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金正恩が高笑い。最終兵器「ICBM」来年にも実戦配備か

7月28日深夜、2度目のICBM発射実験を成功させた北朝鮮。しかし、警戒を強める米国に対して我々日本人は危機意識に欠けているようにすら見受けられます。このような傾向に「感心している場合ではない」と警告するのは、メルマガ『NEWSを疑え!』の著者で軍事アナリストの小川和久さん。小川さんは北朝鮮がICBMを実戦配備するために超えねばならない5つのハードルを上げそれぞれについて検証するとともに、早ければ2018年中にも実戦配備の可能性があるとの見方を示しています。

感心している場合じゃない北朝鮮のICBM開発

北朝鮮は7月28日深夜、北部の慈江道舞坪里(ムピョンリ)から日本海に向けて大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星14」を発射、北海道奥尻島沖の日本の排他的経済水域に着弾しました。

7月4日の第1回目に続くもので、北朝鮮の朝鮮中央通信は「高度3,724.9キロに達し、47分12秒の間に998キロ飛行した」と報道、日米韓の政府当局も同じ分析結果を示しています。

このデータは、最大射程を求めた場合、西恭之さんのテクノ・アイにもあるように、1万キロ以上の弾道飛行が可能で、米国本土のかなりの部分を射程圏内に収めたことになります。

そこで、北朝鮮がICBMを実戦配備するに当たり、現状がどの段階にあるのか、そして、今後クリアしなければならないハードルについて、少し触れておきたいと思います。

まず現状ですが、場所、時間帯、天候に左右されずに発射できることが示されており、北朝鮮のICBMが兵器としての基本的条件を備えたことを物語っていると思います。

人工衛星の場合、しばしば天気が悪いと打ち上げが延期されますが、これは兵器としての弾道ミサイルには当てはまりません。天気によって弾道ミサイルの発射ができないとすれば、開発半ばの段階にあると考えてよいと思います。今回の火星14は、同じ開発段階でも終盤にさしかかっているとみなしてよいでしょう。

そのように考えれば、7月27日の朝鮮戦争休戦64周年(北朝鮮は「戦勝記念日」と呼称)に発射しなかったのは、金正恩党委員長の現地入りが遅れたためと考えた方が自然だと思います。米国側は「何らかの技術的理由」と推測しましたが、少なくとも天気が理由で発射が延期されたことはないとの立場です。

そこで北朝鮮がICBMを実戦配備するために越えなければならない今後のハードルですが、

  1. 固体燃料化
  2. コールドローンチ
  3. 移動式発射装置の国産化
  4. 3段式の実現
  5. 核弾頭の小型化

──といったところでしょうか。

1.固体燃料化

毒性や爆発の危険の問題から取り扱いが面倒で、1台の移動式発射装置あたりの随伴車両が30両も必要な液体燃料型に対して、燃料を組み込んだままの固体燃料型は取り扱いが容易なうえ、随伴車両も10両ほどですみ、兵器としての即応性や秘匿性にも優れています。北朝鮮も中距離弾道ミサイル「北極星2」の固体燃料の国産化に成功しており、技術的に難しいとされる大型の固体燃料の国産化を実現するのも時間の問題だと思われます。

2.コールドローンチ

高圧ガスなどでミサイルを発射したあと、空中でロケットエンジンに点火する方式で、もともとは潜航中の潜水艦から発射するために考え出されました。発射の時点でロケットに点火するホットローンチに比べて、陸上型の場合は移動式発射装置の発射筒を傷めないことから、発射筒から取り外すことなく発射できます。この方式だと移動式発射装置の使い回しが可能で、短い時間に複数のミサイルを発射することが可能になります。

3.移動式発射装置の国産化

北朝鮮がICBMを輸送し、発射地点で起立させるために使っているのは、中国製のWS-51200という16輪のトラックですが、少数を輸入したあと経済制裁の関係で入手できず、また国産化に至っていないため、北朝鮮はWS-51200を損傷させないようにICBMを地上に設置して、ホットローンチ方式で発射しています。これでは兵器としての即応能力や隠密性に欠けることは明らかで、移動式発射装置の国産化は是非とも越えなければならないハードルなのです。

4.3段式の実現

射程距離を伸ばし、命中精度を高め、複数弾頭化するための条件となります。

5.核弾頭の小型化

ICBMの再突入体の重量を、弾頭を含めて600~700キロ程度にする必要があり、その場合の核弾頭の重量はその半分以下になると思われます。

そこで、実戦配備に向けての今後の動きですが、次のように3段階を踏んで進むのではないかと考えるべきかと思います。

第1段階:米国東海岸を射程に収めるところまで性能を向上させ、核弾頭の小型化に成功するが、まだICBMには搭載しない。早ければ2017年中

第2段階:液体燃料型。ホットローンチ方式。現在保有している少数の移動式発射装置を使用。小型化された核弾頭を搭載。早ければ2018年前半くらい。

第3段階:固体燃料型。コールドローンチ方式。国産化した移動式発射装置で多数展開。これによって本格的な実戦配備を実現。早ければ2018年中

これを見れば、「着実な歩みを進めている!」などと感心している場合ではないことがわかると思います。(小川和久)

 

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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