天下統一こそなりませんでしたが、織田信長が行った数々の革新が戦国時代の終焉を早めた事実に疑いはありません。無料メルマガ『戦略経営の「よもやま話」』に、信長の具体的なイノベーションと、我々現代人が彼から学ぶべきことが記されています。
戦国時代のイノベーション
イノベーションということを言いだしたのは、オーストリアのシュンペーターという経済学者です。
少しややこしいのですがお付き合い下さい。
「経済活動の中で生産手段や資源、労働力などをそれまでとは異なる仕方で新結合すること」で「経済発展の動力」である。つまり新しい経営の変革こそ経済発展を引き起こす力だと言っています。
噛み砕いて言うと「同じことばかりしていては、良いことは何も起こりませんよ」ということです。
当然のことで、世の中は常に変化しておりその中で競争をしています。まったく新たな視点で、チャレンジしなければ成功は続きません。大成功の後ですら、すぐ衰退の兆しがあり「諸行無常」です。
老舗商店の経営で一般的にイメージするのは保守性です。堅実、伝統を守って経営していけばなにも問題が起こらないという言われ方です。
ところが、成功している老舗当主は「革新」を述べています。越後屋元祖・三井高利が「商の道何にても新法工夫いたすべく」と説いています。意味は「商売をするなら何にでも創意工夫をしなさい」という意味です。
マネジメントの創始者であるドラッガーは、「イノベーション」を「マーケティング」とともにマネジメントの2大機能としています。
織田信長のイノベーション(革新)
織田信長は戦国時代最大の革新者です。数え上げればキリがないほど革新を行っています。その革新はマネジメント(経営)から見ての模範であり多岐にわたっています。
この中で華々しい出来事が印象的ですが、そうでないけれども経営から見て最も大切なイノベーションがあります。1つは、コンセプトの導入です。もう1つは、組織改革です。
「天下布武」はコンセプトです。天下を布武することで統一するという宣言です。同時代では武田信玄の「風林火山」や徳川家康の「厭離穢土欣求浄土」が有名ですが、「天下統一」という目標を明確にし自身と配下の武将の心を1つにしたのは織田信長の独創です。
イノベーションとは前例がないことを行うことです。基盤となる態度は「あらねばならないのは何か」という素直な視点です。信長はこの視点で「組織のイノベーション」も行っています。
戦国時代の武将は徳川時代のような藩主ではありません。その地位は、その地域の武士の盟主と解釈してよいものです。信長の行ったのは旗下の武将をその所有する土地から切り離し俸禄を与えて常備軍として城下に集めました。いざ合戦となった時機動的に活動できるからです。それと主従としての命令関係を明確にするためだったと思われます。
目に見えるイノベーションでは、
- 鉄鋼船の建造:毛利(水上)水軍の合戦に勝利をえるため九鬼義隆に命じて建造しました。
- 安土城の建立:戦国時代の城郭は、防御を目的としたものであったものを権威誇示のシンボル(広告塔)として活用したことです。
- 鉄砲の大規模な導入:「長篠の戦い」での「鉄砲三段打ち」が有名な独創的な戦法と言われていますがはなはだ疑わしいようです。しかし、鉄砲の大規模導入は武器革命です。
織田信長のイノベーションは戦国時代の終焉を早めることになりました。その後、成功した革新は豊臣秀吉、徳川家康に受け継がれて行きました。
信長が示したような「コンセプト」や「組織」など多面にわたる改革は現代の「マネジメント」が行わなければならない先駆です。イノベーションは、今を切り開く最も大切な機能です。
信長より学べること
革新は、目的を達するために一切の「先入観なし」に考えぬかれて実行される方策です。
イノベーションは「鉄鋼船の建造」や「鉄砲の三段打ち」といった劇的なものが分かりやすいのですが、それとは別にもっと根幹にかかわるもので「天下布武」のような価値観のイノベーションもあります。
また、名物(茶器)を有する事に高いステータス性をもたせ、一国一城に匹敵する価値もつけました。「名誉心の活用」は同時代でも行っていた方策ですが、名物(茶器)を大いに活用したことは自身の趣味でもありますが「報償のイノベーション」とも言えます。
イノベーションは、どの場所でもどの時代でも「社会改革」にまでもつながることもあります。
アメリカの世紀的なイノベーションには、「エジソンの発明」があります。そして、その教え子にもあたるヘンリー・フォードの「製品の標準化」と「部品の規格化」による生産方式があります。
フォードは、ベルト・コンベヤー方式により「生産方式」のイノベーションを行っていますが、それと同じくして「雇用のイノベーション」も行っています。
彼は、労働者に当時の倍である日給5ドル、週40時間労働という条件を提示し、入れ替わりがあったものの安定した「労働者」の確保を実現しました。その結果、レベルの高い安定した生産を可能にして大量の「T型フォード」の生産が可能になりました。
大量生産は大幅なコストダウンを実現し当時1,000ドルだった販売価格の半分以下の価格を実現して大量消費につながりました。
さらに、このことの余波は他の企業の賃金アップのきっかけをつくり、アメリカ社会の中間所得層を形成することになりました。その結果、フォードが意図したことであるかどうか分かりませんがアメリカ社会の大量生産、大量消費の時代を切り開くことになりました。
これは「信長の改革」と同じように「社会を巻き込んだイノベーション」と言えます。
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『戦略経営の「よもやま話」』
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