日本語を学ぶ外国人の数は年々増加していますが、彼らを悩ますもののひとつに「日本人の苗字の多さ」があるそうです。今回の無料メルマガ『1日1粒!「幸せのタネ」』では、著者で日本語教師の経験を持つ須田將昭さんがそんな事情に触れつつ、日本人でも読めないような珍しい苗字も紹介しています。
日本語を学ぶのは難しい?
私の前職は日本語教師。外国人に日本語を教える仕事です。
日本語は、文字の面では漢字、平仮名、片仮名があって複雑です。欧米圏出身の方にとっては、形をしっかり認識することすら大変なものです。その点、中国・台湾出身の人達は漢字に慣れていますので、まだハードルが低くなります。
ただ、そういうアジア圏の人達にとっても頭を悩ます問題があります。それは、日本人の苗字の種類の多さです。
佐藤、鈴木が日本で一、二位を争う苗字だといっても、1クラス40人の中で30人をこの二つで占めるということはありません。せいぜい二つ合わせて4、5人いれば多い方でしょう。
それ以外にクラスの中で同じ苗字の人がいるというのは、特殊な場合を除いて(地域的に偏りがあるなど)なかなかないものです。
同じ漢字を使う中国では、「王」「李」の二つで14~15%を占めるようです(「王」さんは人口でいえば約9,000万人以上います…すごい)。
日本人でも、異業種交流会のような場で一度に十数人の人と会うと、なじみの無い苗字の方がいるのはよくある話です。これが日本語を勉強し始めたばかりの外国人にしてみたら、どれだけ大変なことか…。
名前を覚えないと失礼だ…とは思っても、種類がありすぎて、初めて聞く苗字ばかり…という状況では、相手の顔と名前と職業その他の情報を一度に覚えるのは困難きわまりないことになります。
おまけに読み方も難しい。
「高田」とあっても「たかだ」なのか「たかた」なのか(ご本人達は、この違いにかなりこだわります)。「内海」と書いて「うつみ」ですが、「外海」さんは「とかい」さんだったり「とのがい」さんだったり。「神谷」さんは「かみや」さんか「かみたに」さんか。「左右」と書いて「あてら」さんはクイズになりそう。「四月一日」と書いて「わたぬき」さん。ちなみに「八月一日(朔日とも)」は、「ほづみ」さんとお読みするそうです。
日付にちなんだ苗字は季節の変わり目に関連するようですが、ここまでくると日本人、外国人関係なく、覚えるのが大変ですね
苗字の種類が少ない場合は、逆に同じクラスに「王」さんや「李」さんばっかりで、フルネームで覚えないといけない、という大変さも出てきますので、どちらが一概に楽か大変かはいえませんね。ただ、それでも日本人の苗字の種類の豊富さはかなり大きな特徴であることは間違いありません。
街角のハンコ屋さんの店先に、シャチハタ印や三文判などのスタンドがありますが、あれだけ種類が豊富でも、自分の苗字は無い…という方もみなさんの周りにも数人いらっしゃることでしょう。毎回特注してる…という方たちです。
苗字を深ーくみていくと、それはそれで日本の歴史だったり、文化だったり、興味深いものを発見するポイントになりそうです。
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