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疑惑の森友学園問題、新聞各紙がどのように報じたかを徹底比較

衆院予算委でも喧々諤々の議論となっている、「瑞穂の國記念小學院」(森友学園)と安倍総理との関係。同法人への国有地の破格値での払い下げに端を発するこの「問題」はどこまで広がりを見せるのでしょうか。メルマガ『uttiiの電子版ウォッチ』の著者でジャーナリストの内田誠さんが、この件についての新聞各紙の報じ方を詳しく分析しつつ、その行方を占っています。

森友学園への国有地払い下げとゴミの撤去にまつわる疑惑に揺れ動く安倍政権。各紙はこの問題をどう報じているか

【ラインナップ】

◆1面トップの見出しから……。

《朝日》…「原発避難 今春3.2万人解除」
《読売》…「中国 無許可で海底調査」
《毎日》…「正男氏殺害「北朝鮮テロ」」
《東京》…「テロ準備罪 「テロ」表記なし」

◆解説面の見出しから……。

《朝日》…「ハリウッド 分断に抵抗」
《読売》…「連合「100時間」抵抗強く」
《毎日》…「孤立深まる北朝鮮」
《東京》…「解明進まず 弾劾判断へ」(朴槿恵韓国大統領)

ハドル

1面と解説面には出てきていませんが、「森友学園」にまつわる問題が最大のテーマに浮上しつつある状況です。「ゴミの埋め戻し」という奇妙な方向性が出てきた今の段階でどのような情報が出ているか。通覧するつもりで取り上げたいと思います。今日のテーマは…、森友学園への国有地払い下げとゴミの撤去にまつわる疑惑に揺れ動く安倍政権各紙はこの問題をどう報じているか、です。

教育基本法違反

【朝日】は国会に関する3面の総合的な記事で森友学園の問題を課題の一つとし、4面で衆院での追及の模様を記し、39面社会面にも関連記事。見出しを並べてみる。

3面

4面

39面

uttiiの眼

4面記事は、昨日の国会でのやりとりを簡単に紹介しており、野党が国有地売買を巡って国による便宜供与があったのではないかと疑っている点を4点、表にしている。1つは、ゴミ撤去費用8億1,900万円の減額査定を、第三者ではなく大阪航空局が実施した点前例のない措置だった。2つ目は、売却を前提とした「買い受け特約つき貸付契約」を学園側と結んだ点で、学校法人のケースは過去に1例しかない。3つ目はその契約による売買代金の支払いを分割にしたことで、これは前例がない。最後に、売買価格を当初、非公表としていたこと。これも原則からの明白な逸脱だった。もう、怪しい話がてんこ盛りといったところ。

学園と安倍氏との関係については、首相の妻、昭恵氏の小学校名誉校長就任についてなど追及の模様が記されている。

自民党は審議のテレビ中継も、民進が求めた3人の参考人招致(森友学園の籠池泰典理事長、売却交渉をしていた時期に財務省理財局長だった迫田英典国税庁長官、同じく近畿財務局長だった武内良樹財務省国際局長)も拒み続けている必死にもみ消そうとしているが、このまま拒否し続けられるとも思えず、どこまで耐えられるのか。内閣支持率が下がる前に応じた方がよいと思うのだが。

39面は森友学園が運営する幼稚園での教育の中身についての大きな記事。2015年秋の運動会の映像を入手したとして、その異様な光景について具体的に書いている。代表の園児4人による「選手宣誓」では、「日本を悪者として扱っている中国、韓国が心改め、歴史教科書でうそを教えないよう、お願いいたします。安倍首相がんばれ、安倍首相がんばれ。安保法制国会通過良かったです」と言わされている。この点は国会でも質問され、安倍氏も「『安倍総理がんばれ』とか、園児に言ってもらいたいということはさらさらないし、私は適切でないと思う」と答弁している。

焦点は、こうした「教育」が、憲法や、あるいは少なくとも教育基本法に違反することを政権が認めるか否かだろうが、その段になると、「行われている教育の詳細は承知していない」とか、「所管の大阪府が監督するもの」といった逃げ口上が目立つ。教育勅語には「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」という内容を含み、まさにその内容が軍国主義教育となり、内外の膨大な犠牲にもつながっている。因みに、《朝日》が言うように、戦後、教育勅語については、衆議院で「排除に関する決議」、参議院では「失効に関する決議」がなされている。

無視はできない疑惑の国有地売却

【読売】はまず3面の社説(2本目)で扱い、4面で国会での野党の追及を記事にしている。見出しから。

3面

4面

uttiiの眼

社説は、この問題の第一歩である、国有財産の不当に低い価額での売却という事実について、はたして見積もられたゴミ撤去費用に見合う実際の撤去処分が行われたのかどうかと、素直に疑問を呈している。手続き上の異例の措置のいくつかも書き込まれている。

また、安倍昭恵氏の名誉校長就任の件でも、「脇の甘さ」の指摘程度ではあるが、苦言を呈している。総理を含め、「疑惑を招かない細心の注意が必要」と窘めるような口調になっている。

