば、「グンイチパン」にとって、「メロン・ド・パーネ」が新たな成長の機会になると判断したということです。
今回の事例のように自社・自店がどこで戦うのかを定義づけすることは非常に重要です。なぜなら、戦略上、どこで戦うのかが「あいまい」であるということは誰と戦うのか(競争相手)も「あいまい」ということになりますので、競合との差(強み)を示すことが困難になります。あたりまえですが、このような「あいまい」な戦略では、競争優位を築くことはできません。
そして、顧客が自社・自店をどうみているかも重要になります。自分たちはスイーツのお店だと思っていても、顧客が同じように思っているとは限りません。ですから、ひとりよがりにならないように、顧客の視点も考慮しつつ自社・自店の戦場を定義することが求められます。
「メロン・ド・パーネ」はスイーツ好きの方に人気の店となっているようですので、しっかりと戦場を定義づけできているといえるでしょう。FC展開もしていくようですので、今後、店舗数が増えていくことを楽しみにしています。
◆戦略分析
■戦場・競合
- 戦場(顧客視点での自社の事業領域):スイーツ好きのパン屋
- 競合(お客様の選択肢):周辺のパン屋、洋菓子店、コンビニ など
- 状況:国内パンの市場規模は横ばいのようです。
■強み
「豊富な種類の美味しいメロンパンが楽しめる」
- 本当に美味しいメロンパンを追求した「メロンパン専門店」だから味わえる感動の味。
- いままでのメロンパンとはひと味違う。
★上記の強みを支えるコア・コンピタンス
「群馬県のパンメーカー『グンイチパン』のノウハウ・文化」
- 創業60年の歴史。メロンパンの歴史こそグンイチの歴史。
- カリカリメロンパンは「全日本パンフェスティバル~日本全国ご当地パン祭り~」にて3位に入賞した実績を持っています。
上記のようなノウハウ・文化が支えているからこそ、強みを実現できているといえます。
■顧客ターゲット
- メロンパン好きな方
- スイーツ好きな方
◆戦術分析
■売り物、売り値
「メロンパン」
- カリカリメロンパン(150円)
→クッキータイプでミルク風味。外はカリカリ、中はしっとりふんわりのメロンパン - メロンド・ゴールド(150円)
→里はサクサクのサブレタイプ、中はふんわりパン生地 - 生クリームメロンパン(150円)
→とろけるおいしさがクセになる!プレーン・チョコ・抹茶の3種類 - メロンド・セバスチャン(170円)
→赤砂糖を使って、発酵バター風味の自家製フィリングを閉じ込めたほどよい塩味 - メロンド・シュー(220円)
→絶品メロンパンの皮とシュークリームが合体。注文を受けてからクリームを入れます。
他多数のメロンパンを品揃えしています。
■売り方
売り文句:「スイーツ好きのパン屋さん」
- 毎月12日はメロンパンの日
→カリカリメロンパン、メロンド・ゴールド、メロンド・セバスチャンの人気メロンパン3種が100円(税込)
■売り場
- 埼玉県に4店舗、群馬県高崎市に1店舗(高崎市の店舗のみイートインコーナー有り)
- 個性豊かなキャラクターたちが迎えてくれます
- パンの楽団「メロンパンケストラ」が奏でる音楽が流れています
※売り値や売り物などは調査時の情報です。最新の情報を知りたい場合は、企業HPなどをご確認ください。