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「それって普通じゃねえか」苦しい時に読みたいビートたけしの一言

人生は山あり谷あり。良い時もあれば、つらい時もあるものです。それは誰でも同じと思っていても、スランプの時って気持ちに余裕がなくなって、どんどん自分を追い詰めてしまいがちですよね。今回のメルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』では、著者で米国の邦字紙「WEEKLY Biz」CEO 兼発行人の高橋さんが、ビートたけしこと北野武さんにインタビューで聞いたという、「ある話」をご紹介します。

苦しいときに思い出す話

なかなか厳しいご時世になってきました。 新大統領の話ではありません。 いや、関係なくはないのかな。 中小企業、、いや、零細企業の経営者であることに(今年で16年目)いつまで経っても楽にはならないなぁと、じっと手を見るな日々です(笑) 特に海外での現地企業なので、安定することなんてこの先もないのだろうなと達観しています。

こんなに大変な日々が待っていると最初からわかっていたなら、自分は経営者になっていたでしょうか。 わからない。 それでも経営者の道を選んだかもしれないし、選ばなかったかもしれない。 優柔不断なんです。 当然、いいことも、悪いこともある。

窮地に陥った際、人は自己啓発本に頼ったり、歴史上の人物の伝記にインスパイアされたり。 そこに書かれている言葉から、なんとか苦境を乗り越えようとするするビジネスマンも多いと聞きます。 実際、僕の知り合いで 話題の自己啓発本を買いあさり、そこから気に入ったフレーズを抜き出した、フレーズ集を一生懸命ノートに書き写している社長さんもいます。 (でもいつしか書き写すこと自体に忙しくなり、見返す時間がないのだとか。 意味ゼロ)

僕といえば、苦しいとき以前インタビューしたある人のある話を思い出すようにしています。

それはいわゆる、ポジティブで、日めくりカレンダーに書いてあるような“ありがたいお話”ではありません。 仏教用語のような達観した悟りの境地なお話でもありません。

もっと、もっと、俗っぽくて、なんというか、「そりゃそうだよなと苦笑い出来て、で、とりあえず明日から頑張ろうとため息まじりで思えるようなお話です。

話題の自己啓発本や、ビジネスセミナーのほうが、ずっと論理的で、自己を鼓舞できるようなお話を聞けると思いますが、早々、年中、ポジティブシンキングになってらんない。 ポジティブシンキングになること自体がシンドイなぁと思うとき、僕は今から2年半前にインタビューした北野武さんのある話を思い出し、少しだけ、気がラクになるようにしています。

映画監督でなければ何の職業をしたかったですか?

そう質問した時、彼が天井を向いて「野球選手かなぁ、、、」と 答えたときにしてくれた話です。 次のような内容でした。

おいらの時代はやっぱり(憧れは)長嶋(茂雄)さんだよね。 。 。 なので、ジャイアンツの選手になりたかったって(その質問には)答えるんじゃないかな。 。 で、もし神様が選ばせてくれるんなら、やっぱり巨人の4番(バッター)で、一年目から3冠王獲っちゃうの(笑)

“脅威の新人”“長嶋の再来”って感じで騒がれちゃってさ。 で、1年目からずーっと打率、打点、ホームランで1位とって、デビューから、4年連続くらいでMVPを獲っちゃうようにしてもらう(笑)

、、、、でもさ、結局、それだけ打っちゃうと飽きられちゃうんだよね。 。 。 観客にも、たぶん、自分自身にも。 ずーっと打ち続けて、アイツつまんねえなって言われちゃうわけ。 なので、5年目くらいから、わざとスランプにしてもらうの(笑)神様に。 ドラマチックな演出で、全然ダメな年も入れちゃうわけ。 でさ、世間に「あいつはもう終ったな」って思われたその翌年くらいから、また復活しちゃうの。 で、またMVPを獲る活躍をして、世間を飽きさせないようにする(笑)

バッティングのジェスチャーを交えながら、武さんは嬉しそうに自身のもうひとつの人生を語ってくれました

そして、ひととおり答えた後静かにこう締めくくりました

でもさ。 それって、結局、普通の選手だよね(笑) 調子のいい時もあって、調子の悪いときもある。 それ、至って普通じゃねえかって(笑)

結局、神様にお願い事聞いてもらったところで、ドラマチックな演出が必要になるなら、それ普段と同じだろうって。 お願いしてない状態と変わんないよね(笑)

だからさ、調子いいときも悪いときも、神頼みする前に、シッカリ生きてやんないとってことだよね。

この話、妙に印象に残ってます。 神様にお願い事聞いてもらったところで(理想の人生像があったところで)100%の満足に絶対人間は飽きが来ます。 僕は間違いなくそうです。 であれば、確かに僕も山アリ谷アリの演出を望むかもしれない。 で、それは結局、今の現世の人生そのものでしかない。

破産するのなら、お金を要求する。 病気なら、健康体を要求する。

でも、それ以外なら。 結局、今とそんなに変わらない人生を要求する結果になる。 つまりは家族全員健康なら幸せじゃないかという、毒にもクスリにもならない、ありきたりな安い日めくりカレンダーの言葉に落ち着く。

勇気がわいて元気になる、どこぞのポジティブシンキングセミナーのようなお話ではないかもしれません。

それでも、僕は、苦しいとき武さんに聞いたこの話を思い出すようにしています。

image by: Denis Makarenko / Shutterstock, Inc.

 

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全米発刊邦字紙「NEWYORK BIZ」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ1000人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる。初の著書『武器は走りながら拾え!』が2019年11月11日に発売。

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【著者】 高橋克明 【月額】 初月無料!月額586円(税込) 【発行周期】 毎週水曜日

 
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