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視界不良のアベノミクス。日経平均株価はもはや予測不能なのか?

6月2日、1年半ぶりに2万円の大台を回復した日経平均株価。20日には年初来高値をつけましたが、今後の株価を占う予想記事自体が少なくなるなど、その先行きは専門家であるアナリストでも予測不能となっているようです。果たして景気は上向くのでしょうか。メルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者の津田慶治さんが、トランプ大統領の政策や中国の一帯一路路線、そして日本企業の業績など、国内外の様々な要因を鑑みつつ、今後の景気の動向を大胆に分析しています。

日経平均株価はどうなるか?

景気の動向を見るには、先行指標である日経平均株価や米国ダウを見る必要があるが、その株価予想がアナリストで真逆になっている。もう1つが、予想記事が少なくなってきて、アナリストが予想できない状態のようである。それなら、ここで予想してみよう。

高値圏での上下への振れは大きい

アナリスト達の予測が、真逆な予測になり予想自体も少なくなり、レイモンド・メリマンなどの占星術まで株価予想の世界に出てきたようである。当たるも八卦ということのようだ。

この理由は、ダウも日経平均も高値圏にいることである。株価が下がると押し目買いが入り、上がると利益確定売りが出て株価を下げるからである。このため、上げ下げの方向がない。もう1つが、良い情報では上げ悪い情報では下げることになっている。

日経平均は、PER14倍で低く、より一層の高値の可能性がある。PER15倍では2万1,000円に届く。このため、野村證券など証券系のアナリストは、日経平均はまだまだ上がるという。その可能性は否定できない。

一方、ダウは、PER17倍となり、IT株はPER20倍以上にもなっている。そして、米国のダウには、ヒンデンブルグ・オーメンのサインが出ているが、そのサインが出ても株価は上昇している。サインを無視している。

これは、企業業績の一層の利益が見込めると予想していることで、その根拠がトランプ政権の行う法人税減税である。

このことで、現時点では米国の株価水準は異常に高い状態にある。イエレンFRB議長は、株価を下げるためにも金利を上昇させたいようであるが、米国の長期金利は上がらず、賃金上昇もなく、景気指標の一部には減速のサインも出ている。このため、イエレン議長がもう1回の利上げと資産の圧縮を言っているが、複数のFRB理事が再度の利上げに反対している。それを受けて長期金利は上昇していない。

米長期金利が上がらないので、利上げを行っても円安にもならない

日本株のPER14倍と割安なのは、配当率の低さからそうなっている。配当率は30%以下であり、IT株以外の米国の高値株の配当率50%以上でだいぶ低い。

株価を決めているのは、景気の動向=金利の動向と配当の動向=企業業績の動向であり、この2つの観点を見ることが必要である。

世界経済秩序の変更

レイモンド・メリマンなどの占星術では、グレート・リセットの時期に入ったという。世界秩序の大変化の時代になったというのだ。

世界秩序、言い換えるとワールド・オーダーを今までは米国が中心に組み立ててきたが、一帯一路で中国が世界秩序のもう1つの構築者として、名乗りを上げているし、アフリカでは中国の経済進出が加速して、パックスチャイナの様相になっている。

逆に、トランプ大統領は、米国をパリ協定から離脱させ、自由貿易から管理貿易体制に向かい、中東安定から中東不安定化に向かって動いている。このように世界秩序から離脱してしまったことで、米国は世界秩序構築者としての位置を放棄している。

米国国内では、技術志向な企業に必要な世界からの人材流入を止めて、昔の製造業中心の経済に戻ろうとしている。このような政権の政策とは逆に、ナスダック市場のIT株は異常な上昇をしてきたのだ。

しかし、政権の政策方向とは違うので、いつかはIT企業は壁に突き当たることになる。トランプ政権は技術的な経済発展を止めて、昔の経済に戻ることを志向しているので、今、株価上昇してる方向とは違うことになっている。それを米国投資家は認識していないような感じがする。

しかし、確実に米国のIT株バブルは、近々につぶれることになる。バブル崩壊が近い。

日本企業の業績は

日本企業は、人口減少のため内需縮小になった日本から出て、売上高や利益拡大のために外需に依存する方向である。外需の拡大は米国やEU、中国の景気に影響されることになる。

現時点のPER14倍は低いので、株価上昇余地があるというが、米国の景気が悪化すると、日本企業の業績は下がり、PER17倍程度にもなる可能性がある。このため、将来的な米国EU中国の景気動向が重要なキーになっている。いい例がトヨタである。米国の利益が大きいので、米国での自動車販売台数が減少したことで、利益が大きく落ちた。

米国の経済政策は、昔の製造業に戻り、ITテクノロジー企業を優遇しないので、他の国のIT企業が優位になる可能性が高いと感じている。しかし、日本のIT企業も規制緩和がなくて、苦戦しているし、政府の構造改革が遅くて、日本が米国のIT企業を抜くこともないようである。

ということは、米国のバブル崩壊で日本の景気も下がり、株価が大幅な調整局面を迎えることになりそうである。しかし、日本の個人投資家は、賢明である。大幅に売り越している。

買い越しているのは、日銀とGPIFぐらいなものである。外国投資家も安倍政権が揺らいでいるので、今後、売り越しになっていくことになると見ている。

日銀の金融政策

日銀の黒田総裁のコメントを見ると、サイレント・テパーリングを行い、徐々に国債の買取額を減らしているようである。年間買取額を当初80億円としていたが、現時点で60億円程度になり将来的には40億円規模になるようである。

米国の金利上昇でも日銀のテパーリングがあり、円安にならないようである。日本企業は輸出より現地生産が徐々に主流になり、円安でも輸出が伸びずに、円高の方が現地企業からの利益配分が円換算で大きくなるということになる。金融政策で日本の景気を上げることができなくなっている

もう1つが、日銀は株買取額は減らしていない。株価が高値圏であり、この時点でも買取額を減らさないのは非常におかしい。株価2万円以上では、買取りを行わないと宣言し、2万1,000円以上では、売り出すと宣言して、異常な株価の上昇を抑えるべきである。

また、日銀の株での損失を回避して、国債では損することが確実であるが、国債の損分を株の利益で埋めることでもよいと思う。

さあ、どうなりますか?

image by: Shutterstock.com

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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