MAG2 NEWS MENU

ゴーストタウン化する大都市郊外。かつて憧れの高級住宅街の末路

先日掲載の記事「田園調布に忍び寄るゴーストタウン危機。セレブ住宅街の辛い現実 」で、都市部の高級住宅地を襲う「空き家問題」の現状を伝えてくださった無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』の著者・廣田信子さん。しかし廣田さんは最新の記事で、「大都市近郊に高級住宅地として分譲された住宅団地のほうが問題はより深刻」と記しています。

専業主婦に支えられていた郊外型高級住宅地がピンチ

こんにちは! 廣田信子です。

田園調布に忍び寄るゴーストタウン危機。セレブ住宅街の辛い現実 」では、田園調布のような古くからの高級住宅地で空き家が増えている話をしましたが、30~40年前に大都市近郊に高級住宅地として分譲された住宅団地はもっと深刻です。

ある、昭和50年代に造成された丘陵地の分譲住宅は、1区画100坪、坪100万円超、建物含めて1億5,000万円で分譲。上場会社の役員、芸術家などが多く住み、テレビドラマや映画の舞台にもなって、憧れの住宅地でした。

それが今、空き家だらけになってしまっているといいます。

売却しようにも現在の地価は坪30万円、更地にして売却しても2,000万円台の価格しかつきません。親が亡くなり、子供が相続しても、最高値の時期を知っていると、そんな低価格では売る気になれず、いずれ、値上がりするかも…とそのまま放置された空き家が立ち並んでいます。

また、別の海を見下す高台にある当時の高級住宅地は、40年が経過し、入居者のほとんどが既に超高齢。憧れだった坂の上の家に向かう道は、高齢の身には障害にしかならず、マンションや施設に移る人が増えているといいます。

団地内の商店は全て閉店し、唯一の交通手段であるバスも、空き家の進行とともに、ダイヤ改正の度に本数が減っていき、車の運転をしなくなった高齢者にとっては、陸の孤島だといいます。

こういった郊外型の高級住宅地は、世帯主の年収が高く、家には専業主婦の奥さんがいて、家を守っているというパターンが多かったのです。

私の知人も、ここに家を持ちましたが、毎朝、夫を車で駅まで送り、学校や習い事の子供たちの送り迎え、最後、深夜近くに帰る夫のお迎えと、1日中、運転手よ~と言いながらそれはそれで幸せそうでしたが、女性も仕事を持つのが当たり前になった今の時代には合いません。

価格が下がっても、ここをあえて購入しようという方の生活パターンが見えないというのが現状です。

知人は、「自分の子供たちだって、不便過ぎてここには住みたくないっていうんだから、仕方がないわよ~。でも、ここを売れば、かなりいい老人ホームに入居するぐらいの資金には困らないはずだったのに。それでも、お正月には、家族が集まれる実家としてのこの家を、できるだけ守っていくけど、後のことは子供たちが好きにすればいい」…と。

都市の空き家問題は田舎とは別の意味で深刻です。特に、環境のよい高級住宅地として分譲されたところは、他に転用がききません。

空き家の活用として、様々なアイディア出され、モデル的な取り組みがされますが、根本的な解決策にはならないと思います。人口が40年後には、今の7割まで減少するというあまりに大きく避けられない現実の前に、過剰に存在する住宅の活用方法の妙案などないのです。

そして、人口減少に伴い、女性も高齢者も皆が働いて社会を支えなければならない時代に、専業主婦が家にいることが前提で価値を持っていた郊外型の高級住宅地は、一番難しい現実に直面していると言えます。

 

廣田信子この著者の記事一覧

マンションのことなら誰よりもよく知る廣田信子がマンション住まいの方、これからマンションに住みたいと思っている方、マンションに関わるお仕事をされている方など、マンションに関わるすべての人へ、マンションを取り巻く様々なストーリーをお届けします。

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 まんしょんオタクのマンションこぼれ話 』

【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け