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己の才覚に溺れた「経営者」が陥りやすい落とし穴

世の中にはモノづくりの「技術」や、誰も目をつけていない市場を見つける「嗅覚」が抜群に優れた経営者が多数存在します。日本では松下幸之助氏や本田宗一郎氏、米国ではスティーブ・ジョブズ氏が良い例と言えるでしょう。しかし、彼らと同じような才能を持ちながら倒産に追い込まれる経営者もいるようです。今回の無料メルマガ『戦略経営の「よもやま話」』では著者の浅井良一さんが、己の才覚に溺れた経営者が陥りやすい落とし穴について記しています。

尽きることのない「別品」づくり

モノづくりの名人は誰かと問われたら、個人的な見解ですが日本では松下幸之助さんが、アメリカではスティーブ・ジョブズが思い浮かびます。この二人、一面では似ているところもあるのですが、松下幸之助さんが伝道者タイプであり、これに対してスティーブ・ジョブズは日本では本田宗一郎さんのように匠、芸術家タイプである「モノづくり」の名人です。

尽きることのない「別品」づくりについて、二つタイプの違いを超えて共通するのは当然としての「時代の欲求・要望」に焦点を絞っていることです。違いは、伝道者は組織にスピリット(精神性)を浸透させて「集団より良いモノづくりを行うのに対して、芸術家は」自身のビジョンでもって「未だ世にない欲求を満たすモノづくりを行うことです。

ここで少し考えてみたいことがあります。それは、成熟の今の時代の競争のあり方についてですが、時代がいかような「別品」を求めているかということですが、結論から言ってしまうと、それは未知なるものでより以上の良いもの一番のものが求められているということであり、ここに戦略の基軸があります。

今的の潮流からいうとやはりAI人工知能)がすぐに思い浮かぶのですが、この分野でチャンスを持とうとするならば、知識を持つ有能な人材を少しでも多く獲得することが必要です。スティーブ・ジョブズであれば、カリスマ性と破格の報酬でもって上手に人材を集めて、あっと驚くような「別品」を創り上げることになるのでしょう。

ジョブズと言わなくとも、グーグルやマイクロソフト、日本ではトヨタやソフトバンクなどの多くの世界企業が必死で現に抱え込みにかかっています。とは言え、何もAIでなければビジネスチャンスがない訳ではなくGEのジャック・ウェルチの基本戦略である勝てない市場は避けて「強み」が活かせきる「勝てる市場に集中すればよい訳なのです。

「一番になる戦略」は基本中の基本ですが、そのためには「誰も行っていないこと」もしくは「行おうとは思わないこと」を行うことで、それも抜きんでた技術をもって、大手企業にとっては魅力がさほどない中規模程度の市場に経営資源を集中して独占するなどは非常に効果的なことです。日本では、そんな戦略により安定収益を実現している企業があります。

大型船のスクリューに特化して世界トップシェアを誇る「ナカシマプロペラ」や、また水族館の水槽の世界でトップシェアである「日プラ」など高収益の企業もあり、トップの特別の技術を磨くことができれば勝つこともできます。さらにネット販売であれば日本だけでなく全世界の顧客ともつながり少人数の企業であればマニアックであることでむしろ可能性を広げます

ここで、少し「但し」の話を入れて補足を行いたいと思います。

経営者のあふれんばかりの熱意でもって人のやらない技術を完成し、その分野では追随を許さない地位を得たのに、いろんな障害が発生して倒産間際の状態にまで追い込まれる企業もあります。そんな企業には、経営者にある共通したマイナスの性癖があるのです。

その性癖とはなんでしょうか、それは己の才覚に溺れてしまうことです。自身の能力と考え方に扁重し過信して、マネジメントの存在を顧みません。経営の神様の松下幸之助さんは「わからなければ、人に聞くことである」と「衆知」を「知恵の源泉」とし、本田宗一郎さんは自身の弱点である営業と経営を、価値観が共有できた藤沢武雄さんに会社実印を預けて任せ切っています。

ある会社のことですが、経理が信用できるからと税理士に助言を求めず、あまり知識を持たない「気の良い身内」に任せ切ってしまったのです。すると、業績が良いものだから銀行に借入をすすめられ、不要な土地は買うわ、過剰な役員報酬を支給するわで、気が付いた時には多額の借入金と利息がふくらみ、途端に銀行の融資が打ち切られてしまうことになりました。

常に言えるのは、己が抜きん出ているだけではいつか限界が来るということです。成長できる企業は、当然のことながら人材の重要性を知っている経営者がいます。成長できた企業の経営者は、優秀な人材を育て、また引き付けることに意を注ぎ、ミッション(使命)および理念(コンセプト)を浸透させています。

http://i.mag2.jp/r?aid=a5a263dee7c6af

image by: Shutterstock.com

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戦略経営のためには、各業務部門のシステム化が必要です。またその各部門のシステムを、ミッションの実現のために有機的に結合させていかなければなりません。それと同時に正しい戦略経営の知識と知恵を身につけなければなりません。ここでは、よもやま話として基本的なマネジメントの話も併せて紹介します。

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【著者】 浅井良一 【発行周期】 ほぼ週刊

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