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なぜドラッグストアの食品は安いのか? コスモス薬品の型破り戦略

九州を中心とした西日本の小商圏で爆発的なシェアを誇るドラッグストアがあります。マツモトキヨシの半分の店舗数ながら同程度の売上を可能にする、その戦略とは? 今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』で、著者の青山烈士さんが詳しく分析しています。

常識外れな行動

日本で初めて小商圏をターゲットとしたメガドラッグストアを多店舗展開する企業を分析します。

コスモス薬品(ドラッグストア)

戦略ショートストーリー

節約したい方をターゲットに、「低コスト経営ノウハウ」に支えられた「安い」「品揃えが充実、便利」などの強みで差別化しています。

小さな商圏であってもエブリデイロープライスを売りにした大型店を出店し、食品を充実させることで、日常の買い物の場として顧客の支持を得ています。

分析のポイント

常識外れな行動

コスモス薬品は「日常の買い物の場」になるべく、食品の割合(品揃え)を増やしていると思われます。「日常の買い物の場」になるとは、顧客に毎日のように買い物に来てもらえるお店になるということです。一般的にはスーパーやコンビニが、これに該当するでしょう。

本来、医薬品や化粧品が中心のドラッグストアは「日常の買い物の場」にはなりにくいです。毎日、医薬品や化粧品を購入することは考えにくいですからね。コスモス薬品のように、ドラッグストアが「日常の買い物の場」になるというのは、簡単ではないということです。

ドラッグストア各社は食品の取り扱いを増やしていますが、コスモス薬品と競合各社とは、食品の位置づけが異なります。コスモス薬品は、毎日、来てもらえる店、つまり、「日常の買い物の場」にするために食品を充実させています。ですから、顧客が食品を目当てに来店して、食品だけ購入してもコスモス薬品としては、OKという考え方だと思います。そのことは、食品部門もしっかりと利益を確保できていることから明らかです。

一方で、競合他社は、チラシなどで掲載された安売りの食品で来店を促し、ついでに医薬品や化粧品なども購入してもらいたいという意図があると思います。ですから、チラシ掲載の安売りの食品だけ購入する顧客を大歓迎ということにはならないでしょう。食品で利益をとるというよりは、医薬品や化粧品で利益を確保するという考え方だと思われます。同じドラッグストアであっても、食品の位置づけを見るだけで各社の戦略の特徴が伺えますね。

また、「日常の買い物の場」になることが、小商圏でも勝てるポイントになっています。食品スーパーの市場規模は約13兆円と非常に大規模であり、イオンやセブン&アイといった大手はいるものの、これだけ大きな市場を大手だけでカバーしきれませんので、まだまだ、中小地場スーパーも多数存在します。大手と中小の棲み分けができているとも言えますね。大きな商圏には、大手が大きな店舗を出し、小さな商圏には、中小地場スーパーが小さな店舗を出すという形です。これは、一般的というか業界の常識といえると思います。

この状況の中で、中小地場スーパーが出店しているような小さな商圏にコスモス薬品は大型店で出店攻勢をかけているわけです。まさに、常識外れな行動と言えますね。

もちろん、ただ常識外れなわけではなく、しっかりと計算された勝算のある常識外れな行動であると言えるでしょう。この行動により、元々は、食品スーパーが「日常の買い物の場」としての役割を果たしていたわけですが、コスモス薬品が、「安さ」「品揃え」を強みに「日常の買い物の場」としての役割を担うようになりました。

「日常の買い物の場」であるということは、顧客の来店頻度が高まりますので、小商圏であっても売上を確保できるわけです。逆にいうと「日常の買い物の場」になれなければ小商圏では生き残るのは難しいということですね。

コスモス薬品は、生鮮食品を扱っていないので、中小地場スーパーの存在価値がなくなるということはないと思いますが、同商圏内に「ディスカウント ドラッグコスモス」が出店するとなれば、中小地場スーパーにとっては、売上確保が困難になることは避けられないでしょう。

西日本で「日常の買い物の場」としての存在感を高めているコスモス薬品は、今後、東日本にも進出する予定のようです。どこまで快進撃が続くのか、非常に楽しみです。

◆戦略分析

■戦場・競合

■強み

  1. 安い
    エブリデイロープライス(365日、毎日安い)
  2. 品揃えが充実、便利
    医薬品・化粧品のみならず日用雑貨、生鮮三品以外の食品等の日常の暮らしに必要な消耗品を満載した、非常に便利な店舗

★上記の強みを支えるコア・コンピタンス

「低コスト経営ノウハウ」

上記のような低コストを実現するノウハウが強みを支えています。

■顧客ターゲット

◆戦術分析

■売り物

■売り値

■売り方

■売り場

※売り値や売り物などは調査時の情報です。最新の情報を知りたい場合は、企業HPなどをご確認ください。

image by: WikimediaCommons(Ikokujin)

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【著者】 青山烈士 【発行周期】 ほぼ 週刊

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