決選投票で極右政党のルペン氏を破り、見事フランスの新大統領に選出されたマクロン氏。しかし、決選投票の投票率の低さが一部で問題視されており、事実、当選翌日にはマクロン氏の大統領就任に反対する大規模デモがパリ市内で行われました。メルマガ『高城未来研究所「Future Report」』の著者・高城剛さんは、「このデモに参加したのはルペン派とも異なる」とし、政治家不信を募らせた「第三極」の動きが今後の新潮流になると断言しています。
新潮流は、民主主義を飲み込んだ新自由主義に対抗する「第三極」の人々
今週は、フランス大統領選挙の結果につきまして、私見たっぷりにお話ししたいと思います。
5月7日日曜日、フランス大統領選の決選投票で、独立系のエマニュエル・マクロンが国民戦線のマリーヌ・ルペン候補を破って勝利しました。
フランスの出口調査は精度が高いことで有名で、マクロンが65.1%の票を獲得すると予想されており、最初の投票結果が発表されて間もなく、ルペンは敗北を認めました。
続いて、約4700万の有効票のうち4400万まで集計した時点で、マクロンは得票率65.31%を獲得したとフランス内務省も発表し、マクロンの勝利は公式となりました。
早速マクロンは、パリのルーブル美術館前で勝利集会を開き、EUの旗とフランス国旗の両方を振って歓喜するマクロン支持者を前で演説し、「希望と信頼を取り戻す」と語りました。
しかし、翌日からフランスは大荒れです。
一夜明けた5月8日、次期大統領に決まったエマニュエル・マクロンに反対する大規模なデモがパリ市内で湧き上がりました。
このデモの参加者はルペンの支持者ではなく、第三極です。
そのあたらしい「極」とは、政治家不信を募らせた棄権投票者たちなのです。
今回の決選投票では、無効票・白票を合わせた「棄権投票率」が、Ipsosの調査で25.3%を記録しました。
これはジョルジュ・ポンピドゥーとアラン・ポエールが争った1969年の大統領選第2回投票以来、48年ぶりの高水準となります。
このあたらしい「極」=政治家不信を募らせた棄権投票者たちは、米国でトランプ大統領を結果的に押し上げた動きと同じです。
先週もお話ししたように、多くの報道では、米国ラストベルトの人々がトランプに票を投じたために予想外のことが起こったと言われていますが、実際、僕自身がラストベルトを訪れて多くの人々の声を聞くと、政治家不信から投票を棄権した人たちばかりだったのです。
世界の新潮流は、トランプやルペンのような「極右」と言われています。
しかし、彼らの生活に困窮する農家や失業者の人々の声を聞いて回る姿を見ても「極右」だとは思えませんし、それを言うなら日本の現政権のほうがよっぽど「極右」ですが、そのような日本の報道は見かけません。
また、ヒラリーは「初の女性大統領」の誕生の可能性をマスメディアは語りますが、ルペン候補の際には沈黙します。
所詮、広告費が収益の柱であるマスメディアは、どの国でも少なからず企業に近い候補者よりだと考えざるを得ませんし、結果的に多くの人や社会に混乱をきたします。
現在、米国もフランスも、極右ではなく、また、マスメディアでも語られないあたらしい第三極の動きこそが新潮流です。
マクロンのようなグローバリストでも、リベラルと呼ばれる左派でもない、民主主義を飲み込んだ新自由主義に対抗する第三極の人々。
世界はいま、大きくみっつに分断しているのです。
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