これは当然の話ですが、経営者の理想は会社全体を大きく動かします。そしてその理想が自己本位的なものであった場合、経営がうまくいかないのもまた当然の話。では、そんな状態に陥らないために、経営者はどのような考え・理想を持つべきなのでしょうか。無料メルマガ『ビジネス発想源』の著者・弘中勝さんが、「動物園的経営学」というユニークかつ大変理想的なマネジメント方法を紹介しています。
動物園的経営学
動物園を経営しているとします。
「あいつは全然動かないから」という理由でパンダやナマケモノをリストラしたり、「あいつは場所取るし動きも遅い」という理由でゾウやカバをリストラしたりしたら、どうなるでしょうか。あまり大した動物のいない、スカスカの動物園になってしまいます。
もちろん、サルだけとかクマだけといった単一種類の動物を集めている施設でもお客様が集まってくれますが、自分たちの都合だけで動物を選りすぐったら、途端につまらない動物園になってしまいます。
これは、会社組織でも同じことではないでしょうか。
「うちのチームはろくな奴がいない」と嘆いている管理職ほど、「こういう人を集めたい」という理想が一つに凝り固まっています。しかもそれが「俺の言うことをすぐ理解できる奴」「俺が言ったことをパッとやれる奴」なんていう、自己本位の基準だと最悪です。
そうやって自分本位で画一的に組織を染めると、延々と同じクオリティや方向性のことしかできないし、その中心人物が次の人に変わってしまうともうその組織は機能しなくなってしまうからです。
それよりも、動物園にたくさんいる動物のように、組織というのもはバラエティ豊かな人が揃っていて、それが全体としてパワーになるし面白い、という意識の組織経営のほうが結果を出します。もちろん、経営理念や目標といった全員が一つにつながる明確な軸は必要ですが、それさえ揃っていれば、いろんな人がいていい、と考えられるのが、理想的経営者です。
金子みすずではありませんが「みんなちがって、みんないい」というのが、マネジメントの秘訣です。
例えば、細かいミスもあるけれど仕事が早い部下A、仕事が遅いけれどもミスが全くない部下Bがいて、「仕事が遅い奴はダメだ!」という基準でBを切り捨てて、仕事が早い部下をもう一人入れる、というリストラは、良い経営でしょうか? それよりも、Aにこの部分を、Bにこの部分をさせると以前より2倍以上仕事のクオリティが上がった! という効果を出すことこそ、経営です。
「じゃあ仕事が遅くてミスも多い部下Cはダメだよね?」と考える人も多いかもしれませんが、人間の基準が仕事のスピードとミスの大小だけであればそうなるけれども、そうでないのが組織です。つまり、少ない基準だけで人間を見れば見るほど、余計な人間がすごく増えてしまうのですが、様々な基準で人間を見れば見るほど、たくさんの戦力が増えていくことになります。
この視点の違いだけで、組織のパワーが断然変わってくるのです。
これは、子育てなどでも同じです。兄弟がいると「長男と次男は頭がいいのに、三男だけはバカでどうしようもない」といったことに悩む親がよくいます。
でも、兄弟全員が一つの能力にそろう必要はないのです。むしろ、3人全員が同じ方向に突き抜けている、という例のほうが少なくて、長男はこちらに、次男はこっちに、三男はあっちに、とバラけてしまうのが普通ですよね。
親が同じ3人兄弟でさえ、そうなのです。もともと他人だった人たちが集まっている職場で、そんなことが起きるのは当たり前のことです。いろんな人がいるということは、「うちには、いろんな戦力があるんだ」と思えることが大事です。動物園のように、いろんな動物がいてくれるほうが、全体的にいろんな魅力が生まれるのです。そんな動物園的な経営が、動物園だけにズーっと強い力になっていくのです。
【今日の発想源実践】(実践期限:1日間)
- 自分の部署を動物園だと仮定すると、それぞれのメンバーは、その長所からどの動物に喩えることができるか。それぞれノートに書く。
- 自分の部署の全体的な強みは何か。ノートにまとめる。
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