さすがに《読売》でさえ、この事件の基本構図基本的な問題を無視したり否定したりできなかったようだ。

4面記事は、この問題の最新の論点である「埋め戻し」についても触れている。森友学園が掘り起こしたゴミについて地下に「仮置き」していると言い訳している点は、次への展開上重要なポイントになると思われる。「埋め戻し」なら不法投棄そのものだ。

《読売》らしさは、最後の部分によく表れている。野党が学園の教育方針も問題視しているとして、《朝日》も引用していた国会でのやりとりを再現しているのだが、《読売》の場合は、安倍氏の答弁の最も大事な部分をスルーしてしまった。例の、運動会での選手宣誓で園児が「安倍総理がんばれ」と言わされている点について、安倍氏が「私は適切でないと思う」と答弁しているのに、その部分をカットして、代わりに「大阪府が判断することだ」という発言に差し替えている。支持基盤の保守層にしてみれば、できれば「聞きたくない」コメントだと、優しい《読売》は判断したのだろうか。

さらに、学園の幼稚園で、教育勅語を取り上げていることについて、「野党は、同学園と保守色の強い首相を結びつけることで政権のイメージを落とそうとしている」と書いているのも、《読売》らしい逃げ方、問題の逸らし方に思える。日本国憲法の制定とともに戦後日本の出発点に位置する「教育勅語の否定」という歴史的な出来事を、政党間の勢力争いという次元に貶めるのは、メディアとして相応しい態度とは思えない

学園の要望で認可基準緩和?

【毎日】は、2面の予算案衆院通過の記事の中で、野党の「攻めどころ」である「隠蔽4点セット」の一覧表を掲げ、その一つとして、「森友学園の土地取引」を挙げている。他、関連して、31面社会面の記事。まずは見出しから。

2面

31面

uttiiの眼

31面記事は《毎日》の独自ネタで、2012年に大阪府が森友学園側の要望を受ける形で私立小学校設置認可の基準を緩和しその後申請したのは森友学園だけだったというオチ。土地売却を中心に、この学校法人に対する「特別扱い」が目立っているが、これもその1つ。テレビ新聞各社は後追いに走っているようだ。

《毎日》はさらに、大阪府私立学校審議会の議事録から、学園の財務状況について「借り入れが今持っているものよりオーバーしている」との指摘がなされていることを発見。さらに、今月22日の臨時審議会では、入学希望者が定員の半数程度に止まっていると報告され、森友学園の財務状況を懸念する声が出ていたという。

現在、小学校用地にはゴミを含んだ土砂が積み上げられていて、豊中市は廃棄物処理法に基づいて造成担当の業者への聴取と現地調査を行ったが、業者は「1年前から仮置きしている」と無理な説明に終始しているようだ。

土中に含まれる廃棄物の問題は、小さくない。明らかに土木の常識を無視し、「仮置き」と強弁しながら、実際は現場に「埋め戻した」、つまり不法投棄された可能性が高い。また、土地価格の引き下げ分はまさしくこの廃棄物処理の費用なのだから、廃棄物を放置している以上、国有地売却の違法な引き下げがあったのではないかとの疑惑をいっそう強めることにもなる。

憲法違反の小学校

【東京】は、1面左肩に続いて2面に関連、6面は国会論戦の要旨、そして26面は「こちら特報部」の「ニュースの追跡」まで。見出しを並べる。

1面

2面

26面

uttiiの眼

1面の記事の要点は、調査を行った豊中市が、ゴミの混じった土の「仮置き」という学園側の説明に疑問を呈し、「汚染土を埋め戻したと証言した業者から事情を聞くことを検討しているという点。

2面は、当初、国会でも「学園の先生の熱意は素晴らしいと聞いている」などと答弁していた安倍氏が、距離を置くようになり、幼稚園の教育内容を「適切でない」とするまでに変化したことなど。参院でも「答弁が変化すること自体が追及される見通しとの記事。

26面は、幼稚園が「教育勅語の暗唱」で知られる森友学園は、小学校でも同様の理念を貫こうとしていたこと。さらに、戦後教育が教育勅語の否定から始まったことから、この学校の認可の可否は検討以前に問題外だったのではないかとの論点。

教育勅語は戦前戦中の軍国主義教育の要であり、国民主権と対立し、教育基本法とも衝突する。その教育勅語を公教育に持ち込むことは憲法違反だ」(小林節慶応大学名誉教授)との指摘も。

あとがき

以上、いかがでしたでしょうか。

森友学園はすっかり全国的に有名になってしまいましたね(笑)。公教育に教育勅語を持ち込むことは憲法違反だという小林節さんの議論は、過激でも何でもない当たり前のことだと私などは思います。「教育勅語」が正しいと信じたり主張したりすることは、一般的な思想の自由には含まれるかもしれませんが、公教育の場で正しいものとして扱うことは許されないと思うからです。

参院でどんな議論が巻き起こるのか、その間にどんな事実が新たに明らかになるのか。目が離せなくなりそうです。

image by: 首相官邸

 

内田誠この著者の記事一覧

ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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