日刊で注目書籍の書評を配信してくださる無料メルマガ『毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン』。今回土井さんが紹介されているのは、勉強嫌いな子供の成績を上げる、そんな夢のような方法が記されている一冊なのですが…、こちらのほ本の凄いところは、母親を「上司」に、子供を「部下」に置き換えると、なんと完全なマネジメント本になる点。部下の育て方に悩む方必読の名著です。
『すごい学習メソッド』
藤野雄太・著 永岡書店
こんにちは、土井英司です。
われわれは、思考停止に陥るとつい、欲しい結果をそのまま命令形にしてしまいがちです。「成績を上げろ!」とか「売上を上げろ!」とか「生産性を上げろ!」とか(笑)。これでできるなら、その人はおそらくあなたの上司になっているでしょう。
本日の一冊は、「勉強嫌いの子どもを勉強好きにする塾」として知られる、横浜の個別指導塾「スイング」の塾長が、「勉強しなさい」と言わずに成績を上げる、すごい方法をまとめた一冊。
受験が控えている子どもの親はもちろんですが、やる気のない部下をどうやってやる気にさせるか、悩んでいる方にもおすすめの内容です。
「勉強のために遊びを制限すると、成績は伸びなくなる」
「苦手科目にフォーカスすると、子どもがますます勉強嫌いになってしまう」
「お母さんの関心が「成績」に移ると、子どもは勉強をしなくなる」
「『できる・できない』を評価にすると、子どもは自信を失う」
耳に痛い話がたくさん載っていますが、本書で一番の学びは、結局マネジメントも教育も、「人それぞれ」ということでした。
一人一人をよく観ること。相手に合わせた指導をすること。
これまでできていなかったなあ、と大いに反省させられました。
本書には、一度勉強嫌いになった子どもをどうやってもう一度やる気にさせるか、興味深いメソッドも紹介されています。
さっそく、ポイントをチェックしてみましょう!
「勉強しなさい!」と言われて、「よっしゃー、勉強する気になってきたー!」なんて思う子どもはまずいない(中略)人間は周りからの指示、強制を嫌う生き物です
小学生ならば趣味やゲーム、習い事、中学生であれば部活など、何か1つでも自分が好きなことに打ち込んでいる子どもは、心のエンジンがちゃんと育っています。心のエンジンとは、いざというとき、力を発揮できる力。心のエンジンが育っている子どもは、好きではない勉強もがんばることができます
子どもは、お母さんに自分の得意なこと、好きなことに関心を向けてもらい、認めてもらいたいのです。認めてもらうことなしに、テストの点数を責められたり、親や先生の期待に応えることを強要されたりするから、勉強嫌いになってしまうのです
子どもが抽象的な概念を理解できるのは、小3か小4くらいからです。割合、速さ、分数など、実際の目で見ることができない抽象的な概念は、小1には理解できません。「森」は理解できても、「森林」は理解できません。もちろん、機械的に分数の計算のやり方を覚えて解くことは可能です。しかし、答えは出せても式の意味までは理解していません
◆中1のテストの点数が下がるのは当たり前
中学1年生の最初の英数国理社の5科目平均点が仮に70点だったとします。その場合、2学期のテストでは65点、3学期のテストでは60点と下がり続けます。これは子どもの学力が下がっているからではありません。単に、平均点が下がっているのです
「宿題の量は自分で決めていいからな。0ページ、2ページ、4ページ、好きなのを選んで!」そうすると、子どもは最初は喜んで0ページを選択します。しかし、1か月も続けると、子どもは0ページを選ぶことに耐えられなくなり、「先生、宿題やらなくていいの!?」と声をかけてきます
多くのお母さんが理屈から入ります。よくある常套句は、「勉強をしておけば、将来幸せになれるよ」ですが、子どもは理屈では動きません。「将来幸せになれるといいね。そのためには勉強が役立つよ」のように、感情が先で、理屈はあとです
◆子どもに選択肢を与えて、やる順番を自分で決めさせる
「英語の点数を上げるのに大事なことは3つだよ。英単語、英熟語、英文法。どの順番でいつ勉強するかは自分で決めてね」
◆わからない理由は3つしかありません
1.基礎知識が抜けている
2.国語力が不足している
3.学問の意義がわかっていない
部下に何かを強制してしまう、好きなものを否定してしまう、教えるタイミングを間違う、習熟レベルも確認せずに高度なことを教えてしまう、絶対達成値を重視しすぎるあまり全体が下がっていることに気づかない…。ここには、上司が犯しがちな過ちがほとんどすべて、詰まっていると言っていいでしょう。
「お母さん」を上司に、「子ども」を部下に変換して読んだら、そのままマネジメントの実践書に変わります。部下や子どもの指導に悩む方は、ぜひ読んでみてください。目からウロコの一冊です。
image by: Shutterstock.com