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給料下げられたので会社を訴えてみた。これで裁判に勝てるのか?

会社の業績不振で給料が減らされた…。こんな時、雇われの身としては黙って引き下がるしかないのでしょうか。今回の無料メルマガ『採用から退社まで! 正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』では著者で現役社労士の飯田弘和さんが、具体例を上げつつ降給や降格についてわかりやすく解説してくださっています。

御社の就業規則には、降給(降格)の定めがありますか?

就業規則〇〇条「昇給(昇格)は、毎年4月1日をもって行う」

御社の就業規則では、こんな定めをしていませんか? もし、このような定めしかなかった場合、御社では、「必ず」4月1日に昇給(昇格)を行わなければなりません。たとえ、業績が振るわなくて明日にでも潰れそうな状態でも昇給昇格を行わなければならないのです。

御社の就業規則を、ご確認ください。

「『昇給(昇格)』あるいは『降給(降格)』する」定めになっていれば、一安心。あるいは、「毎年4月1日に改定する」というような定めでもOK。この定めならば、「降給もあり得る」ことになります。

ただし、会社が一方的に降給(賃金の減額)を行うことは、労働条件の不利益変更となりますので、実際にはかなりハードルが高いものとなります。一方的に降給を行ったとしても、その従業員に訴えられたら、裁判で勝つのはなかなか難しい

ですから、就業規則に降給(降格)となる場合を挙げておくことをお薦めします。例えば、

(例)人事考課に基づいて、昇格あるいは降格する
(例)本人の勤務状況や業績により、昇格あるいは降格する
(例)会社の業績により、昇格あるいは降格する

そして、できれば、「必要に応じて臨時に行うことがあることも定めておくと良いと思います。

この降給(降格)も、たとえ就業規則に定めがあっても、およそ10%を超える賃金引き下げとなると、「労働条件の不利益変更」とされ、裁判等で無効」と判断されることがあります。

不利益変更」となる場合には、従業員の個別の同意が必要になります。個別の同意が得られない場合には、就業規則(賃金規定)の変更によって賃金減額を行うことになります。就業規則(賃金規定)の不利益変更には、「合理的な理由」と「周知」が必要になります。

この「合理的な理由」には、「経営難」や「人事制度改定」などが挙げられます。「経営難」の状況によって、どのくらい減給できるか変わってきます。倒産の危機に直面している状況なら、大幅な減給も認められるでしょう。経営判断としての「将来に向けての予防的減額」でも合理的と判断されますが、減給の割合はそれほど大きなものは認められにくいでしょう。

また、「人事制度改革」による賃金減額の場合、ある一定層だけが極端に不利益となるような減額には注意が必要です。代償措置や激変緩和措置を設けるなどして、急激な賃金減額を避けるようにしましょう。

そして、会社としての誠意を持った説明も重要です。減額の必要性を従業員に訴え、理解を得るように努めることが重要です。賃金減額という、従業員の生活に直結するようなものを行う際には、ある程度の時間をかけてでも丁寧に進めていくべきです。強引に推し進めれば、従業員との軋轢も生まれますし、減給自体が無効と判断される可能性も大きくなります。

以上を踏まえて、あらためてお聞きします。

「御社の就業規則には、降給(降格)の定めがありますか?」

image by: Shutterstock.com

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就業規則とは、入社から退社までの「ルールブック」であり、労使トラブルを未然に防ぐ「ワクチン」であり、効率的な事業運営や人材活用を行うための「マニュアル」でもあり、会社と従業員を固く結びつける「運命の赤い糸」でもあります。就業規則の条文一つ一つが、会社を大きく発展させることに寄与し、更には、働く人たちの幸せにも直結します。ぜひ、この場を通じて御社の就業規則をチェックしていただき、問題が生じそうな箇所は見直していただきたいと思います。現役社会保険労務士である私が、そのお手伝いをいたします。

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【著者】 飯田 弘和 【発行周期】 週刊

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