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絶対に修繕されないボロマンションも需要がある日本の悲惨な現実

かつては安定収入のある人が、場合によっては終の棲家として購入するというのが常識だった分譲マンション。ところが昨今、修繕も管理も行き届いていない「管理不全マンション」が売れるという不思議な現象が起こっているそうです。一体なぜなのでしょうか。無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』の著者・廣田信子さんが、その裏にある深刻な社会問題と併せて解説してくださっています。

管理不全マンションが評価される不思議

こんにちは! 廣田信子です。

分譲マンションは、ローンを組んで持家を購入し、そのローンを返し続けられる安定的な収入を確保できる人が暮らす場所…。40年前、まだ、終身雇用が機能し、分厚い中産階級を持つ日本では、それが、ごく当たり前の感覚だったと思います。

今はどうでしょう。

ある大都市の駅近のマンションの事例です。当初は、普通に居住のために購入されたのですが、立地がいいがゆえに、建替えの話が持ち込まれ、建替えを見越して不動産業者が買いに入る…。そして、結局、それが頓挫する…。

何年も建替え話に翻弄されていると修繕はされず修繕積立金もほとんどないまま、高経年になります。見るからに管理がされていないマンションという風情で、価格も100万円まで下がりましたが市場では流通しているのです。100万円という安さと、結局、修繕積立金の値上げもできていないので、月々の管理費等の額の低さが評価? されているのです。

えっ、修繕もろくにしていなくて、修繕積立金もないマンション買って大丈夫なの…と思いますよね。でも、賃貸としての借り手がつくので売れるのです。利回りがよく、3年で元が取れてしまうというのです。

ワーキングプアと言われる若者や国民年金暮らしの高齢者や外国人労働者の人が、便利な立地で3万円という低い家賃に飛びつくのです。どんなに古くても、多少壊れていても、場合によってはエレベーターが使用不可になっていても、3万円で便利なところに住める…という価値の前には、総てを飲むような人たちがかなりの数いる…という現実が垣間見ます。

その人たちは、マンションを改修して環境を整えるから、家賃を5万にすると言われたら…、たぶん、今のままでいいから、家賃を3万円に据え置いてくれ…というはずです。今のままの状況でも借り手が確保できる以上、利回りを下げてまで、お金を掛けてマンションを修繕しようとは思わないでしょう。

マンションを暮らすために購入するのではなく、投資目的で購入する人は、きちんと管理されていて資産価値が高いマンションばかりを対象と考えるのではなく、投資額と家賃収入を計算して、数年の利回りで十分儲けられればOKという選択もあるのです。いよいよ住めなくなって借り手がつかなくなっても元をとっているので、資産価値ゼロでもいいのです。まさに使い捨てです。そういう状況では、管理の正常化は不可能です。でも、区分所有者は、スラム化して価値がなくなった建物を放棄することは許されないのです。

では、最後はどうなるでしょうか。

会社所有にしていたら個人の責任は免れる。で、その会社が倒産しちゃったら(させちゃったら)…、破産管財人はどうするんだろう。こんな負の財産…。ものすごくたいへんなことになりそうです。

経済格差が広がり、最近、「ハウジングプア」という言葉で、低所得者の住宅の貧困がクローズアップされています。収入が低い人にとって、家賃の負担は非常に大きいのです。これを放置はできません。かといって、この家があまっている時代に、公営住宅を造ってハウジングプアを救済するというのはありえません

マンションの空部屋の活用による低所得者の住宅確保の仕組みや、同時に、「ハウジングプア」対象の貧困ビジネスで、マンションの維持管理を放棄する区分所有者を逃げ得にしない対策も必要だと思いました。

 
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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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